任正非氏はファーウェイが生き残るための自己変革を社内に説き続けている。写真は2020年1月のダボス会議に出席した任氏(同社ウェブサイトより)

「われわれが蓄えるべきは人材であり、米ドル(お金)ではない。最終的には、われわれ独自の人材備蓄を作り上げなければならない」

中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の創業トップの任正非氏が2023年7月28日に行った社内講話のなかで、高度な専門知識を持つ人材を幅広い分野から積極採用するよう訓示していたことがわかった。9月4日、同社が従業員向けのSNSで講話の全文を公開した。

「あらゆる分野における優秀な人材が、ファーウェイの事業領域の中で(自分の専門分野とは違ったとしても)仕事をしたいと望むなら、ファーウェイはぜひ採用したい」。任氏は講話のなかでそう述べ、意図を次のように語った。

逸材なら畑違いでも採用

「ファーウェイはあらゆる分野(の技術)で世界をリードするのではなく、(重点領域として定めた)限られた分野でリードする経営戦略を明確にした。したがって、ファーウェイはプロダクトの範疇を(これまでより)絞らなければならない」

「とはいえ、ファーウェイは自ら定めた目標に向けて不断の模索を続けるなかで、専門技術を持つ人材を蓄え続けなければならない。(技術職の)採用活動にあたっては、もしファーウェイの事業領域とは異なる分野の専門人材が応募してきた場合、その人材がファーウェイの事業領域内の職務に就くことを望むかどうかを明確に問う必要がある。そして答えがイエスならば、たとえ畑違いでも採用すべきだ」

任氏は講話の中で、優秀な人材のモチベーションの引き出し方や、人材を生かす組織文化のあり方についても触れ、自らの考えをこう述べた。

「優秀な人材にとって(賃金の高さなど)物質的なインセンティブは重要ではない。彼ら自身が好きでたまらない仕事に取り組めるポジションを(会社が)与えれば、彼らは(誰かを)怨むことも(自分の選択を)後悔することもない」

「人材とは(会社が)育てるものではなく、自分自身の力で成長するものだ。ファーウェイは人材が成長できる(組織文化の)土壌を作らなければならない。高度な専門人材に対しては管理職としての責任を過度に負わせず、もっと自由度を与えるべきだ」

売上高の4分の1超を研究開発に

任氏がこのような訓示を行った背景には、ファーウェイを取り巻く経営環境の過去数年間の激変がある。アメリカ政府がファーウェイを標的にした制裁を段階的に強化し、スマートフォン向けの最新半導体が調達困難になるなど、同社の経営は大きな打撃を余儀なくされた。


ファーウェイは技術力向上を通じてアメリカ政府の制裁の打撃を克服しようとしてきた。写真は広東省深圳市の研究開発拠点(同社ウェブサイトより)

そんななか、ファーウェイは研究開発への投資額を大幅に増やし、自社の技術力を高めることで難局の打開を目指してきた。それだけに、優秀な人材をいかに獲得するかが、任氏にとってファーウェイが生き延びるための核心的な課題の1つだったのだ。


本記事は「財新」の提供記事です

なお、ファーウェイが8月に開示した2023年1〜6月期の決算報告書によれば、同期の研究開発費は前年同期比4.5%増の826億元(約1兆6746億円)に上った。この額は、1〜6月期の売上高(3109億元=約6兆3030億円)の4分の1超に相当する。

(財新記者:張而弛)
※原文の配信は9月4日

(財新 Biz&Tech)