人気女優も党幹部も処刑…北朝鮮「禁断映像」の残酷史
北朝鮮で、ある種の違法行為に対する処罰が法の枠を超えて厳しくなっている。
中国との国境に接する新義州(シニジュ)在住の20代男性は今年6月、性録画物(アダルトビデオ=AV)を見ていた現場を当局に踏み込まれて逮捕された。家宅捜索で、韓国ドラマや映画の保存されたメディアが発見された。この男性は結局、管理所(政治犯収容所)送りになってしまった。
この話を耳にした市民は「法(執行)が急に厳しくなった」と、緊張している。
北朝鮮ではかつて、韓流コンテンツやAVにからんだ違法行為に対する処罰は、そのときの情勢や最高指導者の考え方しだいで場当たり的に行われてきた。
2008年には、北朝鮮の朝鮮労働党作戦部(当時、現在は偵察総局に統合)の傘下にあった「中央党連絡所」の幹部が、海外製のAVを複製して販売した罪で処刑された。また2013年には、人気女優のピョン・ミヒャンが出演したAVの存在が明らかになり、制作に関わった全員が処刑されたとの情報が流れた。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
北朝鮮では、アダルトビデオ(AV)に関わる一切が違法となる。その法的根拠は次のようなものだ。
刑法183条(退廃的な文化搬入、流布罪) 退廃的、色情的で醜い内容を反映した図画、写真、図書、歌、映画などを許可なく外国から持ち込んだり制作したり流布したり違法に保管している者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。複数回または大量に搬入、制作、流布、保管した場合には5年以下の労働教化刑に処す。罪状の重い場合には5年以上10年以下の労働教化刑に処す。
一方、主に韓流コンテンツをターゲットにしたものと言われている「反動思想文化排撃法」には、次のような条文がある。
第27条(傀儡思想文化伝播罪)
傀儡の映画や録画物、編集物、図書、歌、絵、写真などを見たり聞いたり、保管した者、または傀儡の歌、絵、写真、図案などを流入、流布した者は、5年以上10年以下の労働教化刑に処す。第28条(敵対国の思想文化伝播罪)
敵対国の映画、録画物、編集物、書籍を流入させたり、流布した者は、5年以下の労働教化刑に処す。大量の敵対国の映画や録画物、編集物、書籍を流入、流布したり、多くの人に流布した場合、または集団的に視聴、閲覧するように組織したり、助長した場合は、無期労働教化刑または死刑に処す。
つまりいずれの法においても、単純所持や視聴、小規模な流布は一般の教化所(刑務所)における労働教化刑(懲役刑)なのだ。北朝鮮の刑務所は環境が劣悪だが、家族がコネとカネをフル動員すれば、なんとか生き延びることができるかもしれない。しかし管理所に送られてしまえば、生きて出てこられる可能性はほとんどない。
北朝鮮では現在、長期にわたる深刻な経済難のせいで、各種の犯罪が多発しており、それらに対する刑事罰も重くなっているようだ。
AVや韓流関連の違法行為に対する厳罰化が、そうした流れに沿ったものなのか、あるいは思想統制のいっそうの強化が始まっているのか、今後注意して見ていく必要がありそうだ。