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職場の飲み会でハラスメントが起きている--。弁護士ドットコムにこのような相談が複数寄せられています。

「部署の皆が参加している酒宴の席で、とある男性社員が、新人社員(40代)の男性に童貞ですか?と質問しました。その新人社員は怒って帰ったそうです。そして、それ以降は飲み会には参加しなくなったそうです」

「飲み会だったのですが、車通勤していて飲めなかったので、お酒は飲めないと断ったら、妊娠してるんですか?とふざけ半分に聞かれました。別の若い男性が私にわざと聞こえるように大声で下ネタを言い出し、とても気まずい思いをしました」

社内でこうしたハラスメントにあった場合、まずどこに相談すれば良いのでしょうか。江上裕之弁護士に聞きました。

●まず会社の相談窓口に

--最初に相談すべき場所はどこですか?

法律上、事業主にはセクハラやパワハラの相談窓口の設置が義務付けられています。

事業主が相談窓口を設置している場合は、相談窓口に関する規定(担当部署やハラスメント申告があった場合の対応などを明記したもの)が公表されていると思われますので、規定を確認したうえ、まずはそこに相談するのがよいと思います。

特に、今後もその会社で働き続けることを希望している場合は、まずは社内の相談窓口を通じて職場環境を整備してもらう(加害者への注意指導、異動など)というかたちで問題を解消するのがよいでしょう。

--相談するときに必要なものはありますか?

相談する際は、5W1H(When/いつ、Where/どこで、Who/だれが、What/なにを、Why/なぜ、How/どのように)を意識しつつ、時系列に沿って経過を整理したメモを作成しておくことをおすすめします。

なお、ハラスメントは強度のものから比較的軽微なものまで幅が広く、そのため、ハラスメントが認定されたからといって、常に加害者に懲戒解雇などの最も重い処分が下されるわけではない、という点は十分に理解しておく必要があります。

--会社が頼りにならない場合はどうすればいいですか?

そもそも相談窓口が設置されていない場合や、窓口担当者が加害者であるケースなど、社内の相談窓口を頼れないときは、労働局へ事業者に対する助言、指導、勧告を求めたり、紛争調停委員会の調停(事業主と話し合いの場を設けること)を求めることも考えられます。

また、相談窓口では解決困難な事案(ハラスメントの内容が重大で就労に影響が出ているなど)では、刑事告訴や民事訴訟(慰謝料や、ハラスメントを受けたことにより退職した場合の逸失利益などの請求)、労災申請、休職制度などの利用を検討するなど、専門家と相談の上で方針を決めたほうが良いケースも少なくありません。

相談窓口で解決が難しい場合や、今の辛い状況が「ハラスメント被害」といえるのかわからず、相談窓口の利用を躊躇しているという方は、苦しい状況が続くようであれば、一度弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

【取材協力弁護士】
江上 裕之(えがみ・ひろゆき)弁護士
日本労働弁護団・九州労働弁護団所属。主な取り扱い分野は労働問題と医療問題で、平成24年からは公益社団法人全国労働基準関係団体連合会の委託を受けて、全基連の主催する個別労働紛争処理研修の講師も務めている。
事務所名:岡部・江上法律事務所