名品には数々の効力がある。

身に着けることで日々のモチベーションアップにつながったり、自分に自信をくれたり――。

まさに、大人たちのお守り的存在だ。

本連載では人々から愛され、流行に左右されることない一生モノの“ファッション名品”にフォーカス。

今回登場するのは、ニューバランスを愛するT.Nさん。彼が紹介してくれるアイテムとは?

▶前回:結婚後、会社員をしながら27歳で早稲田大に入学。卒業時にルイ・ヴィトンで夫の勧めを押し切って…



今回お話を聞いたのは、T.Nさん


1991年生まれ、神奈川県出身の31歳。立教大学社会学部卒業後、公務員として働く。

よく行くエリアは原宿、桜木町。趣味はギターで、好きな食べ物は鮨。日本人とイギリス人のクオーター。



履き心地を追求したスニーカーブランドの名品


時に趣味が高じて、人生までもが好転することがある。T.Nさんからはそんな雰囲気を感じる。

今回彼が「名品アイテム」として紹介してくれるのは、ニューバランスのスニーカー。なんとT.Nさん、取材時にはスーツケースいっぱいに計6足を持参してきてくれた。

もはや誰も彼を止めることができない、正真正銘のスニーカー愛、いや、ニューバランス愛に溢れる男なのだ!



左から順番に、❶1906、❷M1500、❸ML2002、❹M990v5、❺M991、❻993。1足あたり、2万5千円〜4万円で購入


彼がニューバランスにハマったきっかけはM990v5(上記の写真❹)だった。しかし、それまでは特にスニーカーに興味があるわけではなかったという。

「名作と呼ばれるようなスニーカーを履いてみようと思い、20代でたまたま手に取ったのがM990v5でした」

そこからニューバランスの魅力にどっぷりハマっていったという。では、彼をそこまで夢中にさせた魅力とは一体何なのだろうか?

「なんといっても履き心地です。ここに関しては他のブランドとは一線を画しています」と断言。

かつて矯正用シューズブランドとして、アメリカ・ボストンで創業したことでも有名なニューバランス。社名の由来は、履いた人に“新しい(new)” “バランス(balance)”感覚をもたらすこと。

その名のとおり、長い年月をかけて進化し続けるブランドの、健康を意識した心地よさが一番のポイントだと彼は語る。



「可愛さ2割、カッコよさ8割」。その真髄とは?


では、デザインについてはどうだろうか?

「『可愛さ2割、カッコよさ8割』のバランスがいい。Nのロゴが小さいUK製のM1500(上記の写真❷)は、スムースレザーという上質な革が使われていて、セミフォーマルな格好に合うので、僕はよくスーツに合わせています。大人っぽい演出ができるのは、シュッとしたデザインのM991(上記の写真❺)」

普段の着用シーンやコーディネートによって、それぞれを履き分ける通っぷりを見せる。

「製造国によって、デザインにも大きな違いがあるんです。USA製はボテッとしたデザインが特徴なので、太いパンツに合う。一方でUK製のものは、シュッとしているので細いパンツに合います。国民性や体格、足のサイズにあわせて、作りが違うのが面白いですよね。UK製は、0.5cmサイズアップして履くのがおすすめです」



この日履いていたのは、2001年に99Xシリーズの第8弾モデルとして登場した「M991」。柔らかいグレージュのような色合いがポイントだ


「ニューバランスといったら絶対にグレーは譲れない!」と、色にもこだわりがあるようで。

「グレーのプロダクトを集めた『Grey Day』というイベントを毎年実施するくらいに、ニューバランスではグレーを推しています。M990v5(上記の写真❹)がスタンダードで、これが、ザ・ニューバランスの色です。そして、グレーと一言で言っても本当に様々な色があるので…実に奥深い」と、T.Nさん。

男性は何かと無難でフォーマルな黒を選びがちだが、このグレーの色合いを足元に持ってくることで、瞬く間にコーディネートがまとまるという。それくらい絶妙なカラーリングが魅力なのだ。

加えてこの日、彼がニューバランスに合わせて持ってきてくれたのは、バブアーのコート「ビューフォート」だ。



男心をくすぐる、こだわりの作りがお見事!

バブアーといえば1980年に誕生した乗馬用ジャケット「ビデイル」が有名だが、狩猟用ジャケットとして誕生した「ビューフォート」も人気だ


ビューフォートは、ワックスドコットンという生地が特徴的で、経年変化を楽しむコート。自分で育てる必要がありその手間暇がかかる性質ゆえ、洋服好きの紳士たちからじわじわ人気が広がっていったアイテムでもある。

彼とこのジャケットの出合いは、ひょんなことだった。

「ずっと気になっていて、毎日ネットで調べていたんです。そうしたら実家に帰ったときに、たまたま父親が新品のバブアーを3着持っていて、そのまま一着を譲り受けました。この時ばかりは、父親との血のつながりを感じざるを得ませんでした(笑)」

お気に入りのポイントは、「英国的なデザインが前面に出ているところ。昔、荒れた海で働く漁師ために作られたのがバブアーというブランドの始まりなのだとか。その環境にあわせて、上質なコットンにオイルを染み込ませた丈夫な生地が生まれて…という、誕生の歴史が深いのも男心をくすぐります。

ノンオイル(ノンワックス)のモデルも発売されていますが、やはりノンオイルにはない、バブアーらしいオイルの色味と香りが非常に良いです」と語る。

ビューフォートは“狩猟用のコート”という、ひと癖あるアイテム。だからこそ、センスを磨いた大人が着こなしを楽しめる一着なのかもしれない。

そして、今狙っているアイテムのひとつに、ニューバランスの「M992」があるという。

「M992は、スティーブ・ジョブスも履いていたとされるモデルです。ニューバランスの中では一番と言ってもいいほど、洗練されたデザインのシューズ。ライフステージに応じて、お気に入りを増やしていきたい」と話してくれた。






取材を通して、スニーカーとは、実に奥深いものであると実感させられた。

例えば同じニューバランスでも、機能性を重視したゴアテックスやコーデュラを使用したモデル、セレクトショップ別注でデザイン性をアップグレードしたモデルなど、さまざまなシーンに適したシューズが展開されている。

履き心地のよさは言うまでもないが、この“細かくチューニングされたデザイン性と機能性”こそが、男のコレクション欲を刺激するのかもしれない。

ラグジュアリーな有名ブランドのスニーカーももちろん素敵。一方で、名作と呼ばれるスニーカーには、いつの時代も我々の人生にグッと安心感をもたらしてくれる力があるのだ。

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写真/品田健人