都心へのアクセスもよく、自然も豊かで移住先としての人気も高い群馬県。居住地として注目を集める一方で、昨今の群馬県の地価は下落傾向にあります。しかし、なぜ群馬県の地価が下落しているのでしょうか。この記事では、群馬県の地価の推移や地価が下がっている要因、今後の見通しについて解説します。

群馬県の地価推移

まず、群馬県による「令和5年地価公示」で公表された群馬県の住宅地、商業地、および工業地の地価の推移は以下の通りです。

※群馬県「令和5年地価公示結果(群馬県分)」をもとに作成

群馬県の住宅地の地価は、2018年(平成30年)より6年連続で下降傾向です。2021年(令和3年)には、群馬県は「都道府県別の移住希望地調査」で過去最高位の全国5位になるなど移住地として注目を集めましたが、そのなかでも地価は下落し続けてきました。

※群馬県「令和5年地価公示結果(群馬県分)」をもとに作成

一方、商業地の地価は、2018年(平成30年)以降、緩やかな上昇基調を見せていました。2022年(令和4年)には減少に転じましたが、現下の2023年(令和5年)は、高崎市などの都市部を中心に地価の上昇が見られ、プラスへと持ち直しています。

※群馬県「令和5年地価公示結果(群馬県分)」をもとに作成

工業地の地価は2017年(平成29年)以降、横ばいで推移した後は、なだらかな上昇基調です。昨今のテレワークの普及やBCP(事業継続計画)への対応のため、多くの企業が群馬県に進出し工業地需要が高まっていることもあり、堅調に推移しています。

以下は、住宅地、商業地、工業地の地価の平均変動率の推移を示すものです。

※群馬県「令和5年地価公示結果(群馬県分)」をもとに作成

住宅地と商業地の平均変動率を見ると、マイナスで推移しているものの、変動幅は縮小しており、減少の程度が緩やかになっています。

また、住宅地では主要駅近くのマンション用地、商業地では温泉観光地などで地価の上昇が見られます。回復の兆しがあるため、今後は減少傾向に歯止めがかかることが期待できるでしょう。

工業地については、変動率がプラス方向で力強く推移しています。今後も順調な上昇が見込めるかもしれません。

※参考:
群馬県「令和5年地価公示結果(群馬県分)」
NPO法人ふるさと回帰支援センター「2021年移住希望地域ランキング公開」

なぜ群馬県の住宅地の地価は下がっているのか

群馬県が魅力ある地域と評価されているにもかかわらず、なぜ住宅地の地価が下がっているのか、以下ではその理由について解説します。

空き家が増えている
群馬県で住宅の地価が下がっている理由の一つとして、空き家が増えていることが挙げられます。

5年に1度の住宅・土地統計調査によると、最新2018年の群馬県の空き家数は15万8,300戸と5年前に比べ5.4%増加し、空き家率は16.7%と過去最高となりました。

空き家の増加は、家屋の倒壊や崩壊、ゴミの不法投棄、防犯性の低下を招くなど地域の環境や景観に悪い影響をおよぼすことがあります。地域環境が悪くなると、住みたいという需要が減るため、地価も下がる大きな要因となるのです。

なお、群馬県では空き家対策として、空き家全般に関する「ぐんま住まいの相談センター」を設け、「群馬県空き家活用・住み替え支援事業」を行っています。支援事業として、高齢者世帯の持ち家や空き家を支援機構が借り上げ、子育て世帯や移住希望者などに転貸しています。

※参考:総務省「平成30年住宅・土地統計調査」

農地から宅地へ移行している
群馬県の住宅地の地価が下がるもう一つの理由としては、農地を宅地化するケースが増えており、土地が余っていることが考えられます。

群馬県の農地耕地面積は1995年以降減り続けており、2020年は6万6,800haと、5年前と比較して約1割の減少です。一方、農地の転用用途としては、「住宅用地」が全体の3割と大部分を占めます。(※)

農地が多く宅地化されているものの、買い手がつかずに供給過多となっているため、土地の価格が下がっているかもしれません。

※出典:群馬県「令和4年度 群馬の農業」

地価があがっている地域もある

群馬県の住宅地の地価が下がっているとお伝えしましたが、地域によっては地価が上がっているケースもあります。

たとえば高崎市内では、前年比で地価が1%~3%ほどの大幅プラスとなった地点も多く見られます。高崎市には新幹線の駅があり、高崎駅を中心として商業施設や文化施設も充実した都市です。群馬県内で最大の人口を有し、県内交通の拠点にもなっています。

便利で人気が高いエリアのためニーズも高く、地価は下がることなく堅調に推移しています。

群馬県の魅力

地価に下落傾向が見られるものの、群馬県は魅力の多い県です。ここではその一例を紹介します。

移住希望者に人気がある
群馬県は、移住先として高い人気があります。NPO法人ふるさと回帰支援センターが毎年実施する「都道府県別の移住希望地ランキング」では、2021年に群馬県として過去最高位の全国第5位を記録しました。2022年は9位にランクを下げたものの、同センターへの群馬県ブースへの相談件数は伸びているとのことです。

人気の移住先となった理由としては、コロナ禍でリモートワークが進んだことが考えられます。東京へアクセスしやすく自然豊かな群馬県が、「転職なき移住が可能な土地」と認識されるようになりました。そこで、群馬県なら仕事を続けながら、日常生活の満足度を上げられると期待が高まっています。

※参考:
ふるさと回帰支援センター
「2021年移住希望地域ランキング公開」
「【2022年】移住希望地ランキング公開」

県民所得が高い
群馬県は県民所得の平均が高く、経済活動が活発であることも魅力的といえるでしょう。

群馬県の2019年度の1人当たり県民所得は、全国8位と高い水準です。この背景には、2021年度の工業立地件数が全国第4位であるなど、群馬県が製造業の盛んなエリアであるという事情があります。

特に自動車製造などの輸送機器製造や、食品製造を中心に企業や工場が多く集積しています。また、繊維業や伝統工芸といった地盤産業も盛んで、群馬県の経済を支えています。

※参考:
一般財団法人群馬経済研究所「主要経済指標で見る群馬県」
経済産業省「工業立地動向調査 令和3年(2021年)個別表リスト」

地震が少ない
群馬県は地震が少ない県の一つです。下記は群馬県周辺の地震発生回数をまとめたもので、群馬県では震度4以上の大きな地震発生数が少ないことがわかります。

出典:気象庁「令和4年12月 地震・火山月報(防災編)」

2022年にNTTが本社機能の分散拠点を群馬県に設けるなど、群馬県内へ進出する大企業が増えたのは、この地震の少なさに目を付けたためといわれています。

企業にとっては、地震や津波などの災害が発生した場合でも事業が継続できる体制を整えることが急務となっています。そうしたなかで、群馬県は地震も少なく、海に面していないため津波の心配もなく、安全・安心な拠点として評価されています。

※参考:
上毛新聞「NTT、高崎の分散拠点を公開 災害時に本社バックアップ 1年かけ検証」
朝日新聞デジタル「NTT、大阪王将、群馬進出は「災害少ないから」 際立つ低リスク」

都心へのアクセス良好
群馬県は都心へアクセスしやすいのも大きな魅力といえるでしょう。たとえば、下記の表は高崎駅から他エリアの主要駅までの鉄道所要時間をまとめたものです。

※所要時間は「Yahoo!路線情報」で算出した最短時間について10分単位に切り上げ

群馬県は特に都心部へアクセスしやすく、東京駅へは上越新幹線か北陸新幹線に乗って約50分です。また車の場合でも、東京へは関越自動車道を使い約1時間で行けます。

まとめ

群馬県の地価はやや下落傾向にあります。地価が下がる理由としては、人口の減少で空き家が増加していることや、農地の宅地化で土地が余っていることなどが考えられます。それでも、群馬県は交通の便がよいうえ、大きな地震も少ないため安心して住めるなど利点が多く、移住者からも人気が高いところです。

また、地価が安いということはマイホームを手に入れやすいということでもあります。移住支援制度もあり、移住を考える人には、群馬県はとても魅力的なエリアといえるでしょう。