夏の新潟開催も残すところ、あと2週。今週は2歳重賞のGIII新潟2歳S(新潟・芝1600m)が8月27日に行なわれる。

 このレースの勝ち馬には、ハープスターやロードクエスト、ケイデンスコールやセリフォスなど、その後の重賞戦線でも活躍する馬が数多くいて、先々に向けても注目すべき一戦となる。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は4勝、2着3回と比較的安定した結果を残している。それでも、伏兵の台頭も何度となく見られ、3連単では好配当がしばしば生まれている。そんなレースの特徴について、スポーツ報知の坂本達洋記者はこう語る。

「一昨年の勝ち馬セリフォスなど、時に大物が登場する2歳重賞。とはいえ、新馬勝ち、または未勝利を勝ち上がってきたメンバーばかりなので、能力の比較が難しいのは確かです。そのため、新馬戦のパフォーマンスが人気の指標になりやすくなっています」

 今年は、出走予定馬の9頭が新馬勝ち。そのなかで、とりわけ目を引くレースを見せたのはどの馬か。坂本記者が続ける。

「東京の新馬戦(6月24日/東京・芝1400m)を快勝したアスコリピチェーノ(牝2歳)。今年は、同馬が主役候補に推されそうです。

 同馬は新馬戦で4角11番手から差しきり勝ち。メンバー最速の33秒3という上がりタイムをマークした末脚には目を見張るものがありました。

 レース当日に取材をしていて、鞍上のクリストフ・ルメール騎手も『いい瞬発力を使ってくれた。1600mも大丈夫。最後はいい脚だった』と絶賛していたことも印象に残っています」

 同馬が1番人気に推されれば、過去の傾向からしてその信頼度は一段と増すだろう。だが、坂本記者は「そう簡単にいかないのが競馬。つけ入る隙はあると見ています」として、アスコリピチェーノに対して疑問の目を向ける。

「というのも、アスコリピチェーノは血統的に気負いやすい、というイメージがあるからです。母アスコルティは、芝の1200m〜1400mを主戦場とした短距離馬。ドゥラメンテ産駒の半兄アスコルターレも、芝1200mのオープン特別・マーガレットSを勝つなどスピード豊かな馬です。しかし母も兄も、1600m以上のレースではふた桁着順に終わって、距離が持ちませんでした。

 アスコリピチェーノも初戦こそ真面目に走った感がありますが、距離が延びてどうか。一度使って、2戦目でどう変わってくるかが、カギになるでしょうね」

 さらに坂本記者は、このレースで好成績を収めている馬の共通点に着目し、アスコリピチェーノへの不信感を募らせる。

「ここ最近の新潟2歳Sで馬券に絡んだ馬たちを見てみると、直近5年では前走が芝マイル以上だった馬がほとんど。前走がマイル未満の距離だったのは、2019年に2着だったペールエールと、2018年に3着に入ったスティルネスの2頭だけです。

 その点からも、前走が芝1400m戦だったアスコリピチェーノには死角があると言えますし、全幅の信頼を寄せるのは危険だと思います」

 では、どういった馬が狙い目になるのか。坂本記者は「キャリアが少ない馬が多いこと。また、新潟の外回りコースという条件からスローペース必至の展開と見て、それに適した馬をピックアップしたいと思います」と言って、2頭の穴馬候補を挙げた。


新潟2歳Sでの大駆けが見込まれるホルトバージ

「まず気になるのは、ホルトバージ(牡2歳)です。まだ粗削りな部分がある馬ですが、伸びしろの大きさを考えて期待したい1頭です。

 新馬戦(7月16日/中京・芝1600m)は7着に敗れましたが、メンバー最速タイの上がり(34秒3)をマークするなど、脚力のあるところは見せました。そして実際、続く2戦目の未勝利戦(7月30日/新潟・芝1800m)でもメンバー最速タイの上がり(34秒4)を繰り出して、きっちり勝ち上がりました。

 一瞬のキレ味というよりも、長くいい脚が使えるタイプ。前走では同じ新潟の舞台で快勝し、コース適性があるのも強みです」

 今回は、前走から1ハロン距離が短縮となるが、その点での不安はないのだろうか。

「前走も抜群の手応えで直線を向きながら、最後は内にささるような面を見せており、それを考えれば、距離が短くなるのはプラスでしょう。好位からしぶとくスピードの持久力を生かせれば、大駆けがあってもおかしくありません」

 坂本記者が推奨するもう1頭は、過去にも人気薄での好走例が多い牝馬だ。

「新潟2歳Sは、よく言われる『夏は牝馬』の格言に従いたい一戦。昨年も牝馬のキタウイングが4番人気で勝利していますし、過去5年を見ても、馬券圏内に入った15頭中5頭が牝馬でした。

 そして今年は、5頭の牝馬が出走予定ですが、なかでも面白いのはショウナンマヌエラ(牝2歳)です。

 前走の新馬戦(7月9日/中京・芝1600m)では、抜群のスタートを決めて逃げきり勝ち。今回も他にハナを主張する馬は見当たらず、この馬が主導権を奪うと考えていいと思います。

 スローペース濃厚のなか、多くの馬は"ヨーイドン"のキレ味勝負をイメージしているはず。そこを逆手にとって、早めのスパートから粘り込みを図れば、一発あってもいいと思います。仕掛けどころひとつで、波乱の使者になる可能性は大いにあります」

 力関係が未知数の2歳戦。だからこそ、ここに挙げた伏兵2頭が勝ち負けに加わったとしても何ら不思議はない。