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店員を呼んで、閉店時間を過ぎても「世間話」をし続ける客に迷惑しているーー。ホームセンターの従業員から、弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられた。

相談者によると、店長か知識豊富な社員を呼び出し、買い物に関係ない話をし続け、最低でも2時間以上は店に居座るという。業務に支障をきたしたり、従業員が帰れなくなったりする事態も起きていると困っている様子だ。

このような客を追い出すことはできるのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。

●「不退去罪」にあたる場合も

ーー店に居座り続ける客の行為は、そもそも「犯罪」にあたらないのでしょうか。

店長などから退去の要求を受けても客が退去しない場合は、不退去罪(刑法130条後段)が成立します。不退去罪とは、要求を受けたにもかかわらず、人の住居や建造物などから退去しなかった場合に成立する犯罪です。

退去を要求しうるのは、住居などへの立入りに有効な承諾を与えうる人となります。ホームセンターの店長や、店長から退去要求の権限行使を委任された従業員がこれにあたります。

退去の要求は、言動や動作によって相手方に認識されるものであればよく、かならずしも「出ていってください」などと明示する必要はありません。

退去の要求は正当でなければなりません。今回のように買い物に関係なく居座り続ける客に対する退去の要求は、正当性を有していると考えられるでしょう。

●1人ではなく、最低2人以上で対応を

ーーこのような客に対して、なんらかの法的措置や対策をとることはできますか。

今回のような客の行為は、業務に多大な支障を生じさせるものといえます。まずは、丁寧に退去を求めるべきです。丁寧な接客と、業務を妨害するような客への対応は、明確に区別しなければなりません。なお、退去を求める際は、客に対する暴行や脅迫などの罪が成立するような行為はしないように注意が必要です。

それでも客が退去の求めに応じず、店内に居座ったり、別の日にも同じことを繰り返したりする場合は、警察に不退去罪で被害届を出した方がよいでしょう。同じような迷惑行為を繰り返す客に対しては、施設管理権に基づき、入店を断ることもできると考えます。

退去を求めたり、入店を断ったりする場合には、1人の従業員に任せるのではなく、できれば店長を含めて、最低でも2人以上で対応するようにしましょう。処理が円滑に進まなかったり、場合によっては従業員の心身にダメージを与えたりするおそれがあるためです。

【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/