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自動車保険にオプションとして付けられる「弁護士費用特約」をめぐり、「自分の過失は一切なく、けが人もいない物損事故だけど、相手方との交渉で特約を使うべきか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

ほかにも「弁護士は自分で選べるのか」「どの程度の費用をカバーしているのか」といった声や、「そもそもメリットは何なのか」という疑問も寄せられています。

交通事故に備えて特約を付けたものの、使い方に悩む人も少なくないようです。どんな時に利用すればいいのか、どんなメリットがあるのかなどについて、交通事故案件を多数扱ってきた平岡将人弁護士に聞きました。

●交渉などの一切を任せることも可能

--弁護士費用特約はどこまでカバーしてくれますか。

契約内容によりますが、300万円を限度額とするものが多いと思います。限度額の範囲内であれば交渉や訴訟など全般的にカバーしてくれます。

--依頼したい弁護士を自由に選ぶことはできますか。

基本的には交通事故の場合は、事故が起きて、その後からですね。本来は、いつからでも使って弁護士に頼むことができます。「この弁護士にお願いしたい」と保険会社の担当者に伝えれば、どの弁護士でも依頼することが原則可能です。

--自分が加害者側でも特約は使えるのでしょうか。

実際の事故で、自分が「加害者」かどうかは、過失の大きさによるので微妙な場合もあります。ケースバイケースですが、自分が損害賠償請求をするときに特約を利用する、賠償請求を受けるだけのときには利用しないと考えてもらっていいと思います。

●弁護士がいれば「賠償額の上積み」狙える

--特約のメリットは何でしょうか。

弁護士と一緒に事故事件を進められるのが一番のメリットだと思います。弁護士がいれば、事故後のさまざまな状況で都度アドバイスをもらえます。必要な知識や情報を調べるのも相応の労力がかかりますから、すぐに専門家の助言を受けられるのは大きいと思います。

また、事故後の処理を代行してもらえます。(事故の相手方が加入している)保険会社の担当者と話すこと一つとっても「仕事が忙しくてなかなか進まない」「交渉ごとが精神的にストレスになる」という方は多いです。弁護士がいれば、保険会社との間に入ってくれます。

弁護士が入ることで賠償額が上がる可能性が高いですから、その点も目に見えやすいメリットだと思います。

--弁護士に依頼すると賠償額が上がるのはなぜでしょうか。

よく言われるのは、交通事故に遭ったときの慰謝料ですね。慰謝料は精神的な苦痛・損害に対する賠償額で、なかなか目に見えづらく損害評価がしづらいので、慰謝料を算出する基準があります。

そのうち金額が一番低いのは「自賠責保険からの慰謝料額を計算するための基準」(自賠責基準)です。一番高いのが「裁判所の判決に基づいた基準」(裁判基準・弁護士基準)です。弁護士が入らないと、保険会社はなかなか応じてくれず、裁判基準で終わらせるのが難しいです。

裁判基準では、治療期間の長さが重視される傾向にあります。保険会社は交渉の段階で治療期間がどの程度必要だったのかをそれほど調べていないでしょうし、因果関係などを厳密に判断せずに早期解決を目指して提案してきます。この点が裁判基準より低い額での提示につながっているのではないでしょうか。個人的には最初から裁判基準で算出してくれたらいいのにと思います。

また、交通事故の損害賠償では後遺障害の割合がすごく大きいです。後遺障害を取るために弁護士のアドバイスを受けたり、申請が認められなかった場合の不服申し立てをしたりできるため、賠償額が上がり得ます。

【取材協力弁護士】
平岡 将人(ひらおか・まさと)弁護士
中央大学法学部卒。全国で10事務所を展開する弁護士法人サリュの前代表弁護士。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「交通事故案件対応のベストプラクティス」ほか。実務家向けDVDとして「後遺障害等級14級9号マスター講座」「後遺障害等級12級13号マスター講座」など。
事務所名:弁護士法人サリュ銀座事務所
事務所URL:http://legalpro.jp/