マイナンバーカード「情報漏洩に不安」「制度に不信感」相次ぐトラブルで“自主返納”急増…原因・政府の対応を専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。7月3日の週は、夏休みのユージに代わってJOYがパーソナリティつとめています。
7月5日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「マイナンバーカード、自主返納が増加 Twitterでは『返納運動』広がる」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
都道府県の県庁所在地と政令指定都市の52の市区を対象とした共同通信の調査で、マイナンバーカードの自主返納が5月以降、少なくとも318件あったことが分かりました。自主返納されたマイナンバーカードは、4月は20件程度だったものの、5月以降に個人情報の誤登録などのトラブルが続出したことから「情報漏えいが不安」「制度に不信感がある」などの理由で増加したとのことです。
◆マイナンバーカードの自主返納が急増
吉田:Twitter上では「#マイナンバーカード返納運動」をつけて、マイナンバーカードの返納を呼びかける投稿が相次いでいます。塚越さん、マイナンバーカードをめぐるトラブルが止まらないですね。
塚越:3月にコンビニで証明書を発行するサービスで、誤って他人のものを交付する事例が相次ぎました。このサービスは、富士通の子会社「富士通Japan」が提供しているものです。この件に関して富士通は一斉点検をおこなっていて、6月17日(土)に点検を終了しました。
ところが、点検終了後の6月28日(水)に、福岡県宗像市の市役所に設置された証明書発行システムで、また誤って他人のものを交付する事例がありました。これも「富士通Japan」が提供しているものなのですが、システムを直したけれど、宗像市のものが反映されていなかったのが原因ということです。何のための一斉点検だったのか、というレベルです。
この富士通のシステムは123の自治体にサービスを納入していたのですが、問題発覚後すぐに全体のシステムを停止して「再点検」することにしており、再開時期は未定です。これだけ注目されている問題なのに、富士通の対応はあまりにもずさんです。同時に国も、企業に責任を押し付けるだけでは済まないですね。
JOY:マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」をめぐっても、トラブルが報告されていますね。
塚越:マイナ保険証を使用しようとすると「無効」などと表示され、患者が10割負担になる事例が相次いでおり、全国保険医団体連合会の調査では、5月23日〜6月19日の間で全国で1,291件ありました。そこで厚生労働省は6月29日(木)、「マイナ保険証」で保険資格が確認できない場合でも本来の負担で済むための対策案を提示しています。
それによると、機械の問題でマイナ保険証が読み取れない場合は、現行の紙の保険証や、マイナポータルでの確認が可能であることを明確化しました。紙の健康保険証が手元にない場合や、暗証番号を忘れてマイナポータルが確認できない場合は、「被保険者資格申立書」に記入して提出すると、窓口での支払いは本来の負担で済むようになります。現場の医療機関は対応に困っているため、ルールを明確にするということです。
また、最終的に患者が無保険だった場合も、保険者の間で負担しあって、医療機関に費用を補填する仕組みも導入するとのことですが、これらの対応策が運用されるのは、遅くとも8月の診療分から予定しているとのことなので、遅いですね。
◆SNSで広がる「返納運動」に政府も危機感?
吉田:トラブルが相次ぐなかでマイナンバーカードの自主返納が増加し、Twitter上では「返納運動」が起きています。こちらは、どのようにご覧になっていますか?
塚越:5月以降で318件の返納という数字を多いと思うか少ないと思うかは人それぞれですが、4月と比べて増えているのは確実で、手続きが面倒でも返納をする人が出ているほど、国民は怒っているということです。ここまでグダグダなシステムの問題を考えれば当然かな、とも思います。Twitterは怒りを伝えるシステムとしては、一定の効果を出しているなと思います。
6月28日(水)に自民党本部で開かれた厚生労働部会では、出席した議員から「返納運動が始まっている」として対応を求める声が上がったので、自民党も危機感を感じているのは間違いないかと思います。政府はマイナンバーカードの普及のための「マイナポイント事業」に、これまで2兆円を超える予算を計上しています。
要するに、事実上の「金のバラマキ」と、それによってゴリ押しをしたのですが、それでも結果は返納運動になるほどのブーイングが起きています。これは残念ながら「デジタル敗戦」と言わざるを得ないということで、技術力の問題というより、政府の“急ぎ過ぎ”が原因でシステムにトラブルが出てしまったということです。
また、7月4日(火)のニュースによると、暗証番号がなくてもマイナンバーカードを発行できるようにする方針が発表されました。「暗証番号がなくても作れるの!?」というところも問題ですし、このシステム自体に疑問があります。とにかく問題がたくさんあるのですが、来年秋に紙の保険証を廃止するという話になっています。これだけ問題があると、土壇場になって「紙の保険証廃止をやっぱり止める」みたいなことがあり得ます。みなさん注意してこの問題を見ていくしかないのかな、と思います。
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▶▶この日の放送内容を「radikoタイムフリー」でチェック! https://www.tfm.co.jp/link.php?id=7713
聴取期限 2023年7月13日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
7月5日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「マイナンバーカード、自主返納が増加 Twitterでは『返納運動』広がる」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
都道府県の県庁所在地と政令指定都市の52の市区を対象とした共同通信の調査で、マイナンバーカードの自主返納が5月以降、少なくとも318件あったことが分かりました。自主返納されたマイナンバーカードは、4月は20件程度だったものの、5月以降に個人情報の誤登録などのトラブルが続出したことから「情報漏えいが不安」「制度に不信感がある」などの理由で増加したとのことです。
◆マイナンバーカードの自主返納が急増
吉田:Twitter上では「#マイナンバーカード返納運動」をつけて、マイナンバーカードの返納を呼びかける投稿が相次いでいます。塚越さん、マイナンバーカードをめぐるトラブルが止まらないですね。
塚越:3月にコンビニで証明書を発行するサービスで、誤って他人のものを交付する事例が相次ぎました。このサービスは、富士通の子会社「富士通Japan」が提供しているものです。この件に関して富士通は一斉点検をおこなっていて、6月17日(土)に点検を終了しました。
ところが、点検終了後の6月28日(水)に、福岡県宗像市の市役所に設置された証明書発行システムで、また誤って他人のものを交付する事例がありました。これも「富士通Japan」が提供しているものなのですが、システムを直したけれど、宗像市のものが反映されていなかったのが原因ということです。何のための一斉点検だったのか、というレベルです。
この富士通のシステムは123の自治体にサービスを納入していたのですが、問題発覚後すぐに全体のシステムを停止して「再点検」することにしており、再開時期は未定です。これだけ注目されている問題なのに、富士通の対応はあまりにもずさんです。同時に国も、企業に責任を押し付けるだけでは済まないですね。
JOY:マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」をめぐっても、トラブルが報告されていますね。
塚越:マイナ保険証を使用しようとすると「無効」などと表示され、患者が10割負担になる事例が相次いでおり、全国保険医団体連合会の調査では、5月23日〜6月19日の間で全国で1,291件ありました。そこで厚生労働省は6月29日(木)、「マイナ保険証」で保険資格が確認できない場合でも本来の負担で済むための対策案を提示しています。
それによると、機械の問題でマイナ保険証が読み取れない場合は、現行の紙の保険証や、マイナポータルでの確認が可能であることを明確化しました。紙の健康保険証が手元にない場合や、暗証番号を忘れてマイナポータルが確認できない場合は、「被保険者資格申立書」に記入して提出すると、窓口での支払いは本来の負担で済むようになります。現場の医療機関は対応に困っているため、ルールを明確にするということです。
また、最終的に患者が無保険だった場合も、保険者の間で負担しあって、医療機関に費用を補填する仕組みも導入するとのことですが、これらの対応策が運用されるのは、遅くとも8月の診療分から予定しているとのことなので、遅いですね。
◆SNSで広がる「返納運動」に政府も危機感?
吉田:トラブルが相次ぐなかでマイナンバーカードの自主返納が増加し、Twitter上では「返納運動」が起きています。こちらは、どのようにご覧になっていますか?
塚越:5月以降で318件の返納という数字を多いと思うか少ないと思うかは人それぞれですが、4月と比べて増えているのは確実で、手続きが面倒でも返納をする人が出ているほど、国民は怒っているということです。ここまでグダグダなシステムの問題を考えれば当然かな、とも思います。Twitterは怒りを伝えるシステムとしては、一定の効果を出しているなと思います。
6月28日(水)に自民党本部で開かれた厚生労働部会では、出席した議員から「返納運動が始まっている」として対応を求める声が上がったので、自民党も危機感を感じているのは間違いないかと思います。政府はマイナンバーカードの普及のための「マイナポイント事業」に、これまで2兆円を超える予算を計上しています。
要するに、事実上の「金のバラマキ」と、それによってゴリ押しをしたのですが、それでも結果は返納運動になるほどのブーイングが起きています。これは残念ながら「デジタル敗戦」と言わざるを得ないということで、技術力の問題というより、政府の“急ぎ過ぎ”が原因でシステムにトラブルが出てしまったということです。
また、7月4日(火)のニュースによると、暗証番号がなくてもマイナンバーカードを発行できるようにする方針が発表されました。「暗証番号がなくても作れるの!?」というところも問題ですし、このシステム自体に疑問があります。とにかく問題がたくさんあるのですが、来年秋に紙の保険証を廃止するという話になっています。これだけ問題があると、土壇場になって「紙の保険証廃止をやっぱり止める」みたいなことがあり得ます。みなさん注意してこの問題を見ていくしかないのかな、と思います。
吉田明世、塚越健司さん、JOY
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聴取期限 2023年7月13日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/