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ニュースを本気で噛み砕き、隠れた“ヒーロー”を見つけだす

――ローンチから約1年となる今年3月に月間約1億PVを達成。おめでとうございます。振り返りの意味で、集英社オンライン立ち上げの経緯から教えてください。

集英社には雑誌や書籍に紐づいたWebサイトが100以上存在する上、「ONE PIECE.com」などコンテンツに関するサイトもあり、すでに完結しているものも含めれば、実に300以上のWebサイトがあります。

世の中にWebニュースメディアが群雄割拠する時代にあって、これだけWebサイトが充実する集英社に活字のニュースメディアがないのはどうなのかとの話が2021年1月頃に上がりました。そこからワーキングチームが立ち上がり、準備期間を経て集英社オンラインが誕生したのが2022年3月31日です。

――志沢さんが編集長に就任したのはどういう経緯ですか。

集英社オンラインの前は、ノンフィクション編集部にいて、「よみタイ」というコラムやエッセイなどの読み物サイトの立ち上げに携わっていました。それ以前には女性誌の経験が25年くらいあり、その後は雑誌デジタルという部署にいたこともあったので、おそらくそうした経験を活かしてほしいと会社が考えたのではないかと思います。

――読者ターゲットはどんな感じですか。

よく聞かれるのですが、逆にWebニュースメディアの編集長の皆さまに「読者ターゲットを設定していますか?」と素直に聞いてみたいです。例えば、女性誌のサイトなら「20代の働く女性」などの設定がありますが、ニュースメディアの場合、ヒットした記事によって性別は「先月は女性、今月は男性が多い」と分かれますし、年齢も変わります。Webメディアはターゲティングしたほうがいいと聞きますが、ビジネスから事件、エンタメまで取り扱う総合メディアなので、現状は難しいというのが実感です。それよりも、いつも編集部のみんなに言っているのは、「スマホの誕生によって、人類の歴史上、おそらく今が最も文字を読まれる時代だから、自社サイトだけでなく外部配信先のヤフーやスマートニュースからどうすれば読んでもらえるか、読者に何を届けられるかをよく考えて企画を出してほしい」ということです。Webメディアの戦い方としては間違っているかもしれませんが、ターゲティングは今のところ、そんなに気にしなくていいと捉えています。

――集英社オンライン全体を貫く編集方針はありますか。

検索すると、集英社オンラインの隣に「毎日が、あたらしい」と出てきます。それがメディア立ち上げ時に編集部のみんなと考えたキャッチコピーです。ヘミングウェイの『老人と海』に出てくる言葉ですが、それは偶然で、後から知りました。根底にあるのは、集英社オンラインを通して新しい物事に出合ってほしいという気持ちです。記事に書かれた内容が一般的には最先端の情報や最新ニュースでなかったとしても、集英社オンラインを通して初めて知ったことであるならば、それが読者の皆さまにとっての新しいエンタメになってほしいという意味合いを込めました。

立ち上げから1年が経過して、次のフェーズに行こうと考えて作ったスローガンが「ニュースを本気で噛み砕け」です。速報性、即時性はテレビや新聞に到底かなわないので、集英社オンラインでは“付加価値”を意識しています。周辺取材を本気で行い、噛み砕くからこそ、新聞にはあまり載っていない、ちょっとエモーショナルな要素も加わります。その上で私は「ヒーローを見つけてきてほしい」と現場に伝えています。事件に限らず、スポーツやエンタメでも主役を支える陰のヒーローたちがいるものです。事件報道においても、ある意味犯人や被害者が事件の主役になりがちですが、集英社オンラインは周辺取材を粘り強く行い、事件を本気で噛み砕き、その周りや陰にいるヒーローたちに光を当てるWebメディアとして存在価値を出していこうとしています。

PV数向上のきっかけになった『ゴールデンカムイ』作者のインタビュー

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・競合メディアとの差別化ポイント
・マネタイズの現状と今後の展望
・ハッピー感を大切にして、Webニュースメディアの第一想起を目指す

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記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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