DeNAが交流戦で初優勝も高木豊は「理解できない」打順や戦術にダメ出し「バカバカ打たせてるだけじゃ点は取れない」
交流戦で初の優勝、リーグでは首位の阪神を2.5ゲーム差で追うDeNA。好調をキープしているが、球団OBの高木豊氏はこれまでの選手起用や采配について「理解できない」ことも多かったようだ。その愛あるダメ出しとは?
DeNAで3年目の指揮を執る三浦大輔監督
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――まずDeNAの打線では、開幕から1番に起用され続けていた佐野恵太選手が、6月8日のソフトバンク戦から3番で起用されていますね。
理想は1番・関根大気、2番・桑原将志です。2人とも3割を打っていて足もありますから作戦の幅も広がります。関根が2番という考えもあるかと思いますが、1番が出塁した際に2番は右方向にも打ってほしいので、桑原のような右打者のほうがいい。左打者に引っ張らせるより、右打者に流し打ちをさせるほうが成功の確率が高いですし、桑原は右打ちができますからね。
ここにきてやっと関根を1番で起用していますが、継続してほしいです。桑原が離脱してしまったのは残念ですが(6月14日、左ふくらはぎの肉離れで出場登録抹消)、なんとかみんなでカバーしてほしいですね。
――ここまで、ほとんどの試合で3番を打っていた宮粼選手は、最近の試合では5番を任されています。
高木 勝負強い牧秀悟が4番、牧よりも打率がいい宮粼が5番に入ることで、牧を後方からサポートできます。後ろに宮粼がいたら牧と勝負せざるを得ませんし、このまま固定するべきです。4番との勝負を避けられてしまう5番ではダメですし、威圧感が必要。そういう意味で、今シーズンの宮粼は最強の5番なので、牧はもう少しラクになると思います。むしろ、なぜ今まで宮粼を3番に置いていたのか、理解できなかったですね。
――佐野選手が3番のほうがいい?
高木 いえ、足と勝負強さがないので、僕なら佐野は6番にします。3番には「守備につけるなら」という条件つきですが(タイラー・)オースティンを置きますね。広角に打てて、ホームランもあるし、足もそこそこ速いですから。
6番はランナーがいる状態でまわることが多いので、勝負強さ、ある程度の長打力があることが理想です。佐野は勝負強くないのが不安ですが、そこそこ長打力はあるので。
(ネフタリ・)ソトを外し、オースティンがファーストでもいいですね。今シーズンのソトはあまりよくないですし、どちらを選ぶかといったら、僕はオースティンを選びます。
――関根選手は開幕当初から5月中旬までは6番、以降は2番、1番と打順が変わっていますが、どの打順でも好調をキープしていますね。
高木 今の打線のキーマンは関根でしょう。DeNAは関根が止まると打線が止まってしまう、と言っても過言ではありません。
―― 一方で、ピッチャー陣はどう見ていますか?
高木 前提として、DeNAは守備のミスが多い。阪神も同じですが、それに耐えられるだけのピッチャー陣がいます。DeNAもそれなりにいますが、昨年、一昨年に比べるとリリーフ陣がちょっとヘバっています。伊勢大夢、山粼康晃も本調子ではないですし。(エドウィン・)エスコバーが戻ってきたので、これからフル回転で活躍できるかどうかですね。
先発に関しては、今永昇太が思ったよりも勝ち星を拾えていません。直近の試合(6月13日の日本ハム戦)は勝ちましたが、投げ負けているというか、勝ちきれないんですよ。石田健大もそうですね。(ロバート・)ガゼルマンは試合を作りますが、安定しているのは東克樹ぐらいです。
ただ、(トレバー・)バウアーが(6月14日の)日本ハム戦で1失点完投勝利を挙げましたし、先発の一角として今後の働きに期待しています。全部ストライクで勝負しようとして苦しくなっているところがあるので、押し引きができるとよりいいな、とは思いますが。
――阪神のピッチャー陣は、抑えの湯浅京己投手が打ち込まれて2軍で再調整となりましたが、石井大智投手が戦列に復帰。質・量ともに充実している印象です。
高木 青柳晃洋がいない状態でリーグ首位ですからね。大竹耕太郎や村上頌樹といった、開幕当初は計算していなかったピッチャーが台頭してきて先発陣を引っ張っています。DeNAは、そういう"副産物"的な投手が出てこないんです。そういう意味では、阪神より苦しいかなと。
――DeNAが阪神を追っていくために必要なことは?
高木 戦術ですね。ここまでは、どのピッチャーが先発をしても同じ采配をしている。例えば、今永(防御率2.78)が投げる時は「1点ずつ積み上げて、3点取って勝ちきれ」などと言っておかないといけません。
今永と投げ合うピッチャーは、相手チームのエース級のピッチャーが多いので、なかなか点は取れない。そんなピッチャーに対して、無死一塁でバカバカ打たせているだけじゃ点は取れませんよ。
それなら送りバントでもいいから、まずは得点圏にランナーを送ったり、サードにランナーがいる時はスクイズなどでいいから手堅く追加点を取るとか。いくらチーム打率が高いからといって、単に打つだけでは勝てなくなる。だから、自チームと相手チームのピッチャーによって采配を変えていくべきだと思います。
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。