U-22日本代表「背番号10」鈴木唯人がフランスで学んだこと「イングランドの大きさ、速さ、強さには何とも思わなくなった」
6月14日にオーストリアで行なわれた親善試合で、U-22日本代表はU-22オランダ代表と0-0で引き分けた。
「90分でなんとか勝ちきりたかった。守備は非常にアグレッシブにやっていた。あとはもっと自信をもってボールを動かすところを前半から出せれば、もっともっと1試合の評価が高くなるんじゃないかと思う」
なんとも歯切れの悪い、大岩剛監督の言葉どおりの試合となった。
今季後半はストラスブールでプレーした鈴木唯人
U-22日本代表は「ボールを動かす」がひとつのテーマではある。だが、ビルドアップはなかなか形にならず、中盤からうしろでボールを回すことに終始。失点こそしなかったが、それはピンチにも直結した。
裏のボールでも、くさびでも、縦のパスが1本でも入れば状況が変わりそうに見えても、相手を恐れてか、それが出てこない。その分、大きなミスはなくても、やりたいことはできなかった。
2023年1月に清水エスパルスからフランスのストラスブールに期限付き移籍した鈴木唯人は、回数自体は少なくとも、仕掛けては奪われ、それでもまた仕掛ける"らしさ"を見せた。だが、得点にはつながらなかった。試合後は、落胆と苛立ちの混じったような表情を見せた。
「今日は全体としてあまりやりたいこともできず、よくなかったかなと思う。その原因は、自分がボールを失ったこともあるし、全体としてあまりよくなかったことも。(奪って攻め直してチャンスもあったが)そういう回数を多くして取られる回数も少なくすることが大事。試合勘のところだと思うけど、自分のなかでは満足してない。まあまあって感じですね」
前線でプレーする鈴木にとっては、いい形でボールを受けることが必要であり、そこまで運んでくれる仲間の存在がなにより重要だ。だがこの日は、そこまでのプロセスにも問題があったと見ている。
「単純にみんなが前を見ないので、下げることがセオリーになってしまっているし、下げることがいいプレーみたいな感じにもなっている。もっと前を見ることが必要ですし、前にプレーすることが絶対的に必要だと思う。
オランダはどんどん間にパスをつけてきますし、そういった違いがああいう苦しい展開を生んだと思う......。うーん、そういったところでもっと最初から自分たちのプレーをしないと、うまくはいかないと思う」
【オランダ戦で証明したかった】ただ、相手のレベルが上がれば「自分たちのプレー」はなかなかできなくなってくる。そんな現実を親善試合ながら味わった、ある意味で収穫のある90分間でもあった。
そもそも鈴木は、6月10日のU-22イングランド代表戦で真逆の感触を得ていた。
イングランドはオランダと同様、個人の能力の高い選手が揃うものの、リーグ戦が終了した直後ということもあり、どこか試合に入りきれていない状態だったと、複数の選手たちが話している。そんな相手だという前提ではあるが、鈴木も「感触は悪くはなかった」と振り返る。
「(ふだんフランスで戦っている)その感覚に慣れていたのがよかったのかなと、逆に思っていて......。もっと(イングランドは)すごいかなと思っていたんですけど、それもフランスでやっているからか、大きさとか速さとか強さには何とも思わなくなっていますし、それがいい方向になっているんじゃないかなと思います」
そんなイングランド戦を踏まえて、オランダ戦ではチームとしてのタスクをこなすことに加え、個人としてもテーマを設けていた。
「監督が求めることと、チームがやろうとしていることは、みんなもちろんやると。それはそれでひとつ置いておいて、個々が伸びるための感覚を掴むことであったり、ひとりひとりが個人の勝負でどれだけできるのか、トライすることが一番大事なんじゃないかなって思いますね。
日本とはやっぱり感覚が違いますし、組織力はある程度、ほかの国に比べたら出来上がっていると思うので、そういったところ(個人のレベル)をみんなが成長させる機会にすればいいんじゃないかなと思います」
組織力に自信があるからこそ、個人がどれだけ能力を発揮できるかにフォーカスしたい──。それこそが「チーム力向上に直結する」ということを証明したいオランダ戦ではあった。
しかしオランダ戦は、結果も、内容も、満足のいかないものになってしまった。
【9月のアジアカップ予選に期待】それでも試合終盤には、松村優太(鹿島アントラーズ)の決定機を2度演出した。
85分、GK鈴木彩艶(浦和レッズ)からのロングフィードを右サイドに落として松村につなげたが、シュートはGKに阻まれた。90分、鈴木の突破からの折り返しを村松がシュートするも、それはGKの正面となった。だが、惜しかったチャンスには関心を示さない。
「入っていないので何とも思いませんけど......いいんじゃないですか。別にまあ、練習試合というかアレ(親善試合)だったってところで。別にマツ(松村)も気にしないでいいと思いますし」
イングランドとオランダを相手に1勝1分。結果だけ見れば、上々の欧州遠征と捉えることもできる。だがそれは、この先の自分たち次第だという。
「はたから見たら満足されてもいいと思いますけど、自分たちが満足することは別に必要はない。自分たちが目指しているのは今じゃないので、これを次にうまくつなげていければ、この欧州2戦がよかったと言えると思います」
この日の悔しさ、不甲斐なさは、次につなげてこそ──。まずは9月のU23アジアカップ予選での爆発に期待したい。