「お金を持っている人は、実際にはどんな使い方をしているのだろう」と気になったことはありませんか?

「国税職員時代、富裕層に必ず『趣味』を聞いていました」と話すのは、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)の著者で、東京国税局の国税専門官・小林義崇さん。ここでは、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた小林義崇さんに、「富裕層の趣味の共通点」を教えてもらいました。

富裕層は「資産形成につながる趣味」をもつ

あるとき、相続税の申告書をチェックしていたとき、「家庭用財産」として1000万円近い金額が計上されていました。

家庭用財産とは、家具や家財などを指し、普通は数十万円くらいに収まります。そこで申告書の添付資料をチェックしたところ、その家庭用財産の多くは数点の高級時計であることがわかりました。

おそらく、亡くなった被相続人は時計集めが趣味だったのでしょう。高級ブランドの時計は信頼感アップにつながるだけでなく、中古品でも高値で換金できるので、投資の意味合いも兼ねられます。

ちなみに私も近ごろ、少額のものですがアート作品を買うようになりました。アーティストの支援になるうえに所有欲が満たされ、将来的に資産価値が出る可能性もゼロではないので、悪くないお金の使い方だと思っています。

●国税職員が富裕層に必ず「趣味」を聞くワケ

このように、故人の趣味がときに相続税申告に影響することがあります。そのため、私が相続税調査をするときは、必ず「お亡くなりになった被相続人の趣味は?」ということを聞いていました。このようなことを税務署員に聞かれると、やはり怪訝な顔をされる相続人が多かったです。「どうしてそんなことを聞くのですか?」「相続税と関係あるんでしょうか?」といった反応もしばしばありました。

前述のとおり、相続税と趣味は関連することが少なくありません。わかりやすいものとして、「投資が趣味」というケースが挙げられます。投資が趣味なのに、相続税の申告書に金融資産が記載されていなければ奇妙です。

そのような場合、申告を漏らした株式や投資信託などがあるかもしれませんから、あらためて証券会社などを調査することになります。

「趣味で、よく海外旅行していた」というケースも国税職員にとっては気になる情報です。これも前述のとおり、富裕層は積極的に海外投資をする傾向にあるので、海外に相続財産を隠しているかもしれません。このような推測をもとに、「海外に財産を残していないか」「国外への送金履歴を調べよう」というように調査方針を決めていきます。

●仕事がいちばんの趣味になる

相続税調査で趣味を聞くと、「仕事が趣味だった」ということがよくありました。「お父さんは仕事人間だったから、趣味なんてなかったですよ」といわれることも多く、私のなかでは、「富裕層≒無趣味」というイメージが強いです。

億単位の資産を残して亡くなったわけですから、やはり仕事熱心な人が多かったのでしょう。もちろん、なかには趣味があるケースもありましたが、読書や庭いじりなど、あまりお金のかからないことが多かったという印象です。

世界の超富裕層の趣味・関心事については、調査会社ウェルス−Xが以下のランキングを発表しています。この調査では3000万米ドル(42億円=1ドル140円換算)以上の資産をもつ超富裕層がターゲットとなっています。

【世界の超富裕層の趣味・関心事】

1位 ビジネス(56.9%) 2位 慈善活動、社会奉仕(38.6%) 3位 スポーツ(33.0%) 4位 金融(28.3%)
5位 教育(17.8%) 6位 アウトドア(17.3%)
7位 話術、演説(15.2%)

ランキングを見てみると、「ビジネス」が圧倒的1位です。2位以降に並ぶ項目も、富裕層のイメージと合っているのではないでしょうか。

私も感じることですが、仕事を楽しむことは、収入の増加につながります。そして、自分の仕事にお金を使うことが、より多くの収入をもたらすという好循環を生みます。

●自分の趣味を仕事の側面から考える

私が見てきた富裕層は質素な暮らしぶりではありますが、ビジネスに絡むことにはしっかりお金を使っています。

たとえば私が相続税調査をしたときに聞かれたのは「ゴルフが趣味だった」というものですが、限られたメンバーで社交を深める目的があったようです。かつてはゴルフ会員権そのものに資産的な価値がありましたが、それ以上に、ゴルフから得られるビジネスへの好影響を見込んで投資をしていたのです。

私自身はけっして仕事人間というタイプではないのですが、独立をすると、なんとなく富裕層が仕事熱心な理由がわかるようになってきました。たとえば、私は仕事と趣味を兼ねてYouTubeを始めたのですが、だんだんと視聴数が増え、いくらか収入を得られるようになると、当初よりも楽しくなってきました。

自分の創意工夫により、人に影響を与えたり、収入を増やせたりするわけですから、やはりおもしろいのです。また、読書や英語学習も趣味として続けていますが、ライターの仕事にかなり生かされていると感じます。

YouTuberが代表的ですが、今は仕事と趣味の境目が曖昧な時代です。自分の好きなことを発信して、大きな収入を得ている人が増えています。

テクノロジーの恩恵によって、これからますます趣味が仕事に活かされやすくなるでしょうから、あらためて自分の趣味を仕事の側面から考えるとおもしろいと思います。

こちらの記事でご紹介した以外にも、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)では、「家計」「資産運用」「生活」「家族」の4つの切り口で、富裕層の共通点をお伝えしています。