4月に7年ぶりとなる書籍『アラ還十和子』(講談社刊)を上梓された、美容家・実業家の君島十和子さん。テレビや雑誌はもちろん、YouTube配信など幅広いジャンルで活躍され、その飾らない等身大の姿が幅広い世代からの支持を獲得しています。

君島十和子さん「子どもは母のがんばりを感じてくれている」

今回は、56歳になった今も変わらない美しさと透明感で活躍する君島さんにインタビュー! 書籍にまつわることはもちろん、君島さん流の子育て論などお話をたっぷり伺いしました。

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●自分の経験から学んだことを伝えたかった

――まずは、今回出版された『アラ還十和子』についてお伺いしたいのですが、正直君島さんがアラ還だということに驚きました。こちらのタイトルに込められた想いを伺ってもよろしいでしょうか。

君島十和子さん(以下君島):タイトルに「アラ還」と入っていると、その世代向けの本だと思われるかもしれませんが、じつは、共働きで主婦の方や、子育てをしている方へのアドバイスになれればと思ったのが出発点でした。

私自身が30代で子どもを育てながら起業したときに「こういうことを言ってくれる人がいたらよかったな」とか、「こういうヒントがあったらこんなに遠回りはしなかったのにな」みたいなことがあったので、それを今、私からお伝えしたい! そういう想いを込めた本なんです。

●君島流・仕事と子育てのバランス

――仕事と子育ての両立に悩む女性は今も多いですが、そのバランスをどのように考えたらいいでしょうか?

君島:私自身は専業主婦の母に育てられたので、母と同じようにしないといけないと思い込んでいたんですね。でも実際働いていると、夕食の時間が遅くなったり、一緒にいる時間なのについつい仕事のことを考えてしまい十分に楽しむことができなかったり、私が家にいる時間も短かったりして、常に葛藤を抱えていました。

だから、働くママたちに葛藤を抱えるなとは言えないんですけれども、意外と子どもは、生まれたときからそういうお母さんの姿を見て育っているから、大人が思うほど迷惑には思っていないし、母がしてあげられないことに対して、それほど重くなにかを感じているわけではないのではと思うんです。

なかには子どもが小学生になったのを機に仕事を始めたという方も多いかと思いますが、あまり心配しなくても、むしろお子さんはその母のがんばりを肌で感じ取ってくれていると思いますよ。

――君島さんは実際にお子さんたちに気持ちを聞いたことはありますか?

君島:娘たちがある程度の年齢になったときに、「ママはこういうふうに育ったけど、あなたたちは違ったよね、それについてどう思う?」みたいに聞いたことがあって、「そこまで寂しさとか、なにか感じたことはない」と言ってくれましたね。

高校生くらいになって、部活などで忙しい日々を過ごしていたら、そんなにお母さんがあれこれしなくても、ご飯さえあれば…みたいな感じだったり、そんなに凝ったお料理を出さなくてもよかったりしますよね。

だから、そんなに罪悪感を背負わなくても、とにかくご飯だけはつくってあげれば、というくらいでいいと思うし、ご飯だって1から10まで手づくりしなくたっていいと思うんです。それによってストレスがたまりピリピリするぐらいだったら、買ってきたものをおいしく一緒に食べた方がずっといいと思います。

●夫は「ミスター原状復帰」!?

――確かに子どもに対して罪悪感を背負いすぎないということは大切ですよね。では、旦那さんの食事や洗濯などはどうされていましたか?

君島:夫は仕事をしている母に育てられた息子なので、ほかの方から見ると、本当に信じられないぐらい手がかからない人みたいです。脱いだものは必ず洗濯機のところに分別されておいてありますし、日々自分が着ていくものは全部自分で揃えてくれて、自分が必要と思うものには自分で黙ってアイロンをかけてくれます。

うちでは「ミスター現状復帰」って呼んでいるんですけれど(笑)。たとえば、私がお休みの日に、いつも通りの時間に目が覚めて冷蔵庫に行って飲み物を飲んで、もう一回寝ようかなと戻ると、もうピシッとベッドセットができあがっちゃってるんです! その間、10分か15分ですよ。座るのもはばかられるぐらいになっちゃってまして(笑)。まあ、それはもともとの性格だとは思いますけどね。

――そこまで旦那さんがきっちりされていると、逆にプレッシャーを感じることはないのでしょうか?

君島:ないですね。夫は、私に同じようにしてほしいと言う人ではなく、やれる人がやればいい、みたいなスタンスを持っていてくれています。私たち夫婦は同じ会社で働いていますから、一緒に朝仕事に出て、同じ時間仕事して、一緒に帰ってくるので、帰ってきたら分担できる人ができることをしています。

ただ、コロナ前まではキッチンに入ることだけはしなくて、一緒に出かけて、一緒に帰ってくるのに「ご飯どうするの?」って毎日聞かれることには、若干ピリッとすることはありましたね。それが、コロナ禍のステイホーム中に、YouTubeを見て料理をすることを覚えてくれたんです。

以前はカップラーメンさえもつくれないくらいだったのに、最近は料理もしてくれるようになって、そこは喜ばしいことだと思ってウェルカムです。それと同時に、子どもたちも成長して、なにか材料さえあればつくってくれることもありますよ。

●子ども成長にはうれしい反面寂しさも…

――夫の変化や、お子さんの成長を目の当たりするのはありがたいですね。しかし、お子さんが大人になってしまって、寂しいと思うことはありませんか?

君島:うちは長女が16歳のときに宝塚音楽学校に入学し、本籍地を兵庫県に移したので、一度「巣立ち」を経験しました。その当時は、望んでそういう状態になったのに、やっぱりあとから、どっと寂しさが湧いてきた…というのはありましたね。

手がかかる人が1人いなくなったのでラクにはなるんですけどね。ただ、ご飯をなんとなく流れで4人分つくってしまって1人前余っているとか、そういうことが寂しさに変わってしまったりはしました。お仕事をしていないお母さんだったりすると、その思いにずっと引っ張られてしまうような方がたくさんいらっしゃるのもわかります。

――君島さんの場合は仕事のおかげで気が紛れていたのかな、とも思うのですが、いかがでしょうか?

君島:今振り返ってみると、そうでもなかったみたいで…じつは、娘が欲しいって言ったわけでもないんですけれど、自分の気持ちが収まらなかったのか、毎週ぬいぐるみを送っていたんです。でも、寮の引っ越しがあったタイミングで、ダンボールに5箱ぐらいのぬいぐるみが送り返されてきまして(笑)。

当時、私自身はそんなに送っていたっていう自覚はないんです! でも振り返ってみると、そこで自分の精神を保っていたんだと思う。愛情というか、つながりみたいなものを送っているような、安心感とか、なにか買わなきゃいけないって思ってたのかな?

娘からは1回も「ぬいぐるみを送って」なんて言われたことないのに。きっと寂しいだろう、きっとこれを見て喜ぶだろう、っていう風に思って、一緒にいられない距離を埋めていたんですよね。でも、送り返されてきたときには、自分でもゾッとしました(笑)。

――君島さんでも、子どもの巣立ちにはパニックになってしまうんですね。意外ですが、身近に感じます。

君島:ある有名インスタグラマーの方が本を買ってくださったのですが、「もう子育てとお仕事の両立のところで泣いてます」ってDMをくださいました。「え、あなたが?」っていうくらい、仕事と家庭を両立してキラキラな生活をしてるように見える方でも、そういうところはじつは一緒なんだな、って感じました。

それとは逆に、専業主婦のお母さんは専業主婦のお母さんで、やっぱり社会とつながっていないとか、なんとなくどこか犠牲になっているような思いを抱えているのだろうと感じますし、それぞれ悩みながら生活していますよね。

この本でも、私のきれいごとばっかりを並べて、それをお伝えしたいのではなくて、自分の失敗とか痛い思いや、こうやって切り抜けたよとか、こうするとまだラクだったよ、ということをお伝えしたいんです。だから各世代で、似たようなことに直面していらっしゃる方に読んでいただけたら、と思っています。

6月12日公開予定の、記事中編では君島十和子さんの美容についてたっぷりお話を伺いました。いつまでも変わらない美しさの“君島メソッド”は必見です!