激震続くスマホ業界、ソニーとファーウェイ、キーマンに訊く事業の今とこれから
スマートフォン(スマホ)市場で激震が続いている。バルミューダの撤退を前座とすれば、京セラ撤退が二ツ目、FCNTの経営破綻が真打と3段構えの大激変だ。円安と原材料の高騰、その他カテゴリーでのインフレの影響が大きい。現在スマホ事業を営む各社は、この難局を乗り越えることができるのか。5月の販売台数シェアで5位だったソニーと、米中半導体摩擦で日本市場から一旦消えたファーウェイのキーマンに、スマホ事業の現在とこれからについて訊いた。
iPhoneが圧倒的に強い日本のスマホ市場。この3年間のシェア推移を見ると、アップルは最高で22年3月に74.2%。最低でも4割を切ったことはない。上のほうでアップルが一人旅を続けている。時折シャープやグーグルが2桁シェアを確保するが、それでも2割には届かない。アップル以外の各社は下のほうで苦しみながらうごめいている状況だ。
5月のシェアは、1位アップルに続いて、2位グーグル、3位シャープ、4位サムソン。ソニーは5位だった。しかも経営破綻した6位のFCNTとは、わずかに0.3ポイント差。先日開かれたXperiaの体験会で記者から単刀直入に「ソニーは大丈夫なのか?」との質問が飛んだが、無理もない話だ。ソニー モバイルコミュニケーションズ事業部の濱口努 事業部長は「市場規模としては、円安や材料費の高騰で厳しいことは確か。しかしソニーは全体としてクリエーターエコノミーをターゲットにしている。彼らをうならせる商品をしっかりと作り、高付加価値モデルで収益率の高いビジネス構造を作り上げたい」と話す。
先ごろ発表したフラグシップモデル「Xperia 1 V」は、専用に開発した新センサーを搭載。同社は「フルサイズセンサーを搭載したデジカメ並みの撮影に迫る実力」としている。1/1.35インチの2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーで、低照度性能が前モデル比で2倍に向上したという。体験会では、夏のキャンプをイメージした暗いテントの中にいるモデルを撮影するデモを行うなど、暗所撮影での強さをアピールしていた。映画撮影用のプロ向けカメラ「VENICE」に搭載した技術を使った色調エンジン「S-Cinetone for mobile」も搭載。4K・120P撮影も可能で、高画質なスローモーション撮影にも対応した。
濱口 事業部長は「Xperiaは、お客様が初めて触れるソニー商品になる可能性が高い。若年層の方に使っていただき、クリエイター育成の役割も果たしていきたい」と語る。その上で、「さらにスマホの上位モデルや、カメラなど他のカテゴリーの商品やサービスの利用につなげることを目指したい。昔でいう『マイ・ファースト・ソニー』は、今ではXperiaだ」と話した。2018年度に971憶円の巨額な営業損失を計上したスマホ事業だが、選択と集中はクリエーターに向けられている。しかし、問題は価格だ。Xperia 1 Vのソニーストア価格は税込み19万4700円。若年層のクリエーター予備軍こそ、高機能のスマホを存分に使いこなして欲しいと考えるソニー。しかし、10代の若者が20万円もするスマホをおいそれと買うのは難しいだろう。
一方、かつては日本市場のSIMフリースマホでシェアNo.1だったファーウェイ。前年の年間販売台数のトップメーカーを表彰するBCN AWARDも、2018年〜2020年まで3年連続で受賞したほどだ。しかし、続く米中半導体摩擦の影響でスマホのシェアはほぼゼロに。日本市場から消えてしまった。現在は、スマートウォッチやワイヤレスイヤホン、PCなどで日本での事業を細々と継続している。最近では、ウェアラブル端末を軸に、ヘルスケア分野での日本企業とのコラボを進めている。建築、介護・看護、安全運転、健康経営の分野だ。すでにいくつかの案件が進行中だという。
しかし、同社が最も得意とする通信分野は身動きが取れない状態だ。ファーウェイジャパン ファーウェイデバイス日本・韓国リージョンの楊涛 プレジデントは「5Gビジネスは、日本でこそ止まっているものの、世界では進行中。依然として5Gのトップベンダーだ。あきらめてはいない」と話す。とはいえ、スマホの苦境は紛れもない事実。楊プレジデントも「客観的事実として受け止めるしかない。アメリカから手かせ足かせをかけられているのは大変残念だ。今は、いかに生き残り、成長を続けるか。そのためには、研究開発を強化し、良い製品を生み出すこと。唯一無二の価値をユーザーに感じていただくことがとても重要だ。ユーザーに認められれば、生き残る道は必ずあると思う」と話す。
今回日本で発表した新製品は、水深100mのダイビングでも活用できるスマートウォッチ「HUAWEI WATCH Ultimate」やウェアラブル血圧計の「HUAWEI WATCH D」、完全ワイヤレスイヤホンを腕時計に格納できる「HUAWEI WATCH Buds」など、ユニークな製品が目白押し。特に驚いたのは、完全ワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds 5」だ。まるで液体金属のようなデザインは、他に類を見ないユニークさ。技術力もさることながら、こうしたデザイン力も衰えていない。
海外で発売した折り畳みスマホのHUAWEI Mate X3について「折り畳みスマホでは世界で一番薄く、折りたたんだ状態でも11.08mmしかない。ガラスが強く落としても割れない。衛星通信にも対応し、4万km離れた衛星と通信ができるアンテナも内蔵している。これは他社にはできないのではないか」。楊プレジデントは胸を張る。日本でのスマホ事業の「再起動」については「しかるべき時が来るまで、時期が熟すのを辛抱強く待っている」と楊プレジデント。研究開発投資も年々拡大。「2022年は、3兆1600億円を費やした」と話す。こうした巨額な研究開発投資も同社のユニークな製品を支えている。
アップルとの正面切っての対決を避け、クリエーターにターゲットを絞り込んで選択と集中を進めるソニー。巨額な研究開発投資を通じて製品開発を続け虎視眈々と復活を狙うファーウェイ。それぞれがそれぞれのやり方で生き残りに必死だ。(BCN・道越一郎)
iPhoneが圧倒的に強い日本のスマホ市場。この3年間のシェア推移を見ると、アップルは最高で22年3月に74.2%。最低でも4割を切ったことはない。上のほうでアップルが一人旅を続けている。時折シャープやグーグルが2桁シェアを確保するが、それでも2割には届かない。アップル以外の各社は下のほうで苦しみながらうごめいている状況だ。
先ごろ発表したフラグシップモデル「Xperia 1 V」は、専用に開発した新センサーを搭載。同社は「フルサイズセンサーを搭載したデジカメ並みの撮影に迫る実力」としている。1/1.35インチの2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーで、低照度性能が前モデル比で2倍に向上したという。体験会では、夏のキャンプをイメージした暗いテントの中にいるモデルを撮影するデモを行うなど、暗所撮影での強さをアピールしていた。映画撮影用のプロ向けカメラ「VENICE」に搭載した技術を使った色調エンジン「S-Cinetone for mobile」も搭載。4K・120P撮影も可能で、高画質なスローモーション撮影にも対応した。
濱口 事業部長は「Xperiaは、お客様が初めて触れるソニー商品になる可能性が高い。若年層の方に使っていただき、クリエイター育成の役割も果たしていきたい」と語る。その上で、「さらにスマホの上位モデルや、カメラなど他のカテゴリーの商品やサービスの利用につなげることを目指したい。昔でいう『マイ・ファースト・ソニー』は、今ではXperiaだ」と話した。2018年度に971憶円の巨額な営業損失を計上したスマホ事業だが、選択と集中はクリエーターに向けられている。しかし、問題は価格だ。Xperia 1 Vのソニーストア価格は税込み19万4700円。若年層のクリエーター予備軍こそ、高機能のスマホを存分に使いこなして欲しいと考えるソニー。しかし、10代の若者が20万円もするスマホをおいそれと買うのは難しいだろう。
一方、かつては日本市場のSIMフリースマホでシェアNo.1だったファーウェイ。前年の年間販売台数のトップメーカーを表彰するBCN AWARDも、2018年〜2020年まで3年連続で受賞したほどだ。しかし、続く米中半導体摩擦の影響でスマホのシェアはほぼゼロに。日本市場から消えてしまった。現在は、スマートウォッチやワイヤレスイヤホン、PCなどで日本での事業を細々と継続している。最近では、ウェアラブル端末を軸に、ヘルスケア分野での日本企業とのコラボを進めている。建築、介護・看護、安全運転、健康経営の分野だ。すでにいくつかの案件が進行中だという。
しかし、同社が最も得意とする通信分野は身動きが取れない状態だ。ファーウェイジャパン ファーウェイデバイス日本・韓国リージョンの楊涛 プレジデントは「5Gビジネスは、日本でこそ止まっているものの、世界では進行中。依然として5Gのトップベンダーだ。あきらめてはいない」と話す。とはいえ、スマホの苦境は紛れもない事実。楊プレジデントも「客観的事実として受け止めるしかない。アメリカから手かせ足かせをかけられているのは大変残念だ。今は、いかに生き残り、成長を続けるか。そのためには、研究開発を強化し、良い製品を生み出すこと。唯一無二の価値をユーザーに感じていただくことがとても重要だ。ユーザーに認められれば、生き残る道は必ずあると思う」と話す。
今回日本で発表した新製品は、水深100mのダイビングでも活用できるスマートウォッチ「HUAWEI WATCH Ultimate」やウェアラブル血圧計の「HUAWEI WATCH D」、完全ワイヤレスイヤホンを腕時計に格納できる「HUAWEI WATCH Buds」など、ユニークな製品が目白押し。特に驚いたのは、完全ワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds 5」だ。まるで液体金属のようなデザインは、他に類を見ないユニークさ。技術力もさることながら、こうしたデザイン力も衰えていない。
海外で発売した折り畳みスマホのHUAWEI Mate X3について「折り畳みスマホでは世界で一番薄く、折りたたんだ状態でも11.08mmしかない。ガラスが強く落としても割れない。衛星通信にも対応し、4万km離れた衛星と通信ができるアンテナも内蔵している。これは他社にはできないのではないか」。楊プレジデントは胸を張る。日本でのスマホ事業の「再起動」については「しかるべき時が来るまで、時期が熟すのを辛抱強く待っている」と楊プレジデント。研究開発投資も年々拡大。「2022年は、3兆1600億円を費やした」と話す。こうした巨額な研究開発投資も同社のユニークな製品を支えている。
アップルとの正面切っての対決を避け、クリエーターにターゲットを絞り込んで選択と集中を進めるソニー。巨額な研究開発投資を通じて製品開発を続け虎視眈々と復活を狙うファーウェイ。それぞれがそれぞれのやり方で生き残りに必死だ。(BCN・道越一郎)