男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「連絡も来るし、デートもする。けれども半年間、男が一度も手すら出してこない理由は…?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:LINEも来るし、デートもする男。なのに彼が一度も誘ってこない理由は…?




優里亜から、一通のLINEが入っている。既読をつけるかどうか悩んだけれど、結局僕はスマホをそのまま机の上に置く。

35歳、独身。

会社の経営も順調で、住みたい家にも住めて欲しい車も買えるようになった。

女性関係も同じようなことが言える。30歳を過ぎた途端、いや、お金を持った途端に女性も寄ってくるようになった。

決して遊びたいわけではない。優里亜のことも、蔑ろにしているわけではない。

結局、僕は翌日、優里亜からのLINEに『ごめん仕事がバタついてた』とだけ、連絡をした。

もっとフォローすべきなのかもしれないけれど、これ以上は距離を縮められない理由があった。


A1:結婚願望が強い子だなと認識した。


優里亜と出会ったのは、知人が開催した食事会だった。

普段会社名はあまり言わないけれど、優里亜の顔がタイプだったせいか、珍しく会社名を口にしてしまった。すると、優里亜は目を丸くして驚いている。

「え…!正樹さんって、あの会社の社長さんなんですか?」

その反応がピュアで可愛かったので、僕はすぐに連絡先を聞くことにした。

「一応ね…。って、別にそんなことはどうでもいいんだけどさ。優里亜ちゃん、LINE教えてよ」

こうして連絡先を交換し、すぐに初デートに誘ってみる。いくらモテるようになったからといって、可愛い子には「いいところを見せたい」という感覚は変わらないため、店は『NUAGE ET VENT』にした。




「素敵…!初めて来ました♡」
「良かった。最近、経営者仲間に連れてきてもらったんだけど、それ以来気に入っててさ」

いいお店に連れて行きたくなるような優里亜。今日も可愛くて、シャンパンで乾杯をしてすぐに僕たちは良い雰囲気になっていた。

「優里亜ちゃんって可愛いね」
「全然ですよ。正樹さんなんて、私より可愛い子たくさん知っていそうなのに…」
「そんなことないよ。僕、意外に遊ばないから」
「そうなんですか?」
「仕事が意外に忙しくて…。気がつけば、35歳で独身だし」

華々しい料理とそのプレゼンを楽しんでいた僕たち。でも次の言葉で、僕は思わず動きが止まってしまった。




「じゃあこれから、ですね。ちなみに正樹さんって、結婚願望はあるんですか?」
「僕?そうだね、あるかな」

― あれ。このパターンってもしかして…。

さっきまで浮かれていた気持ちとは裏腹に、少しだけ嫌な予感がする。

「私、次に付き合う人とは絶対に結婚するって決めているんです」

― こっちパターンか…。

「そうなんだ。なんで?まだ若いのに」
「もう29歳ですよ?30歳になるまでに絶対結婚したくて。正樹さんの周りって、結婚されている人多いですか?」

結婚の話になった途端に、急に前のめりになってきた優里亜。僕はこの会話だけで、じゅうぶん優里亜が結婚願望が強いことがわかった。

「どうだろう…半々くらいかな。でも意外にみんな若いうちに結婚するか、仕事で成功してからの2パターンが多いかも」
「経営者の方って、そうなんですね」
「まぁ離婚で揉めたり、いろいろあるみたいだけど」
「お金があると大変ですよね…」

周りは結婚している友人も多いけれど、特にお金を持った経営者は2パターンに分かれる。

自分のブランディング的にプラスになるような美女や有名人などの、トロフィーワイフをもらう人。もしくは、全く表に出たがらない女性と結婚する人…。

とりあえずこれ以外は楽しく会話が終わったので、店を出た後に優里亜からの質問に、僕は笑顔で答えた。

「正樹さん、また会えますか?」
「もちろん。連絡するよ」

こうして僕たちは、なんとなく定期的に食事に行く仲になった。


A2:「付き合ったら結婚」という圧が重すぎる


初デートから、何度か会うようになった僕たち。連絡も取り合っているし、優里亜から連絡が来たら既読スルーなんてせずにちゃんと返している。

ただ最初に「結婚願望が強い」と聞いてしまっていたので、僕の中で一つだけ決めていたことがあった。

そんな矢先。目黒で友達と飲んでいた時に、ふと優里亜を思い出した。

― そう言えば、優里亜って家が目黒だった気が…。呼べば来るかな。

そう思ったので、僕は何気なく優里亜を誘ってみる。

― Masaki:優里亜ちゃん、お疲れ!今目黒で飲んでいるんだけど、来れたりしないよね?友達といて、良ければ紹介したくて。

時刻は21時。当日連絡だし厳しいかな?とも思ったけれど、意外にも優里亜はフットワークが軽く、すぐに『ANOTHER8』に来てくれた。




「優里亜ちゃん、こっちこっち。突然呼び出してごめんね」
「いえいえ、ちょうど家にいたので良かったです」

綺麗で可愛いくて、性格も良い優里亜。誰に会わせても恥ずかしくない。だから友人との会にも全然呼べる。

「こちら、友達の雄也。こちらが優里亜ちゃん」

お互いを軽く紹介したのには、優里亜が友人と何か仕事で繋がるかなと思ったからでもあった。

「雄也が、今度新しくゴルフ系のアパレルを始めるらしくてさ。優里亜ちゃん、ゴルフするよね?優里亜ちゃんはフォロワーも多いし、何か繋がるかなと思って」
「私でお役に立てるのかどうかわからないですけど…」

とはいえ、お酒の席でこんな時間から仕事の話をずっとするわけでもない。僕たちはビールを飲みながら談笑していた。




「雄也、優里亜ちゃん可愛いでしょ?元々芸能活動もしてたらしい」
「へ〜。すごい」
「そんな。昔の話ですけど」
「今は何をしているんですか?」
「普段は美容クリニックの受付をしています」

そんな会話をしているうちに少し酔いが回ってきたのもあり、僕は優里亜の隣に座りなおした。

「優里亜ちゃん、飲んでる?」

すると優里亜もわかりやすく嬉しそうにしている。

決して優里亜のことを嫌いなわけではない。どちらかと言うと好きだ。だからデートもするし連絡もとる。

ただ付き合おうとは思わない。

なぜなら、彼女と付き合うと結婚が常に付き纏うから。それは今の僕には重すぎる。

そもそも結婚願望なんて今のところないし、「付き合ったら即結婚」という怖い世界に自ら飛び込みたくはない。

だから最初から「結婚前提で」と言われると、軽い気持ちで手も出せなくなる。

ただ誰もいないのは寂しいので、たまに時間がある時などは連絡もするし、食事にも行く。けれどもこの先僕の気持ちが相当変わらない限り、優里亜と付き合うことはないと思う。

― もう少し男性を自由に泳がせてくれそうな女性のほうが、意外に結婚が近い気がするけどな…。

そう思いながら、僕は隣に座る優里亜をじっと見つめていた。

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夫が女として見てくれなくなった理由