さまざまな給付金の支給対象として取り上げられる「住民税非課税世帯」。文字通り「住民税を払わなくてもいい世帯」を指す言葉だと理解はしていても、その具体的な基準や要件についてはよくわからないという人が多いのではないでしょうか。
今回は住民税非課税世帯として認定されるための要件や、住民税非課税世帯が受けられる優遇制度など、住民税非課税世帯のメリットについて解説します。

住民税非課税世帯とは?

住民税非課税世帯とは、「世帯全員に市区町村民税および都道府県民税(または都民税)が課税されない世帯」のことをいいます。また、個人市民税や個人県民税はともに「所得割」と「均等割」で構成されていますが、住民税非課税世帯とはその両方が非課税になる世帯を指します。

住民税とは?
住民税とは、住んでいる自治体に対して納める税金で、自治体が行政サービスを行うために必要な経費を、住民に所得に応じて負担してもらうものです。住民税の種類には以下のものがあります。

・均等割:所得にかかわらず一定金額が徴収される
・所得割:前年の所得に応じた金額(10%)が課税される
・利子割:預貯金の利子などに課税される
・配当割:上場株式などの配当や割引債の償還差益などに課税される
・株式等譲渡所得割:株式などを売却した際の譲渡益に対して課税される(ただし源泉徴収を選択した口座に限る)

住民税の徴収の仕組みは自治体によって異なります。東京都を例にとると、均等割および所得割については、その年の1月1日に東京都内に住所がある人に対して課税し、各区市町村が区市町村民税とあわせて都民税を徴収する仕組みです。
ただし、利子割や配当割、株式等譲渡所得割については都民税だけが課税されます。

世帯とは?
世帯とは、住居および生計を共にする人の集まりをいい、2人以上の世帯や単身世帯などに分類されます。そして、その世帯を構成する人を世帯員といいますが、単身赴任者や別居中の人などは世帯員には含まれません。具体的な世帯構造は以下の四つに分けられています。
・単身世帯:世帯員が1人だけの世帯
・核家族世帯:夫婦のみや夫婦と未婚の子のみ、ひとり親と未婚の子のみの世帯
・三世代世帯:世帯主を中心に直系三世代以上で構成される世帯
・その他の世帯:上の世帯以外

所得割とは?
住民税の所得割とは、前年の所得金額に応じて課税されるもので、以下の式によって算出されます。

(前年の収入金額-所得控除額)×税率-税額控除額

給与所得者であれば、まず前年の給与収入額から給与所得控除額を差し引いて給与所得金額を算出します。そして税率を乗じて求めた金額から税額控除の額を差し引いたものが所得割です。

所得割の税率は10%と決まっており、所得金額に関係なく10%を乗じて求めます。その後、必要に応じて外国税額控除や寄付金控除の税額控除、住宅ローン控除の税額控除(所得税から引き切れなかった額があるとき)を差し引き、最終的な所得割額が決まります。

ちなみに10%の税率の内訳は、市区町村民税が6%、都道府県民税(または都民税)が4%です。

均等割とは?
住民税の均等割は、所得に関係なく一律の金額が課税されます。現在適用されている均等割額は、市区町村民税が約3,500円、都道府県民税(または都民税)が約1,500円ですが、自治体によってはこの額とは異なる金額が課税されているケースもあります。

たとえば、兵庫県芦屋市では、市民税の均等割額は3,500円ですが、県民税の均等割額は2,300円と東京都よりも800円高くなっています。この800円は「県民緑税」として、森林整備や都市の緑化のために利用されています。

住民税非課税世帯として認められるためには、所得割とこの均等割両方が非課税になる必要があります。

住民税非課税世帯の要件とは?

では、住民税非課税世帯の要件とはどのようなものなのでしょうか。
住民税非課税世帯に当てはまるためには、以下のいずれかに該当する必要があります。

前年の合計所得が一定金額以下
住民税非課税世帯の要件は、まず、前年の合計所得金額が一定金額以下であることです。要件となる金額のラインは自治体によって異なりますが、東京都23区の場合だと以下のようになっています。

・単身者の場合:45万円以下(給与所得者なら、給与収入が100万円以下)
・扶養親族がいる場合:35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の合計人数)+31万円以下

ちなみに、前年の合計所得金額が以下の条件に当てはまり、扶養家族がいる場合は、所得割のみが非課税となり、均等割は課税されます。
・扶養親族がいる場合:35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の合計人数)+42万円以下

この場合は均等割が非課税にならないため、住民税非課税世帯には該当しません。
住民税非課税世帯とは、あくまでも所得割そして均等割の両方が非課税になる世帯を指します。

生活保護を受けている
生活保護法により、生活扶助を受けている場合は、所得割と均等割両方が非課税になるため、住民税非課税世帯に該当します。

障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で前年の合計所得が一定金額以下
障害者や未成年者、寡婦またはひとり親の場合、前年の合計所得金額が135万円以下であれば、所得割そして均等割ともに非課税になります。
給与所得者であれば、給与収入が204万4千円未満の人が該当します。

住民税非課税世帯が受けられる主な優遇措置とは?

住民税非課税世帯に該当すると、さまざまな優遇措置の対象になります。どのような優遇措置あるのかについて、解説します。

国民健康保険料・介護保険料が安くなる
国民健康保険料や介護保険料は、その人の所得金額に応じて決まります。そのため、住民税非課税世帯に該当したとしても、国民健康保険料や介護保険料の支払いは発生します。
ただし、国民健康保険料や介護保険料の金額を算出する際に、一定の所得金額以下の場合には、その所得に応じた減額を受けられます。

具体的には、所得割そして均等割から算出される「応益分」について減額が適用され、世帯の所得が一定金額以下の場合は、7割、5割、2割の軽減措置が受けられます。

住民税非課税世帯に該当する場合は、7割減額に該当するケースが多くみられますが、一部5割減額になるケースもあります。
国民健康保険料と同時に介護保険料も25%~70%程度減免になる場合が多いですが、要件は自治体によって異なり、所得だけではなく預貯金などの制限が設けられているところもありますので、自分が住んでいる自治体のホームページを確認するようにしましょう。

国民年金保険料の支払いを全額免除できる
住民税非課税世帯に該当する場合、国民年金保険料の支払いを全額免除できます。ただし、全額免除の適用を受けるためには申請をしなければなりません。

国民年金保険料の支払いを全額免除された期間については、受給資格期間に算入されますが、受給額には反映されません。全額免除された期間分は、将来受け取る年金額が保険料を納めた場合の半分になってしまう点に注意が必要です。

また全額免除とは申請し、認められた場合に適用されるもので未納とは異なります。未納とは単に国民年金保険料を支払っていないことで、未納期間は受給資格期間そして受給額どちらにも反映されません。そのため、将来受け取れる年金額が少なくなるばかりでなく、受給資格期間に満たない場合は年金を受け取れない可能性があります。

医療費の自己負担額が少なくなる
住民税非課税世帯に該当する場合、高額療養費制度を利用する場合の自己負担額の上限も少なくなります。

69歳以下の住民税非課税世帯の場合、高額療養費制度の自己負担の上限額は3万5,400円です。それより一つ上の収入区分である年収370万円未満の人の5万7,600円に比べると、2万円以上少なくなります。
さらに、一般的な収入区分であるといわれる年収約370万~約770万円の人の上限額は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」で計算されるので、最低でも約4万5,000円の差があります。

教育費の減免を受けられる
住民税非課税世帯の場合、高等教育の就学支援新制度によって、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校など授業料の減免や給付型の奨学金、入学金のサポートを受けられます。

さらに高等学校でも、公立高等学校の授業料が無償になるほか、「私立高校授業料実質無償化」制度を受けられます。

また、現在では幼児教育・保育の無償化制度によって、3歳から5歳の幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が無償化されていますが、住民税非課税世帯の場合、0歳~2歳の子どもが利用する場合も無料となります。

幼稚園入園から大学進学の際まで、義務教育以外の場面で就学を支援する動きが高まっているなか、さらに住民税非課税世帯には補助の内容が手厚くなっています。

まとめ

住民税非課税世帯とは、個人住民税の所得割と均等割の両方が非課税となる世帯のことを指します。
住民税非課税世帯に該当する目安は、単身者(給与所得者)で年収100万円以下です。さらに扶養親族がいる場合や「障害者」「未成年者」「寡婦またはひとり親」に該当する場合の基準金額は単身者の場合よりも高くなります。

住民税非課税世帯世帯にはさまざまな優遇措置が用意されていますが、申請しなくても自動的に適用されるものもあれば、申請しなれば適用されないものもあります。メリットを最大限に享受するためにも、住民税非課税世帯の要件を理解し、申請が必要なものについては忘れずに申請するようにしましょう。