Amazonのドローン配達サービス「Amazon Prime Air」が2023年に1万件の配達を目指していたものの実際にはわずか100件の配達にとどまっていることが報告される
Amazonが2013年に発表した配送サービスの「Amazon Prime Air」は、無人飛行機(ドローン)が注文から30分以内に商品を配達するというサービスです。Amazonは2023年1月に「Amazon Prime Air」による2023年末までの配達目標を1万件と設定していることが報じられていましたが、2023年5月の時点でAmazon Prime Airによる配達件数はわずか100件にとどまっていることが明らかになりました。
https://www.cnbc.com/2023/05/18/amazons-100-drone-deliveries-puts-prime-air-behind-google-and-walmart.html
Amazon Prime Air has only made 100 drone deliveries so far - The Verge
https://www.theverge.com/2023/5/18/23728528/amazon-prime-air-drone-delivery-jeff-bezos
2013年に発表されたAmazon Prime Airは、ドローンの開発やテストなどを経て2020年8月にアメリカ連邦航空局(FAA)による認可を受けました。
しかし、Amazon Prime Airは配送の遅延やドローンの墜落事故といった安全性の課題に直面し、2021年には200人を超える従業員が離職していたことが報じられていました。
Amazonの「ドローン配達」プロジェクトが遅延や墜落事故といった課題に直面、大量の従業員が離職する事態も - GIGAZINE
その後、Amazon Prime Airは2022年6月にカリフォルニア州ロックフォードにおいてようやくサービスを開始することを発表しましたが、「地元産業の衰退を招く」「家畜に被害を与える可能性がある」といった意見が一部の地元住民から上がり、Amazon Prime Airが地域に歓迎されていないことが報じられていました。
Amazon初のドローン配達はあまり歓迎されていない - GIGAZINE
Amazon Prime Airのサービスを開始したAmazonは、2023年1月に「2023年末までにドローンを用いて1万回の配達を行う」ことを目標としていることを明らかにしました。しかし配達件数増加のペースは上がらず、2023年5月時点で配達サービスを展開するカリフォルニアとテキサスにおいてドローンによる配達件数がわずか100件にとどまったことが報告されています。
配達件数が増加しない理由として、ニュースメディアのThe Vergeは、FAAによる規制を挙げています。FAAはアメリカにおける空域を厳重に管理しており、ドローンに関しては、「人口密集地帯での飛行」「道路を横切っての飛行」「人の近くでの飛行」を禁止しています。そのため、配達拠点からドローンを展開できる範囲が非常に狭くなってしまうことが指摘されています。AmazonはFAAによる規制基準を満たす騒音が小さく、雨風に強いドローンの開発を行うとともに、FAAに対して規制の緩和を求めていますが、規制緩和には至っていません。
過去には、テスト中に墜落したAmazonのドローンがオレゴン州において25エーカー(約10万平方メートル)にわたる森林火災を引き起こしたことが2021年に報告されており、FAAによる規制の緩和に向けて、Amazonはドローンの安全性を証明する必要があるとされています。なおAmazonはニュースメディアのCNBCに対して「オレゴン州で起きた火災は同社の技術的限界を確認するための実験場で発生した事故です。実際の顧客への配達飛行中の事故や事件はこれまでに一度もありません」と述べています。
Amazonの広報担当者であるアヴ・ザミット氏は「Amazon Prime Airはカリフォルニア州とテキサス州の一部でFAAの認可を受けていますが、サービス対応エリアを拡大するためのプロセスに予想よりも時間がかかっています。そのため、Amazonは2023年1月に立てた目標を修正しています」と報告しています。
Amazon Prime Airのドローンおよびプログラム管理を担当するカルシー・ヘンドリクソン氏は「私たちは地域住民や顧客からの声に耳を傾け、可能な限り最も効率的なドローンとサービスを設計しています」と述べています。