明日の株式相場に向けて=海外マネー怒涛の上陸続く

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 きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比4円高の2万9126円と小反発。朝方は気迷いムードで、寄り後に日経平均は下値を試す展開となったが、後場に入ると底堅さを発揮、方向感が見えにくい展開ではあったが押し目買い需要の強さは確認できた。結局、日経平均は前日終値近辺でもみ合った後わずかながらプラス圏で着地した。そうしたなか、きょう発表された投資部門別売買動向では、5月1~2日の2日間で外国人は日本株を現物で1600億円強買い越し、先物では3000億円強買い越した。4月に記録的な買い攻勢をかけた後だけに、大型連休の狭間でしかもFOMC結果待ちのタイミングで、持ち高調整の売りが出て全く不思議のないところであった。ここでの現先合わせ4600億円強の買い越しは結構なインパクトがあるが、これが本当に「怒涛の日本買い」のワンピース(断片)であるのかどうか、その確認にはもうしばらく時間を要する。

 注目された4月の米消費者物価指数(CPI)の結果はコア指数が前年同月比5.5%の上昇で事前コンセンサスと一致し、3月の5.6%から鈍化傾向にあることが確認された。市場関係者によると「直近では6月のFOMCで政策金利据え置きの確率(利上げ停止を見込む割合)が96%に達した。だが、マーケットの視線は既にそこではなく、7月もしくは9月のFOMCでの利下げを折り込んでいる状況」(生保系アナリスト)という。

 ちなみに次回のFOMCは6月13~14日の日程で行われる予定にあるが、会合初日の13日には5月の米CPIも発表される。したがってこの内容がFOMCの政策決定に駆け込みで影響を与えることになるが、よほどのことがなければ利上げは見送られる公算が大きそうだ。しかし、依然としてインフレ圧力が残っているのも事実で、完全雇用状態の労働需給も考慮すると、「7~9月期に利下げが行われるという可能性は非常に低い」(前出のアナリスト)というのが常識的な見立てだ。早晩行き過ぎた利下げ期待が剥落する場面に遭遇した時、米国株が調整モードに移行することは避けられそうにない。

 改めて前日を振り返ると、CPI発表は米国株市場の取引開始前であるため、寄り付きから「インフレの鈍化傾向」を好感する形でNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに上昇して始まった。特に米長期金利の低下を背景にハイテク株への買いが顕著となり、ナスダック指数の上昇が目立つ状況となったが、景気敏感株は今一つ興に乗らない状態で、それを映すようにNYダウは程なくして下落に転じた。メディアが取り上げる米債務上限問題については、何度も繰り返されてきたことだが、これまでに実際にデフォルト状態に陥ったことはなく、半ば出来レース的な面も否めない。不透明要因ではあっても理由付けに使われるだけで、時が経過すれば霧消する材料である。実際はこれが売り圧力の源泉とは考えにくい。NYダウの逡巡は、やはり金融政策と表裏一体の米景気減速に対する警戒感がくすぶっていることが最大の要因といえる。

 米国では10年債利回りと2年債利回りに象徴される、かなり異常な逆イールド状態が長く続いている。コロナバブルの後遺症はそう簡単には収まらないということを示唆している。米国のリセッションはグローバルリセッションとほぼ同義と考えてよいと思われるが、これが杞憂であるというなら、狂った計器(米国債利回り)をずっと見続けたことで感覚がマヒしている可能性が高い。

 一方、だからといって株式市場がすぐに崩れるということでもない。ここにきて日経平均「逆連動」型ETFである日経ダブルインバースの信用買い残が急増傾向にあることが市場で話題となっていたが、これは相場が崩れる公算大とみている人が増えている証である。株価急落に身構えているところに来る下げは大波乱ではない。大波乱と定義される下げは、逆説的な言い方をすれば、皆が身をもって相場の強さを感じるまでは訪れない可能性が高い。

 あすは、株価指数オプション5月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日となる。このほか、朝方取引開始前に4月のマネーストックが日銀から発表される。海外では、1~3月期マレーシアGDP、4月のインド消費者物価指数(CPI)、1~3月期英GDP(速報値)のほか、5月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)が発表される。国内主要企業の決算発表では大和ハウス工業<1925.T>、東レ<3402.T>、オリンパス<7733.T>、資生堂<4911.T>、楽天グループ<4755.T>などが予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS