育児・介護休業法とは労働者のための育児休暇や介護休暇に関する法律です。2022年、2023年には、より育児休業が取りやすくなるように、育児・介護休業法の改正法が施行されました。今後育児休業を取得する予定であれば、改正された内容がどのようなものか知りたい人も多いでしょう。

そこでこの記事では、2022年および2023年の育児・介護休業法の改正ポイントについて解説します。

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法とは、正式名称「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で、仕事と育児や介護を両立できるようにするための法律です。持続可能で安心できる社会を維持するには、仕事と育児・介護を両立する必要があります。

ライフステージに応じて育児や介護が必要となることがありますが、それを理由に仕事を辞めなければならないとなれば、社会の活力は大きく損なわれるでしょう。しかし、育児や介護にはどうしても時間的制約が発生するため、今までどおりには働けなくなります。

そこで、法律により当然に休業や時間短縮勤務ができるようにすることが必要とされています。規制がないと、職場から休業することを認められず離職につながる可能性があるからです。

育児・介護休業法の改正

育児・介護休業法は1992年に施行されましたが、より育児休業を取得しやすいように2022年から2023年にかけて改正されました。これまでは育児休業を取得するのは女性が中心でしたが、男女ともに仕事と育児を両立しやすい環境を整備することが目的です。

2017年から2021年の男女別の育児休業取得率は以下のとおりです。

※参考:厚生労働省「雇用均等基本調査」

男性の育児休業取得率は徐々に上がってはいるものの、女性の取得率に比べると圧倒的に低い状況です。政府は育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業取得率を2025年までに30%とすることを目標としています。

そこで改正法では、男女ともに柔軟に育児休業できるよう、企業側に環境整備や労働者への周知・徹底を義務付けるようにしています。

育児・介護休業法の改正は3段階

改正育児・介護休業法は2022年から2023年にかけて3段階に分けて施行されました。どの時期にどのような改正が施行されたのか説明します。

2022年4月1日施行

2022年4月1日に施行された内容は以下のとおりです。

育児休業のための雇用環境整備などの義務化
2022年4月1日からは育児休業や、産後パパ育休をスムーズに取得できるように、すべての企業に以下のいずれかの環境整備が義務付けられるようになりました。

・育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
・育児休業・産後パパ育休に関する相談窓口の設置
・自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
・自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

また、本人もしくは配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者には、個別に育児休業の内容を周知し、取得意向を確認する措置も義務付けられました。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得条件の緩和
これまで、有期雇用労働者の育児・介護休業取得には「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件がありましたが、この改正で撤廃されました。そのため、有期雇用労働者の育児・介護休業取得条件は「1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかではない」という点のみになっています。

これにより、有期雇用労働者も無期雇用労働者と同様の取り扱いとなりました。育児休業給付に関しても同様の緩和があります。

2022年10月1日施行

続いて、2022年10月1日施行の内容を解説します。

産後パパ育休の創設・育児休業の分割取得
2022年10月1日の改正法施行により、産後パパ育休が新たに創設されました。産後パパ育休は子の出生後8週間以内に4週間まで、通常の育児休業制度とは別に取得可能です。

また、もともとあった育児休業制度も分割して取れるようになり、育休開始日を1歳以降にずらすこともできます。

産後パパ育休の特徴や、変更点は以下のとおりです。

この改正により、夫婦が交互に育児休業を取ることが可能となりました。それまでは女性が長期間育児休業を取るケースが多くみられましたが、女性も定期的に仕事に復帰しやすくなっています。

2023年4月1日施行

2023年4月1日施行分は次のとおりです。

育児休業取得状況公表の義務化
従業員1,000人超の企業は、育児休業の取得状況について公表しなければならなくなりました。具体的には、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

一般の人が閲覧できるような方法で公表しなければならず、自社のホームページなどを利用することが一般的です。そのほか、厚生労働省のサイトである「両立支援のひろば」でも公表できます。

以前は、高い水準で育児・介護休業のための取り組みをしている「プラチナくるみん認定」を受けている企業のみ、公表義務がありました。しかし、この改正によりさらに多くの企業が公表対象となっています。

一般の人も企業の育児休業取得状況が把握できるため、企業がより一層育児休業に積極的になることが期待できます。

※参考
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要
育児・介護休業法 改正ポイントのご案内令和4年4月1日から3段階で施行

まとめ

改正育児・介護休業法は、2022年4月から2023年4月にかけて3段階に分けて施行されました。この改正により、企業が育児休業に対してより積極的になり、男性の育児休業も取りやすくなることが期待されます。今まではできなかった育児休業の分割取得も可能となり、より柔軟に育児休業を取れるようになるでしょう。

この改正を機に、男性も育児休業を取得してみてはいかがでしょうか。