会話と抱っこで介護者負担を軽くするロボットや指圧ロボ、自動歯ブラシなど 東京ケアウィーク2023のロボット
介護用品展/介護施設産業展/介護施設ソリューション展の「CareTEX東京」や、次世代介護テクノロジー展「Careテクノロジー東京」など4つの展示会から構成される「東京ケアウィーク2023」が2023年3月22〜24日の日程で、東京ビッグサイトで開催された。主催はブティックス株式会社。こちらでは主に「Careテクノロジー東京」でのロボット関連の展示にフォーカスしてご紹介する。
●TPR、介護士の業務負担軽減をねらう会話&抱っこロボ「CoRoMoCo(ころもこ)」
TPRブースでの「CoRoMoCo」デモンストレーションパワートレイン事業などを手がけるTPR株式会社
は、コミュニケーションサポートロボット『CoRoMoCo(ころもこ)』を出展。主に介護施設での活用を想定している。
TPRコミュニケーションサポートロボット『CoRoMoCo(ころもこ)』介護者を助け、業務負担を軽減することを主眼としており、被介護者が抱っこすることでバイタル(心拍)を計測することができるほか、会話することで、食事や入浴をうながしたり、レクリエーション参加率を高める。現場では入浴や食事への誘導に時間がかかることに苦労があるのだという。もちろん、居室での不安や隙間時間の話し相手をつとめることで入居者を癒すことも目的としている。
高齢者がロボットを抱っこしたり会話したりすることで、介護士を助ける■動画:
■動画:
「CoRoMoCo」は高さ273mm、奥行き148mm、幅182mm。重さは約1kg。本体にはスピーカー、マイク、バッテリー、抱き上げ検知センサーなどを内蔵。本体をゆらゆら揺らすこともできる。角の先端のLEDは感情表現用。
頭部。左目はカメラ、右目はダミー。カメラでは笑顔度を測定する中の機構や詳細設計はユカイ工学が担当しており、口の部分には同社の「甘噛みハムハム」と同様の甘噛み機構「ハムリングシステム」を搭載している。甘噛みするだけではなくバイタルを取ることもできる。
口は甘噛み機構「ハムリングシステム」とバイタルセンサ(心拍)を内蔵バイタルセンサを複数搭載している理由は、高齢者は、人によっては半身麻痺などもあって身体の状態にだいぶ差があり、どこででも計測できるようにしたいと考えたためとのこと。たとえば片側が動かず、抱っこができない人であっても、指をくわえさせることはできる。そうすれば、甘噛みの感触を味わってもらうついでに自然と、確実にバイタルデータを取得できるというしかけだ。
両方の脇にバイタルセンサがあり、抱いているときに自動計測する現在はまだ初号機ができたばかりで、2023年末頃を目標として、事業化に向けて検討中だ。「CoRoMoCo」プロジェクトリーダーのTPR株式会社 新事業開発企画室 内田洋輔氏によれば、開発が始まったのは2021年4月から。同社では介護施設「絹の郷」を経営していることから、新事業として介護分野のAIロボットに着目したという。最初は抱っこロボットのようなものを想定していた。それが人形っぽいデザインになったのは、滑りにくい工夫などを考えたことと、高齢者から積極的に触りたい、「触っていて心地よい」と感じてもらうことを狙った結果。特に「バイタルを測定するというわずらわしさ」を解消したいと考えたからとのことだった。
「CoRoMoCo」プロジェクトリーダーのTPR株式会社 新事業開発企画室 内田洋輔氏なお、現状は介護施設向けを想定しているが「展開によっては独居老人向けや、介護関係以外の使い道も模索していきたい」とのことだった。
TPRブース。カラーバリエーションもいろいろ
●コンシューマー向けロボット開発を手がけるユカイ工学
「甘噛みハムハム」や尻尾ロボットの「Qoobo」などユカイ工学の製品「CoRoMoCo」の中を開発したユカイ工学
は、TPRの隣にブースを構えていた。ユカイ工学は自社プロダクトのほか、家庭向け製品・サービス開発支援を行っている。また、ロボットを介して録音メッセージをやりとりする家族向け双方向コミュニケーションロボットの「BOCCO emo」を活用した協業を各社と行っている。
たとえば2023年3月では、住宅型老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅向けに、マクニカのセンシング技術 「AiryQonnect」との組み合わせによる業務改善
や、セコムとDeNAによるシニア向けコミュニケーションサービス「あのね」
に用いられている。
「BOCCO emo」。家族間コミュニケーションや服薬支援(リマインド)などに用いられる
●青山学院大による協働ロボットを使った指圧マッサージ
青山学院大学 田崎研究室の指圧マッサージロボ青山学院大学理工学部 田崎良佑准教授ら
は、中国JAKAの協働ロボットとキヤノンの6軸力覚センサを使って、マッサージするロボットシステムを出展していた。上方に設置されたカメラで人の骨格と筋肉量を推定して指圧マッサージを行う。ロボットを使うことで、対人的不安なしで個室マッサージを利用できる。きれいに作られたシステムだが、あくまで研究用とのこと。
カメラで人の骨格と筋肉量を推定してマッサージを実施
力覚センサはキヤノン「FH-300-20」。20mm、250gと薄型軽量で高精度とのこと。2023年4月販売予定このほか同研究室では3Dプリンタの高速化や鋳造の自動化、左官ロボットによるこて塗り技能の自動化、鋳物表面の後加工の自動化など、人間ロボット共生に関する研究を行っている。
■動画:
●Genicsの次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」
Genics 次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」。右側がロボット早稲田大学ロボティクス研究室発ベンチャーである株式会社Genics
は、次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」を出展。マウスピースをくわえるとブラシが小型電動モータで上下に振動し、歯列に沿って自動で歯磨きすることで短時間(60秒)で手間なく歯磨きできる。手磨きよりも短時間で個人差のない歯垢除去効果があるという。
■動画:
歯周病予防は、虫歯予防だけではなく、心臓病や脳卒中、肺炎など様々な病気を予防するためにも重要とされている。この歯磨きをつかうことで介護士の負担を時間的・身体的・精神的に軽減できるという。ブラシや洗浄剤は消耗品なので、サブスクで提供している。
歯ブラシ部分
●サービスロボット普及をねらうSenxeed Robotics
Senxeed Roboticsブース。案内ロボットの「Cruzr」。上についているのは体温測定器サービスロボットのローカライズを行っている販売代理展のSenxeed Robotics
は案内ロボットの「Cruzr」、ロボット車椅子の「PathFynder」などを出展。中国UBTECH社のロボットだ。「PathFynder」はツクイの介護付有料老人ホームで実証実験
を行っている。
ロボット車椅子の「PathFynder」。スマホ操作で自動運転で目的地に移動できる掃除ロボット「CLEINBOT」は吸引、床拭きを自動で行うことができる。清掃時のブラシの汚れを途中で回収し、効率的に清掃を行うことができる。タイマーで起動させることもできるので無人運用も可能。稼働状況はクラウド上で確認できる。
掃除ロボット「CLEINBOT」。吸引、床拭きを自動で行う。
●マッスル ベッド-車椅子間移乗アシスト「SASUKE」
マッスル ベッド-車椅子間移乗アシスト ロボヘルパー「SASUKE」FAやロボット機器制御のマッスルは以前から開発・販売しているロボット移乗アシスト機器のロボヘルパー「SASUKE」
を出展。専用シートを使って「お姫様抱っこ」のように抱き上げるように人を支え、車椅子からベッド、あるいはベッドから車椅子へ利用者を移乗する。現在では体重120kgまでの人を移乗させることができる。
体重120kgまでの人を抱き上げることができる
操作は直感的で簡単ベッドの下に足を入れて使用することができる。キャスターはロック式。動かしたい方向に操作レバーを動かすとアームが動く。ロボットには充電式バッテリーを搭載。コードレスで自由に動かせる。介助される人を支える安心シートやクッションも標準でつく。
安心シートやクッションもある
●FUJI 座位間移乗サポートロボット「Hug」
FUJI 座位間移乗サポートロボット「Hug」FUJIは移乗サポートロボット「Hug」
を出展。座位間、すなわち座った姿勢から座った姿勢への移乗動作を支援する。トイレ・脱衣所などで活用できるようコンパクト設計で、100kgまで抱え上げることができる。介助者の身体負荷を軽減する。
●ベッドもロボットに
フランスベッドの見守りケアシステムを内蔵したベッド。起き上がりや離床などを検知してナースセンターに通知することができるそのほか、会場内ではカメラのほか、ベッドに体圧センサーなどをつけて危険察知や動作記録、見守りを行う機器が「ロボット」として各メーカーから出展されていた。各種バイタルや体重を測定することもできる。センサーを活用することで、ケアの質を向上させつつ、看護・介助の負担を軽減し、離職率を低下させる。
また、ファミレスや居酒屋などでお馴染みの配膳ロボットに対しても補助金がつく可能性があるとのことで、いくつかの企業が参考出展を行っていた。高齢者向けホームでも配膳ロボットが活躍する日が近いのかもしれない。
<目次>:
■TPR、介護士の業務負担軽減をねらう会話&抱っこロボ「CoRoMoCo(ころもこ)」
■コンシューマー向けロボット開発を手がけるユカイ工学
■青山学院大による協働ロボットを使った指圧マッサージ
■Genicsの次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」
■サービスロボット普及をねらうSenxeed Robotics
■マッスル ベッド-車椅子間移乗アシスト「SASUKE」
■FUJI 座位間移乗サポートロボット「Hug」
■ベッドもロボットに
●TPR、介護士の業務負担軽減をねらう会話&抱っこロボ「CoRoMoCo(ころもこ)」
TPRブースでの「CoRoMoCo」デモンストレーションパワートレイン事業などを手がけるTPR株式会社
は、コミュニケーションサポートロボット『CoRoMoCo(ころもこ)』を出展。主に介護施設での活用を想定している。
TPRコミュニケーションサポートロボット『CoRoMoCo(ころもこ)』介護者を助け、業務負担を軽減することを主眼としており、被介護者が抱っこすることでバイタル(心拍)を計測することができるほか、会話することで、食事や入浴をうながしたり、レクリエーション参加率を高める。現場では入浴や食事への誘導に時間がかかることに苦労があるのだという。もちろん、居室での不安や隙間時間の話し相手をつとめることで入居者を癒すことも目的としている。
高齢者がロボットを抱っこしたり会話したりすることで、介護士を助ける■動画:
■動画:
「CoRoMoCo」は高さ273mm、奥行き148mm、幅182mm。重さは約1kg。本体にはスピーカー、マイク、バッテリー、抱き上げ検知センサーなどを内蔵。本体をゆらゆら揺らすこともできる。角の先端のLEDは感情表現用。
頭部。左目はカメラ、右目はダミー。カメラでは笑顔度を測定する中の機構や詳細設計はユカイ工学が担当しており、口の部分には同社の「甘噛みハムハム」と同様の甘噛み機構「ハムリングシステム」を搭載している。甘噛みするだけではなくバイタルを取ることもできる。
口は甘噛み機構「ハムリングシステム」とバイタルセンサ(心拍)を内蔵バイタルセンサを複数搭載している理由は、高齢者は、人によっては半身麻痺などもあって身体の状態にだいぶ差があり、どこででも計測できるようにしたいと考えたためとのこと。たとえば片側が動かず、抱っこができない人であっても、指をくわえさせることはできる。そうすれば、甘噛みの感触を味わってもらうついでに自然と、確実にバイタルデータを取得できるというしかけだ。
両方の脇にバイタルセンサがあり、抱いているときに自動計測する現在はまだ初号機ができたばかりで、2023年末頃を目標として、事業化に向けて検討中だ。「CoRoMoCo」プロジェクトリーダーのTPR株式会社 新事業開発企画室 内田洋輔氏によれば、開発が始まったのは2021年4月から。同社では介護施設「絹の郷」を経営していることから、新事業として介護分野のAIロボットに着目したという。最初は抱っこロボットのようなものを想定していた。それが人形っぽいデザインになったのは、滑りにくい工夫などを考えたことと、高齢者から積極的に触りたい、「触っていて心地よい」と感じてもらうことを狙った結果。特に「バイタルを測定するというわずらわしさ」を解消したいと考えたからとのことだった。
「CoRoMoCo」プロジェクトリーダーのTPR株式会社 新事業開発企画室 内田洋輔氏なお、現状は介護施設向けを想定しているが「展開によっては独居老人向けや、介護関係以外の使い道も模索していきたい」とのことだった。
TPRブース。カラーバリエーションもいろいろ
●コンシューマー向けロボット開発を手がけるユカイ工学
「甘噛みハムハム」や尻尾ロボットの「Qoobo」などユカイ工学の製品「CoRoMoCo」の中を開発したユカイ工学
は、TPRの隣にブースを構えていた。ユカイ工学は自社プロダクトのほか、家庭向け製品・サービス開発支援を行っている。また、ロボットを介して録音メッセージをやりとりする家族向け双方向コミュニケーションロボットの「BOCCO emo」を活用した協業を各社と行っている。
たとえば2023年3月では、住宅型老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅向けに、マクニカのセンシング技術 「AiryQonnect」との組み合わせによる業務改善
や、セコムとDeNAによるシニア向けコミュニケーションサービス「あのね」
に用いられている。
「BOCCO emo」。家族間コミュニケーションや服薬支援(リマインド)などに用いられる
●青山学院大による協働ロボットを使った指圧マッサージ
青山学院大学 田崎研究室の指圧マッサージロボ青山学院大学理工学部 田崎良佑准教授ら
は、中国JAKAの協働ロボットとキヤノンの6軸力覚センサを使って、マッサージするロボットシステムを出展していた。上方に設置されたカメラで人の骨格と筋肉量を推定して指圧マッサージを行う。ロボットを使うことで、対人的不安なしで個室マッサージを利用できる。きれいに作られたシステムだが、あくまで研究用とのこと。
カメラで人の骨格と筋肉量を推定してマッサージを実施
力覚センサはキヤノン「FH-300-20」。20mm、250gと薄型軽量で高精度とのこと。2023年4月販売予定このほか同研究室では3Dプリンタの高速化や鋳造の自動化、左官ロボットによるこて塗り技能の自動化、鋳物表面の後加工の自動化など、人間ロボット共生に関する研究を行っている。
■動画:
●Genicsの次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」
Genics 次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」。右側がロボット早稲田大学ロボティクス研究室発ベンチャーである株式会社Genics
は、次世代型全自動歯ブラシ「g.eN」を出展。マウスピースをくわえるとブラシが小型電動モータで上下に振動し、歯列に沿って自動で歯磨きすることで短時間(60秒)で手間なく歯磨きできる。手磨きよりも短時間で個人差のない歯垢除去効果があるという。
■動画:
歯周病予防は、虫歯予防だけではなく、心臓病や脳卒中、肺炎など様々な病気を予防するためにも重要とされている。この歯磨きをつかうことで介護士の負担を時間的・身体的・精神的に軽減できるという。ブラシや洗浄剤は消耗品なので、サブスクで提供している。
歯ブラシ部分
●サービスロボット普及をねらうSenxeed Robotics
Senxeed Roboticsブース。案内ロボットの「Cruzr」。上についているのは体温測定器サービスロボットのローカライズを行っている販売代理展のSenxeed Robotics
は案内ロボットの「Cruzr」、ロボット車椅子の「PathFynder」などを出展。中国UBTECH社のロボットだ。「PathFynder」はツクイの介護付有料老人ホームで実証実験
を行っている。
ロボット車椅子の「PathFynder」。スマホ操作で自動運転で目的地に移動できる掃除ロボット「CLEINBOT」は吸引、床拭きを自動で行うことができる。清掃時のブラシの汚れを途中で回収し、効率的に清掃を行うことができる。タイマーで起動させることもできるので無人運用も可能。稼働状況はクラウド上で確認できる。
掃除ロボット「CLEINBOT」。吸引、床拭きを自動で行う。
●マッスル ベッド-車椅子間移乗アシスト「SASUKE」
マッスル ベッド-車椅子間移乗アシスト ロボヘルパー「SASUKE」FAやロボット機器制御のマッスルは以前から開発・販売しているロボット移乗アシスト機器のロボヘルパー「SASUKE」
を出展。専用シートを使って「お姫様抱っこ」のように抱き上げるように人を支え、車椅子からベッド、あるいはベッドから車椅子へ利用者を移乗する。現在では体重120kgまでの人を移乗させることができる。
体重120kgまでの人を抱き上げることができる
操作は直感的で簡単ベッドの下に足を入れて使用することができる。キャスターはロック式。動かしたい方向に操作レバーを動かすとアームが動く。ロボットには充電式バッテリーを搭載。コードレスで自由に動かせる。介助される人を支える安心シートやクッションも標準でつく。
安心シートやクッションもある
●FUJI 座位間移乗サポートロボット「Hug」
FUJI 座位間移乗サポートロボット「Hug」FUJIは移乗サポートロボット「Hug」
を出展。座位間、すなわち座った姿勢から座った姿勢への移乗動作を支援する。トイレ・脱衣所などで活用できるようコンパクト設計で、100kgまで抱え上げることができる。介助者の身体負荷を軽減する。
●ベッドもロボットに
フランスベッドの見守りケアシステムを内蔵したベッド。起き上がりや離床などを検知してナースセンターに通知することができるそのほか、会場内ではカメラのほか、ベッドに体圧センサーなどをつけて危険察知や動作記録、見守りを行う機器が「ロボット」として各メーカーから出展されていた。各種バイタルや体重を測定することもできる。センサーを活用することで、ケアの質を向上させつつ、看護・介助の負担を軽減し、離職率を低下させる。
また、ファミレスや居酒屋などでお馴染みの配膳ロボットに対しても補助金がつく可能性があるとのことで、いくつかの企業が参考出展を行っていた。高齢者向けホームでも配膳ロボットが活躍する日が近いのかもしれない。