主に攻撃面を担当する前田(左)と名波(右)の両コーチ。指導の一端がウルグアイ戦で見られれば理想的だ。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

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 新生・日本代表の初陣となるウルグアイ戦が3月24日夜、東京・国立競技場で行なわれる。

 第2期目に突入した森保一監督は「形としては4−2−3−1でスタートしていければ。4−2−3−1がこれからのベースになっていくかをまずチャレンジして、判断したい」と発言。

 攻撃陣は浅野拓磨(ボーフム)か上田綺世(サークル・ブルージュ)を1トップに据え、右から伊東純也(S・ランス)、鎌田大地(フランクフルト)か堂安律(フライブルク)、左に三笘薫(ブライトン)という陣容で、南米の強豪にぶつかっていくことになるだろう。

 森保監督は「サッカーのセオリーのなかで『奪って早く攻めること』は優先順位の一番に持っていないといけない。それを持ちながらも、カタール・ワールドカップで課題にもなった『ボールを握っていく攻撃』を仕掛けられるように、選手たちにトライしてほしい」と注文もつけていたが、緩急をつけながらの攻めというのは相手との力関係もあってそう容易ではない。

 ただ、速攻・遅攻・リスタート・PKなどを駆使してW杯2大会連続4強入りしたクロアチアのように、多彩な試合運びができなれば、出場国が48か国になって試合数も増える2026年の北中米W杯での8強入りは難しい。戦い方のバリエーションを増やし、選手層を引き上げていかない限り、日本の目標達成は見えてこないのだ。

 明確な課題に直面する代表に、これまでになかったエッセンスをもたらす人材と言えるのが、新たに就任した名波浩、前田遼一の両コーチだ。
 
 20日のトレーニング開始以降、名波コーチは複数色のビブスを使いながらのスローインとポゼッション、5対5+フリーマンなど少人数でのゲーム形式など担当。前田コーチもパス&コントロールなどベーシックな部分を軸に練習を進めてきた。

 伊東が「新しい感じがする」とコメントしたが、横内昭展(現・磐田監督)、上野優作(現・岐阜監督)の両コーチがやっていた練習とは異なるだけに、選手たちの意識も変わりそうだ。

 初陣2日前の22日には、名波コーチが中心となってミーティングも行なわれたという。

「カタール・ワールドカップでは粘り強い戦いを見せられたし、ドイツ・スペイン戦では守から攻のカウンターのところで相手の嫌がる良い攻撃ができていたと。ただ、さらにボールを奪う部分、ボールを握りながら試合を進める部分、プレス回避しながら攻撃につなげる部分。速攻ができなかった時のボールの動かし方などは引き上げていかないといけないと名波コーチが選手たちに伝えてくれました」と森保監督はその内容を明かした。

 これは指揮官がカタールW杯で苦杯を喫した時から言い続けている部分。「私の考えと大きく違ったところはない」とも話すように、スタッフ間で共通認識を持てているという。それをピッチ上に落とし込むのが、攻撃陣を担う名波・前田の両コーチの役割。その一端がウルグアイ戦で見られれば理想的だ。

【PHOTO】注目の三笘薫はスタメン入り!ウルグアイ戦に向けて前日練習を行った日本代表!
 名波コーチは松本山雅での監督時代、傑出した打開力を誇るU-20日本代表の横山歩夢(鳥栖)に個人・チーム戦術を叩き込むべく、徹底したアプローチを行なっている。その結果、彼は昨季のJ3で11ゴールを叩き出し、個人昇格を果たした。

 そうやって一人ひとりにアプローチし、個の成長を促せるのが強みだ。今回も練習後に橋岡大樹(シント=トロイデン)と話し込む場面が見られ、積極的にコミュニケーションを図ろうとしている様子が窺えた。

 代表は限られた活動日数しかないため、どこまで個々の能力を引き出せるか分からないが、98年フランスW杯の元10番だった自身も代表活動を経て大きく飛躍した経験がある分、声掛けや指示には長けているはず。一人ひとりの背中を押し、アグレッシブにチャレンジさせるマインドを作ることも得意だろう。

 特にここからエース級と位置づけられる三笘薫(ブライトン)のような選手には心強い存在になり得る。“名波成果”が徐々に出てくることを期待したい。
 
 一方の前田コーチも代表で1トップとして成功と挫折の両方を味わってきた。現役時代の得点感覚は非凡で、DFとの駆け引きやポジショニングなども独特の感性を持ち合わせていた。それを上田や町野修斗(湘南)といった点取り屋タイプの面々に伝授してくれれば、FW陣の得点力も上がるのではないか。

「(前田コーチは)生粋のゴールゲッター。より少ないタッチでゴールを重ねるイメージがあります。自分もずっとワンタッチゴールとかにこだわっているけど、より簡潔にゴールを取ることが僕は良いと考えている。そういう意味で見習う部分は多いですし、FW論じゃないけど、同じポジションだからこそ話せることもある。刺激を受けられるんじゃないかと思います」と上田も大いに歓迎していた。

 2人のコーチが試合中にどんなアドバイスを送り、的確な方向へと導いていけるのかも注目点。今回はベンチの動向や役割分担にも目を向けつつウルグアイ戦を見てみたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)