新型コロナ5類引き下げで外来が自費負担へ 初診料4170円でインフルと同等に

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政府は3月10日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部で、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に引き下げた後の医療体制に関する方針を正式決定しました。このニュースについて郷医師に伺いました。

監修医師:
郷 正憲(医師)

徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

政府が正式決定した方針とは?

3月10日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部で政府が決定した方針について教えてください。

郷先生

政府は3月10日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部で、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に引き下げた後の医療体制に関する方針を正式決定しました。5類に引き下げられることによって季節性インフルエンザと同様の位置付けとなることから、5月8日以降はウイルス検査や外来診療は原則として自己負担となります。また、患者の受け入れ体制もインフルエンザ並みを目標に拡充することになりました。

政府の試算によると、5月8日以降の新型コロナウイルスの初診料は最大で4170円となり、インフルエンザの初診料4450円と同程度となる見込みです。また、入院費は自己負担を求めることになりますが、患者側の急激な負担増を避けるため、月に最大2万円の補助をするとしています。加えて、高額な新型コロナウイルス治療薬は公費負担で無料とすることになります。

いずれの軽減措置も9月末を期限としていて、感染状況などを踏まえて延長可否を判断するとのことです。

5類移行までの経緯とは?

5月8日に新型コロナウイルスが5類に移行する予定ですが、ここに至るまでの経緯を教えてください。

郷先生

新型コロナウイルスの5類見直しの議論については、2022年12月21日に政府が公表した重症化率などのデータで、オミクロン株が流行した2022年7~8月の80歳以上の重症化率が1.86%、致死率が1.69%と、季節性インフルエンザの数値をそれぞれ下回ったことが示されたことから、政府が5類への見直しを検討していました。

2023年1月11日に開催された厚生労働省の専門家組織、いわゆるアドバイザリーボードの会合でも分類見直しについて協議がおこなわれ、現在の2類相当から季節性インフルエンザなどと同じ5類に変更する場合は、治療費や医療提供体制の確保などに関して「必要な準備を進めながら段階的に移行すべきだ」との見解がまとめられました。そのうえで「新型コロナウイルスのリスクと対策について、市民が納得感を得られる施策をおこなうこと」との提案もしていました。こうした経緯を踏まえて岸田総理大臣が5類に移行する方向で検討を進めるように指示を出し、政府内で様々な調整がおこなわれた末、ゴールデンウィーク明けの5月8日に5類に移行する方針が固まったそうです。

新型コロナウイルス外来の原則自己負担への受け止めは?

新型コロナウイルス外来の原則自己負担についての受け止めを教えてください。

郷先生

新型コロナウイルスを5類に変更すると決定した時点から、この方針になることは想像できました。新型コロナウイルス対策は医療費の中でも非常に大きなウエイトを占めており、全部とは言わずとも一部を自己負担としなければならない時期が来ることは明らかでしたので、特に驚くことではないと考えます。

そして、今回の決定で感染対策上最も懸念されるのは「受診控え」です。今までは「新型コロナウイルスかもしれない」と思った時点で受診をして、検査結果が陽性であれば感染対策を徹底していた人が多かったため、それが感染を抑える一助となっていました。しかし、外来が有料になることで受診を控えて、新型コロナウイルスに感染しているのに通常の日常生活を続けるという人はこれまで以上に増加すると考えられます。そのため、実際の感染者数が増加する可能性は懸念されます。ほとんどの場合は軽症で済むとはいえ、感染者数の母数が増加したときに一定の割合で出てくる中等症以上の感染者が急激に増加したときに入院病床が不足しないかという問題が出てくると考えます。

また、5類移行に伴って入院病床の確保は行政の役割ではなくなる可能性がありますので、自分で病床の空いている病院を探さなくてはならなくなり、酸素投与など入院治療が必要なのに自宅療養をせざるを得なくなるケースも増えるかもしれません。このようなケースが起こった場合、どのような対処をするのかについて社会がもう少し議論をするべきなのではないかと考えています。少なくとも個人としては、感染を防ぐために手洗い、手指消毒をおこなう、体調が悪いときは無理な外出を控えるなど、基本的な感染対策を継続する必要はあるでしょう。

まとめ

政府は3月10日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部で、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に引き下げた後の医療体制に関する方針を正式決定し、原則自己負担とすることが明らかになりました。政府は患者側の軽減措置を9月末期限としていて設定していますが、措置が延長するかどうかについても今後注目が集まりそうです。

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