「手が痺れる」のは「脳梗塞」や「くも膜下出血」が原因?医師が監修!
手にピリピリとした痺れがあり、原因を知りたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
手の痺れはストレスや一時的な血行障害などのほか、末梢神経に関連する痺れや内科的な原因の痺れである可能性も考えられます。
さらに、脳血管障害など命にかかわる危険がある病気の前触れのこともあるため注意が必要です。
こちらで、手の痺れの原因・考えられる病気・手の痺れと一緒に表れた時に注意したい症状などについてご紹介していきます。
手の痺れに悩まされている方は、どのような原因で痺れが起こっているのか見極める際の参考にしてみてください。
手が痺れる原因は?
手が痺れる原因はさまざまで、なかには病気ではなくても痺れを感じるケースもあります。
また、一般的に痺れと認識されている異常感覚(痺れやビリビリ感)以外にも、原因によって麻痺(運動障害)や感覚障害(触った感じが分からない)が起こることもあります。
手が痺れる場合に考えられるのは、次に挙げるようなことが原因として多いです。
血行不良による一時的な痺れ
朝起きた時に手が痺れていて、びっくりした経験のある方もいるかもしれません。このような手の痺れは、寝る時の姿勢が原因で手に自分の体重がかかって一時的に血行不良が起こることが原因なので、通常は心配いりません。
長時間正座をしていて足が痺れるのと同じ現象だと思ってよいでしょう。ただし、後ほどご紹介する手根管症候群などは朝起きた時の手の痺れがひどくなる傾向があるため、朝起きた時以外にも痺れがある場合には注意する必要があるでしょう。
ストレスによる痺れ
一時的な血行不良・けが・病気だけではなく、ストレスも手の痺れの原因のひとつです。ストレスとも関連が深いとされるうつ病・自律神経失調症・更年期障害などの症状のひとつとして手の痺れがみられるケースもあります。
また、ストレスで自律神経が乱れて血流が悪くなることが原因で痺れが起こるとされています。思い当たることがある場合は、ストレスをなるべく溜めない生活を心掛けて様子をみましょう。
ただし、手の痺れ以外にも症状がある場合にはストレスのせいだと決めつけてしまうのは危険です。おかしいと思ったら、後述する考えられる病気についても疑ってみてください。
手が痺れる場合に考えられる病気
手が痺れる原因は多岐にわたるため、先ほどお話したようなストレスや血行不良が原因とは限りません。なかには、内科的な病気や脳疾患など怖い病気が隠れている場合もあります。
どんな痺れ方なのか・痺れの部位はどのあたりなのか・ほかにも症状がないかをしっかりチェックしましょう。手が痺れる原因として考えられる病気には以下のようなものが挙げられます。
糖尿病
糖尿病の合併症として神経障害が起こり、手や足に痺れを感じることがあります。高血糖によって不必要な物質が溜まったり血流が悪くなったりすることで、神経の動きが阻害されるのが原因です。
糖尿病の合併症による神経障害の場合、通常は手の痺れよりも足の痺れや違和感の方が目立ちます。足の痺れのほうが先に表れた場合や痺れがひどい場合には、糖尿病の可能性も考えられるでしょう。
脳血管障害
手の痺れは、脳血管障害(脳卒中)の前触れとして起こることもあるため注意が必要です。痺れのなかでも麻痺や感覚障害が起こることが多いでしょう。脳血管障害には脳梗塞・くも膜下出血・脳出血などがあります。
手の痺れだけではなく、体の片側だけの痺れや麻痺・舌のもつれ・頭痛・顔の半分が痺れるなどの症状がある場合は要注意です。脳血管障害の可能性が高いため、すぐに病院を受診しましょう。
これらの脳血管障害はいずれも血圧が高いことが原因のひとつとなるため、予防するためには塩分の摂取量を守る、体重を増やさないようにするなどの対策を行う必要があります。
手根管症候群
親指・人差し指・中指と薬指の中指側に痺れや痛みが出る病気です。原因ははっきりと分かっておらず、特発性のものが多いとされています。妊娠・出産期の女性や更年期の女性に多いのが特徴です。
そのほか、手を酷使している方・骨折などのけがをしている方・透析をしている方などもなりやすいといわれています。急性期には、痺れや痛みが明け方に起こることが多いでしょう。
指を曲げ伸ばしする、手を振るなどの動作を行うと、痺れが軽減するのが特徴です。ひどくなると細かいものがつまみにくくなり、親指の付け根が痩せてOKサインが作れなくなるなどの症状が出ることがあるため、注意が必要でしょう。
診断を行う時には、手首を曲げて両方の手の甲を合わせ、1分以内に痛みやしびれの症状が悪化するかどうかをチェックするといった方法がとられます。
胸郭出口症候群
腕や肩甲帯などの運動、感覚などを支配している腕神経叢がさまざまな部位で圧迫されたり締め付けられたりすることによって起こる症候群の総称です。胸郭出口症候群では、腕を上に挙げることで痺れが起こります。
痺れ以外には、肩・腕・肩甲骨周辺の痛みや、前腕尺側と手の小指側に痛み・ピリピリ感・痺れなどの感覚障害が表れます。そのうえで、握力の低下や細かい動作を行いにくいなどの運動麻痺がある場合には、胸郭出口症候群を疑う必要があるでしょう。
胸郭出口症候群は、重いものを運ぶような仕事をしている方やなで肩の女性などに多いとされています。胸郭出口症候群が原因だと考えられる場合には医師に相談しましょう。また、症状を悪化させる動作を避け、重いものを持たないようにするなどの対策も大切です。
内科的疾患や脳疾患
手の痺れの原因は、内科的な病気によるものの可能性もあるため注意が必要です。感染症・過換気症候群・アルコール性のもの・中毒性のもの・ビタミン欠乏・薬の副作用などによって痺れが起こるケースもあります。
また、脳炎や脳腫瘍などの脳疾患によっても痺れが生じるケースがあります。手の痺れのほかに頭痛・意識障害・けいれんといった症状がある場合にはすぐに病院を受診するようにしましょう。
手の痺れと同時に現れた場合に気を付けるべき症状は?
手の痺れはそこまで心配がいらないケースも多いですが、なかには命にかかわる病気の前触れの可能性もあります。手の痺れが出た時には、そのほかに症状がないかよく注意する必要があります。
特に次のような症状が出た場合には、すぐに病院に行かなくてはならないケースが多いです。
ろれつが回らない
手に痺れがあるだけではなく、ろれつが回らない・舌がもつれる感じがする・しゃべりにくいといった症状も見られる場合には、脳血管障害(脳卒中)の可能性があります。
脳血管障害は手・顔・言葉に症状が出るといわれているため、言葉がうまく出ない症状がある場合には注意が必要です。もし脳血管障害を発症していれば一刻を争うため、救急車を呼んですぐに病院を受診してください。
足にも痺れがある
手だけではなく足にも痺れがある場合には、糖尿病の合併症による神経障害の可能性があります。特に、両方の足先に痺れ・痛み・冷感があるようなケースでは注意が必要です。
さらに、神経障害では感覚が鈍くなってものを触っても分かりにくいといった症状が出ることもあります。そのほか、腰椎椎間板ヘルニアで神経が圧迫されているような場合にも、手足に痺れが出るケースがあります。
体の片側だけに痺れや麻痺がある
手に痺れが出た場合、体の両側なのか片側なのか確認しましょう。手の痺れだけではなく、足の痺れ、顔面の痺れなどが体の片側だけに表れる場合は脳血管疾患の可能性があります。
ほかにも頭痛や舌のもつれといった症状がある場合には、すぐに病院を受診することをおすすめします。
手の痺れの治療法は?
一時的な病態が原因で手が痺れている場合、その病態が良くなれば自然治癒することが考えられます。神経への圧迫が原因で症状が重く、日常生活に支障があるような場合には治療が行われます。手根管症候群の場合、消炎鎮痛剤・湿布薬・飲み薬などが処方されるのが一般的です。
さらに、手根管内腱鞘内注射・シーネ固定による安静・運動や仕事を控えるなどの保存療法が行われます。難治性のものの場合、手術が行われることもあります。
胸郭出口症候群の場合も保存療法が基本で、消炎鎮痛剤・血流改善剤・ビタミンB1などを用いるのが一般的です。
軽度であれば、肩甲挙筋や僧帽筋を強くする訓練が行われます。症例によっては装具が用いられたり、手術が行われたりすることもあります。
すぐに病院に行ったほうが良い「手が痺れる」症状は?
手足の動かしづらさ(麻痺)も出現した場合
指先だけではなく、顔や手や腕、足などにもしびれが出現した場合
激しい頭痛やめまい、嘔吐などがある場合
これらの場合には、すぐに病院受診しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、脳神経内科、整形外科、循環器内科です。
問診、診察、血液検査、画像検査(レントゲン、CT、MRI)、神経伝導速度検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから症状があるのか、他にも気になる症状があるのかなどを医師に伝えましょう。
治療する場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
手の痺れは比較的身近な症状なので、あまり問題ないと考えている方も多いかもしれませんね。
しかし、なかには脳血管障害など重篤な病気の前触れとして起こることもあるため注意が必要です。
見極めるポイントは、手の痺れ以外に症状が出ていないかという点です。
特に、ろれつが回らない場合や体の半分のみにしびれや麻痺がある場合には、脳血管障害の可能性が高いとされています。
たかが手の痺れと侮らず、おかしいと思ったらすぐに病院を受診するようにしましょう。
参考文献
「しびれ(上肢のしびれ)」(日本整形外科学会)
手足のしびれ・痛み(日本臨床内科医会)
「手根管症候群」(日本整形外科学会)