「抹茶に抗うつ作用あり」熊本大学研究チームがマウス実験で発見
熊本大学の研究グループは、マウスによる実験で「抹茶が脳内のドーパミン神経回路を活性化させて、抗うつ作用を発揮する」ことを明らかにしました。このニュースについて伊藤医師に伺いました。
監修医師:
伊藤 有毅(医師)
日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医。
研究グループが発表した内容とは?
今回、熊本大学の研究グループが発表した内容について教えてください。
伊藤先生
今回紹介する研究は、熊本大学の研究グループが学術誌「Nutrients」に発表した内容です。研究グループはまず、ストレスをかけたときにうつ様行動が強く現れたマウスと、うつ様行動が極めて弱く現れたマウスの2系統を用意しました。
そして、滅菌水に混ぜた抹茶10mg/kg、30mg/kg、100mg/kgをそれぞれ経口投与した後にうつ様行動を評価しました。その結果、生理食塩水を投与したときと比べて抹茶を100mg/kg投与したときは、うつ様行動が強く現れた系統のマウスのうつ様行動の改善が見られました。一方で、うつ様行動が極めて薄く現れた系統のマウスでは、有意な変化は見られませんでした。さらに、100mg/kgの抹茶を投与する前にドーパミンD1受容体遮断薬を腹腔内投与して同様の実験をおこなったところ、うつ様行動が強く現れた系統のマウスにおける有意な変化は認められませんでした。
今回の実験結果から、「抹茶はうつ様行動が強く現れた系統のマウスにのみ抗うつ作用を発揮すること」と「ドーパミンD1受容体の活性化を介したメカニズムが存在すること」が明らかになりました。
今回の発表内容への受け止めは?
熊本大学らの研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。
伊藤先生
抹茶の成分の「テアニン」が抗うつや抗不安作用をもつことは報告されていました。そのメカニズムは数々報告されていましたが、ドーパミンD1受容体の活性化を促進することに着目した点で新しい観点であると思いました。
今回の研究結果をどう活かす?
熊本大学らの研究グループが発表した今回の内容は、今後どのように活かしていくことが期待されますか?
伊藤先生
抹茶にはテアニンだけでなく、依存症が問題となる「カフェイン」も多く含んでいます。「体に良いから」と抹茶を大量に摂取すれば、むしろ害になる恐れがありますので注意が必要です。
まとめ
熊本大学の研究グループは、マウスの実験で「抹茶が脳内のドーパミン神経回路を活性化させて抗うつ作用を発揮する」ことを明らかにしました。研究グループは「今回の知見が日常生活における精神状態の違いやストレスに対する感受性の個人差を考慮し、抹茶を活用した健康増進プログラムの開発・実践につながることが期待される」と期待感を示しています。
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