地元にある行きつけの焼き肉店で記念撮影。ファンへの神対応ぶりは地元でも有名だ

「芸能生活20周年に素敵なお仕事をやらせていただけて本当に嬉しい」

 2月22日、喜びを爆発させたのは、女優の伊藤沙莉(さいり・28)だ。2024年春から放送されるNHK連続テレビ小説『虎に翼』の主演が決まったのだ。

「有村架純さん主演の『ひよっこ』以来、2度めの朝ドラ出演です。今作のモデルは、戦前に誕生した日本初の女性弁護士・三淵嘉子さん。熱心に女性の弁護活動をおこなった後に、初の女性裁判官にもなった偉人です」(芸能記者)

 わずか9歳だった2003年、ドラマ『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』(日本テレビ系)で芸能界デビューし、20年後に、朝ドラの主演に大抜擢。順風満帆に見える女優人生だが、伊藤には朝ドラばりの“まるで昭和”な苦労時代があった。

「千葉県千葉市生まれで、3人兄弟の末っ子です。父親は会社経営者でしたが、大酒飲みで借金まみれ。トラブルを抱えて会社は倒産しました。その後、両親は離婚し、子供たちは知人の家にバラバラに預けられ、母親は軽トラで寝起きするという生活を送っていたそうです」(芸能関係者)

 結局、伯母の家に居候することになった一家だが、その伯母も離婚。伯母と一緒に家族5人で、大量のゴキブリが住みつく安アパートで暮らすことになった。

「いつも金銭的に苦しく、母親は朝から牛乳配達や塗装の仕事で家にいなかったそうです。それでも伊藤さんのレッスン料を捻出し、芸能活動を支えていました」(前出・芸能関係者)

 伊藤は2005年、大ヒットドラマ『女王の教室』(日本テレビ系)に出演して以降、地元・千葉市で有名な存在になった。

「中学生のとき、今年の新入生に“女優がいる”と話題になりました。ドラマではいじめっ子役だったので、身構えていたら、めっちゃ素直で、いい子でしたよ」(地元住民)

 飾らない性格で“神ファンサ”を繰り返す彼女は、お笑い芸人の兄、オズワルド・伊藤俊介とともに、地元で熱烈に支持されている。伊藤の行きつけの焼き肉店の店主が語る。

「コロナ禍の前は、頻繁に家族で来てくれていました。6年ほど前、たまたまうちの子供と一緒に写真を撮ってもらいましたが、嫌な顔ひとつしない。いつもニコニコしていて、家族仲もよさそうです」

 一方、地元では数々の“ぽんこつ伝説”も残している。

「演技の仕事以外はまるでダメ。高校生になってアルバイトを始めたら、どれもすぐクビになりました。コンビニでレジ打ち中に寝始めたり、居酒屋のバイトではビラ配り中に失踪したり……。学業でも、テストで0点は当たり前。まれに見る“ぽんこつ”なんですよ」(前出・芸能関係者)

 そんな“ぽんこつ”女優を、芸能界で人知れず引き立てた人物がいる。故・志村けんさんだ。

「2018年のお正月に『志村けん in探偵佐平 60歳』というコメディドラマがNHKで放送されました。局内で長年、温められてきた番組で、志村さん本人も企画段階から関わる大がかりなものでした。ストーリーは、志村さん演じる経理一筋の冴えない警察職員が定年を迎え、憧れの探偵事務所を開設。しかし、刑事経験ゼロの主人公に代わって、事務担当のバイトの女の子が機転を利かせ、難事件を解決していく……というものです。

 相手役を決める際、志村さんが『あのコ(伊藤)絶対おもしろいよ』と“指名”したんです。もっと名のある女優にオファーできると言ったのですが『色がついてなくて可能性のあるほうがおもしろいじゃん』とすごい熱量でした。突然のオファーに、伊藤さんの事務所も戸惑っていましたね(笑)。

 いざ撮影してみたら、志村さんとのコンビネーションはばっちり。この一件で、彼女の業界内でのステータスが上がりました。彼女も感謝の想いを胸に秘めているはずです」(テレビ局プロデューサー)

“虎に翼”を授けたのは志村さんだったというわけだ。

 伊藤の力量に、映画評論家の前田有一氏も太鼓判を押す。

「個性的な女優さんですが、どんな役柄を演じても、ナチュラルで現実味があるところが魅力です。イチ押し作品は、2021年公開の映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』。ヒロイン役の伊藤さんは、誰もが感情移入できる演技をしていて素晴らしいですよ。業界内での評価が先行している印象ですが、伊藤さんには朝ドラを機に、国民的人気を得て、ぜひ日本映画界を牽引してほしいですね」

 地元住民も業界人も大絶賛。これなら朝ドラも、だいじょうぶだぁ!