毎月起こったガジェット・サービス系ニュースの中から注目の情報をピックアップ。今回は国内の動画配信サービス終了や、マイクロソフト/Googleが続々とリリースした検索AIなどを取り上げます。

 

国内動画配信に異変、「GYAO!終了」と「U-NEXTのParavi統合」

LINEとヤフー(Yahoo! JAPAN)を運営するZホールディングス(以下ZHD)は、無料の動画配信サービス「GYAO!」を、3月31日をもって終了すると発表しました。同時にZHDは、TVerとの提携も発表しています。

 

ZHDは傘下のLINEとヤフーの合併も2023年度中に完了する見込みで、GYAO!の終了は合併にともなう事業再編の一環としてとらえることができます。

↑GYAO!のサービス終了のお知らせ

 

一方、2月17日には動画見放題サービスを運営するU-NEXTが、放送局系の動画配信サービスParaviの事業を統合すると発表しました。映画や海外ドラマに強いU-NEXTが、TBSやテレビ東京のオリジナル番組を豊富に揃えるParaviを統合することで、ラインナップの強化につながるとしています。U-NEXTはParaviのサービス統合により、有料の動画配信サービスとしては国内事業で最大になる見込みです。

↑U-NextのWebサイト

 

U-NEXTへのParaviのサービス移管は7月をメドに実施予定。サービス移管後は、U-NEXTの月額会員がParavi提供の動画コンテンツも見放題となります。また、ParaviのサービスはU-NEXTの運営の元、継続して提供されます。

 

ちなみに、GYAO!は元を辿ると2005年にUSENグループが立ち上げた「GyaO」をYahoo! JAPANが買収し、Yahoo!動画と統合したサービス。会員登録不要・無料を掲げ、テレビ局の公式コンテンツを多く配信し、国内の無料動画配信サービスとして確かな地位を築いてきました。

 

一方のU-NEXTは2007年に同じくUSENが立ち上げた有料の映像配信サービス「GyaO NEXT」が独立する形で発足。スマホでの動画配信が普及する流れに乗って成長を続け、2017年にはUSENを吸収合併するに至っています。

 

もともとは同じUSENから出発したGYAO!とU-NEXTですが、前者はサービス終了、後者は競合の取り込みと、明暗が分かれる結果となりました。

 

ZHDはLINE VOOMに注力

GYAO!を運営していたZHDは、今後どのように動画市場に挑んでいくのでしょうか。ZHDは決算説明会にて、LINEのショート動画サービス「LINE VOOM」の開発に注力する方針を示しました。

↑ZHDは、GYAO!の終了後、LINE VOOMを強化していく方針を示しています

 

GYAO!と関連事業の再編により、ZHDは年間30億円の運営コスト削減を実現。動画配信サイトの運営ノウハウを持つスタッフや、制作体制はLINE VOOMに集中投下して、サービスの成長を目指します。

 

ショート動画市場では、TikTokを筆頭に、YouTube ショート、InstagramのリールなどSNS大手がひしめいています。これらのライバルにどう挑んでいくのか。ZHDの慎ジュンホGCPOは「VOOMの強みはLINEのユーザー基盤の大きさ。10代〜20代だけでなく、幅広い年齢層への利用者の拡大が見込める。また、身近なLINEアプリからアクセスできるため、これまで動画を制作したことがない人も参入しやすいという側面もある」と説明。「クリエイターの参入を促し、コンテンツを強化したい」と方針を示しています。

 

マイクロソフトとGoogleが新しい検索AIを相次ぎ発表

マイクロソフトは2月8日、検索エンジン「Bing」に対話型AIの技術を組み込んだ新バージョンを発表しました。新しいBingには、マイクロソフトが出資するOpenAI社の対話型AIプラットフォーム「ChatGPT」の技術が活用されています。

↑マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、チャット機能を搭載した「新しいBing」を発表しました

 

従来の検索エンジンは検索結果のWebサイトを一覧表示にして応答するのに対して、新しいBingでは検索結果の内容を要約して、流ちょうな話し言葉で応答します。

 

さらに、「90年代を舞台にしたディストピア小説を書いて」と小説のアイデアを出してもらったり、「人参と玉ねぎを使った煮込み料理のレシピを提案して」と話して調理法を聞いたりと、創作の補助に用いることも可能です。

 

マイクロソフトはBing検索以外にもOpenAI社の対話型AIの技術を導入していく方針を示しています。Webブラウザーの「Microsoft Edge」には、Webサイトの要点をチャットで質問して、その要点を教えてくれる要約機能や、ブログの記事などを簡単に作成する作成補助機能が追加されます。

↑新しいBingと会話している画面。Web 検索で情報を集めて要点をまとめて表示するという使い方ができます

 

新しいBingはベータ版が公開されており、Windows 11ではWebブラウザー「Microsoft Edge」で試すことができます。また、スマートフォン向けのアプリ「Bing」では、先行ベータテストを実施しており、Microsoft アカウントを登録した人向けに、順次サービスを提供しています。

 

一方で、検索エンジンの雄であるGoogleは2月6日、対話型AIに基づく検索システム「Google Bard」を発表しました。現在は限られたベータテスター向けに提供されていますが、近いうちにGoogle 検索に実装されるとしています。Google 公式ブログ「The Keyword」では、多数の情報ソースから得られる情報を要約して検索結果に表示する新機能が紹介されています。

↑Googleも新検索アルゴリズム「Google Bard」を発表しています。Webサイトの要点をまとめて短い文章で提示する機能を備えています

 

災害・通信障害時の備えに「デュアルSIM」サービス化の動き

2022年夏に発生したKDDIの大規模な通信障害をきっかけに、キャリア3社が連携して新サービスを提供する構想が立ち上がっています。auを運営するKDDIと、ソフトバンクの両社は、お互いの回線を副回線として提供する有料オプション「デュアルSIMサービス」の提供を発表しました(KDDI、ソフトバンク)。

↑1台のスマホで2つのSIMを使う「デュアルSIM」。KDDIとソフトバンクは、お互いの回線を災害時・通信障害時用のバックアップ回線として提供することを発表しました

 

3キャリアにデュアルSIMサービスを提案したというKDDIの郄橋誠社長によると、たとえば、auショップでソフトバンク回線を追加するといった「保険サービスのようなオプションサービス」の形態で提供されるといいます。月額料金は数百円程度で、サブ回線の通信を使う際には使った量に応じて利用料が発生する形としています。

 

KDDIとソフトバンクは3月下旬以降にデュアルSIMサービスを提供すると発表しています。NTTドコモは正式な発表をしていないものの、NTTの島田社長はKDDIとソフトバンクの両社と協議中であると明かし、「そんなに遅れることなく展開できると思っている」とコメントしています。

 

地球環境に配慮したスマホ「arrows N」発売

NTTドコモは、サステナビリティ(持続可能性)に配慮して作られたスマートフォン「arrows N F-51C」を2月10日に発売しました。製造は、日本のスマホメーカーFCNT(旧富士通モバイル)が担当します。

↑NTTドコモが2月10日に発売した、“エシカルなスマホ”ことarrows N F-51C

 

arrows N F-51Cは、スマホの外装やフレームで使われる素材のうち約67%に再生素材を採用。リサイクルされたペットボトルや、クルマのヘッドライトカバー、CDなどがスマホの筐体の過半数を占める部分に使われています。

↑電気電子部品を除いた部分の約67%にリサイクル素材が使用されています

 

スマホを使っている内にヘタってしまう電池については、バッテリーの負荷を抑えて充電する技術を導入し、4年後の電池劣化を抑えています。OSのアップデート対応もarrowsとしては初めて4年間に延長し、長く使えるエコなスマホへと仕上げています。

 

「長く使える」と言われると、4年後もしっかり動くのかが気になるところですが、SoCは2022年の多くのスタンダードモデルが搭載する「Snapdragon 695 5G」で、性能としてはやや控えめです。一方で、価格は9万9780円(税込、ドコモオンラインショップ)と、同クラスの性能を持つスマホの中ではかなり割高な設定となっています。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】