注文住宅は施主の希望を反映させて建築する住宅で、選ぶ設備や内装、外構のグレードによって費用は大きく異なります。注文住宅を建てたいと考える人の中には、注文住宅を建てるとどのくらいのお金がかかるのか気になる人もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、注文住宅にかかる費用や相場について解説します。

注文住宅にかかる費用の内訳と平均額

注文住宅にかかる費用としては主に以下のようなものがかかります。

・土地代
・建築費
・手続き費用

それぞれ平均的にどのくらいの費用がかかるのか解説します。

土地代
注文住宅を建築するときは、建物とは別に土地を購入することが一般的です。土地代は地域や駅からの距離などによって大きく異なります。日本全国の土地代の平均は1平方メートルあたり15万1,811円ですが、都道府県別の地価ランキングは以下の表のようになります。

※参考:土地代データによる2022年基準地価

土地代が安い県では1平方メートルあたり2万円弱となるため、地域によって土地代は大きな幅があることがわかります。

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会のアンケート調査によると、新築注文住宅の土地取得の平均額は約1,633万円でした。エリア別に見ると首都圏は約2,680万円、中部圏は約1,606万円、近畿圏は約1,670万円、その他のエリアは約1,030万円です。

土地取得金額で一番多い価格帯は1,000万円以上1,500万円未満で20.6%、次いで500万円以上1,000万円未満が19.2%、500万円未満が17.2%です。

※参考:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会「土地・住宅に関する消費者アンケート調査ウェブアンケート調査結果」

建築費
土地代を除く注文住宅の住宅建築資金の全国平均は3,459万円です。三大都市圏の平均は3,843万円と全国平均よりやや高くなっています。年度別の平均額は以下の表のとおりで、やや上昇傾向にあります。

2023年1月時点で物価高が進んでおり、注文住宅の建築費の平均はさらに上がる可能性があるでしょう。

※参考:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査報告書」

その他手続きにかかる費用
土地や建物の所有者を自分にするためには登記をしなければなりません。登記変更、登録などの手続きは資格がない人でも行えますが、基本的には司法書士に依頼します。そのため、登記手数料に加え司法書士への報酬も必要です。仲介業者を挟んで購入したときには、仲介業者への手数料も発生します。

かかる費用の相場としては、土地代、建築費の合計の10%前後となります。ただし、司法書士への報酬や仲介手数料などは人によって異なるため、ここで紹介した相場はあくまで目安であることに注意してください。

フラット35利用者の注文住宅にかかった資金の平均

対象者を【フラット35】に限定すると、注文住宅・土地付注文住宅にかかった費用の平均額は以下のとおりになります。【フラット35】とは返済期間が最長35年で、金利がその間変わらない固定金利の住宅ローンです。住宅金融支援機構が運営している商品で、さまざまな銀行や金融機関を通じて申し込めます。

※参考:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」

注文住宅の建築費の相場

注文住宅は依頼する工務店、選ぶ設備や材料のグレードによってかかる費用が大きく異なります。ここでは住宅の種類別に、かかる費用の相場について解説します。

最低限必要な機能に抑えたシンプルな住宅
【住宅の特徴】
・家の形が真四角で複雑に入り組んでいない
・屋根の種類は片流れ
・間取りは一般的なもの
・外壁塗装、壁紙や床材などの内装、設備などのグレードは低め
・電動シャッターなどの機能はついていない
・窓は出窓ではなく引き違い窓

上記のような、デザインがシンプルで設備は最低限の機能、全体的にグレード低めの材料、といった家であれば、建築費は1,000万円台にまで抑えられます。こういった住宅は「ローコスト住宅」と呼ばれ、節約しつつ注文住宅を建築したい人に人気です。

外観や内装のグレードを上げた住宅
【住宅の特徴】
・デザインは四角形でシンプル
・外壁や内装、設備のグレードを1、2段階上げている
・ハウスメーカーの標準仕様

上記のような住宅では、建築費の相場が2,000万円台になります。

建築費が2,000万円になると、家のデザインはシンプルでありながら、さまざまなところでグレードを上げることができるようになります。イメージとしてはハウスメーカーの標準仕様くらいです。家の大きさによっては鉄骨造も選択肢に入れられるようになるでしょう。

大手ハウスメーカーで希望を反映させた住宅
【住宅の特徴】
・大手ハウスメーカーで希望をある程度反映させている
・真四角ではなく複雑な形
・家の外構に柵や塀なども設置
・選ぶ材料や設備のグレードをハウスメーカーの標準からワンランク上げている

ある程度ハイスペックな設備を整え、大手ハウスメーカーに依頼したような家の相場は3,000万円を超えます。3,000万円でもすべてが希望通りのスペックにできるわけではありませんが、標準仕様プラスアルファの家は手に入るでしょう。

理想のデザインを追求させた住宅
家のデザインも自分の理想を追求し、外構、外装、内装、設備すべてをハイスペックにしようとすると、建築費の相場は4,000万円を超えてきます。ただし、住宅の面積が広い、中庭が欲しい、全室空調やサウナも入れたい、といった希望がある場合、4,000万円、5,000万円でも足りなくなる可能性は大いにあるでしょう。

すべてをハイスペックでこだわりぬくと、建築費は際限なく上がっていきます。そのため、最初にしっかりと予算設定し、その中で建築することが大切です。

有名建築士に依頼する場合
設計事務所に設計を依頼する場合、建築を担当する会社によっても異なりますが、設計費は建築費全体の1割程度が相場です。しかし、テレビや雑誌などに取り上げられ、多くの人に名前が知れ渡っているような建築士に依頼すると、設計費の相場は建築費の2、3割と通常よりも高くなります。

そのため、有名建築士に3,000万円の家を設計してもらうときは、600~900万円が設計費の相場となるでしょう。建築費や建築士によっても異なりますが、有名建築士に依頼するときには平均よりも建築費が高くなるかもしれません。

注文住宅と建売住宅どちらがお得?

【フラット35】利用者を対象にしたアンケートによると、建売住宅の所要資金の平均は以下のとおりです。

このように、所要資金を比較すると建売住宅のほうが安い傾向にあります。特にこだわりがなく、一般的な住宅でよいのであれば建売住宅のほうが安く購入できる可能性は高いでしょう。ただし、建売住宅の中には設備や材料のグレードを落として建築されているものもあります。

そのため、金額に見合った造りかどうか、購入前に確認することがおすすめです。自分のチェックでは自信がないときには、お金はかかりますが住宅のプロにインスペクションを依頼してみてはどうでしょうか。

※参考:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」

まとめ

注文住宅の建築費は選ぶ設備や地域によっても費用は異なりますが、3,500万円程度が相場です。土地を含めると4,000万~5,000万円になります。ただし、シンプルなデザインで設備のグレードを上げなければ土地代+1,000万円台で建築することも可能です。

希望を盛り込んでいくと価格は際限なく上がってしまいます。予算オーバーにならないためにも、まずはしっかりと予算を定め、予算を超えないように計画しましょう。