【▲ 宇宙開発シミュレーションゲーム「Kerbal Space Program」のイメージイラスト(Credit: Squad/Private Division)】


現地時間2023年2月24日、米国ワシントン州で宇宙開発シミュレーションゲーム「Kerbal Space Program」(カーバル・スペース・プログラム、以下「KSP」)を使った競技大会が開かれます。主催するのは、宇宙物理学者を夢見て渡米した1人の日本人留学生です。


■新作を記念した宇宙開発シムの競技大会

KSPとは、架空の惑星「カービン(Kerbin)」を舞台にしたPCおよびコンソール向けのシミュレーションゲームです。プレイヤーは宇宙機やロケット、航空機などを開発して、現実の惑星や衛星を模した様々な天体を探査したり、カービンの空を自由に飛行したりすることができます。


2011年のリリース以降、KSPは度重なるアップデートを重ねつつ2本のDLC(ダウンロードコンテンツ)が発売されており、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)とのコラボレーションで追加されたパーツやミッションで楽しむこともできます。また、2023年2月24日にはマルチプレイなどに対応する新作「Kerbal Space Program 2」のアーリーアクセス開始が控えています。



【▲ 新作宇宙開発シム「Kerbal Space Program 2」アーリーアクセスのオフィシャルトレーラー】
(Credit: Intercept Games/Private Division)


関連:欧州宇宙機関が宇宙開発シム「KSP」とコラボ、探査ミッションを再現(2020年5月20日)


今回開催されるのは、ワシントン州のグリーン・リバー大学(Green River College)に通う留学生の「ヨタ」さんが主催するKSP競技大会です。ヨタさんがKSPを始めたのは中学2年生の時で、ゲームで遊ぶことを禁じていた数学者の父親に唯一認められ、自由に遊べたのがKSPだったといいます。


小学5年生の時にNHKスペシャル「神の数式」を見て以来、宇宙物理学者になることが夢だというヨタさんは、現在大学2年生。日本の高校で物理部に所属していたことから留学先の大学でも物理クラブ(正式名称:Society of Physics Students)に入り、クラブ長を務めるようになったものの、コロナ禍の影響で活動が制限され、クラブ員も思うように集まらない状況が続きます。コロナ禍前はワシントン州から賞を授与されるほどの活動を行っていたという物理クラブをなんとか建て直したいという思いと、中学生の頃から親しんでいたKSPに続編が登場することを喜ぶ思いが自身のなかで重なったことで、今回の競技大会を思い付いたのだといいます。


大会はヨタさんが個人として企画し、クラブ員の協力を得て準備が進められています。大学からは大学所有のPCを競技に使用する許可が得られたことに加えて、KSPのパブリッシャーであるPrivate Divisionからは教育機関向けバージョンのキーコードの提供を受けることができたといいます。また、ヨタさんが留学先で個人的に知り合った人々のなかにはスペースXやブルーオリジンで働く現役のロケットエンジニアもいて、1人が競技大会に同席する予定ということです。


■カーレースから宇宙探査まで KSPの腕前を4種目で競う

ヨタさんが主催するKSP競技大会では、4種目の競技が用意されています。


1. カーバル宇宙センター外周カーレース

ゲームの主な舞台となるカーバル宇宙センター(KSC)の外周を走るレース。制限時間は5分で、コースに見立てた外周の舗装部分を走る必要があります(画像参照)。基本はタイムアタックですが、重量がより軽く・コストがより安いパーツを使うほどスコアに加算されます(※使用パーツによるスコア加算は以下の競技でも同様です)。


【▲ KSC外周カーレースのコース説明図(ヨタさんのツイートから)】


2. 最寄りの飛行場との往復レース

KSCからアイランド飛行場(KSCの東に浮かぶ島の飛行場)に行って戻ってくるレース。制限時間は10分、スタートおよびゴール地点はKSCの滑走路で、アイランド飛行場の滑走路上で一度停止する必要があります。往復手段に制約は設けられていないので、飛行機だけでなくロケットや船で参加することも可能です。


【▲ 飛行場往復レースのイメージ画像】


3. ムン往復レース

カービンの衛星ムン(地球の月に相当)に行って戻ってくるレース。制限時間は20分で、ムンの表面に旗を立て、カービンの地上もしくは海上へ生還する必要があります。旗を立てる場所はどこでも構いませんが、帰還時の着陸/着水地点がKSCに近ければ近いほどスコアに加算されます。


【▲ ムン往復レースのイメージ画像】


4. 45分間チャレンジ

カービンを周回する軌道(高度70km以上)に到達しさえすれば、あとは何をしてもいいフリースタイルの競技。打ち上げ、ドッキング、着陸、旗の設置といった行動に応じてスコアが加算されるため、有人かつ高度なミッションほど高得点が期待できます。


【▲ 45分間チャレンジのイメージ画像】


競技大会への参加方法は2通りに分かれています。1つはヨタさんが通う大学の学生向けで、大学所有のPCにインストールされたKSP(教育機関向けバージョン)で参加する方法です。会場には最大30台程度のPCが準備され、大会の様子はYouTubeでライブ配信される予定です。


もう1つはプレイ動画を提出する方法で、こちらは日本からでも参加することが可能です。提出期限は日本時間2023年2月24日の朝8時です。なお、競技への参加はTwitterのDMで申し込むことができます。詳しくはヨタさんのツイートをご覧下さい。



大会の様子や各競技の結果などは改めてお伝えする予定です。


 


Source


Image Credit: Squad, Intercept Games, Private Divisionヨタさん(@Yottanoviathan) (Twitter)

文/sorae編集部