公転周期は1日未満 非常に近接した“超低温矮星”の連星を新たに発見

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【▲ LP 413-53AB星系(上段)、TRAPPIST-1星系(中段)、木星系(下段)を比較した図。LP 413-53ABを構成する2つの超低温矮星の間隔は、木星からその衛星カリストまでの距離よりも短いとされる(Credit: Adam Burgasser/University of California San Diego)】


ノースウエスタン大学の博士研究員Chih-Chun Hsuさんを筆頭とする研究チームは、小さくて温度も低い恒星「超低温矮星」2つからなる連星を新たに発見したとする研究成果を、アメリカ天文学会の第241回会合にて発表しました。


超低温矮星(Ultracool Dwarf Star)は有効温度が3000ケルビン(摂氏約2730度)を下回るほど低い赤色矮星で、サイズや質量が恒星としての下限に近く、主に赤外線の波長で輝く天体です。これまでに7つの太陽系外惑星が見つかっている恒星「TRAPPIST-1(トラピスト1)」も超低温矮星の一つに数えられます。


今回報告されたのは「おうし座」の方向にある連星「LP 413-53AB」です。前述の通り、この連星は2つの超低温矮星が互いに周回しているとみられています。2つの星は0.01天文単位(※1)程度しか離れておらず、公転周期(言い換えれば「1年」)はわずか20.5時間という短さです。


※1…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。


研究に参加したカリフォルニア大学サンディエゴ校のAdam Burgasser教授によると、多くの連星の公転周期は年単位であるため、測定は数か月ごとに行われて、ある程度の期間を経た後にデータが分析されます。ところが、LP 413-53ABは観測データが数分単位で変化しており、スペクトル線(※2)がシフトする様子を“リアルタイム”で観察することができたといいます。


※2…スペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)に現れる吸収線や輝線をあわせた呼称。


【▲ LP 413-53ABを構成する2つの超低温矮星の現在のサイズ(赤)と、形成から100万年頃の推定サイズ(点線)を示した図(Credit: Adam Burgasser/University of California San Diego)】


LP 413-53ABは形成されてから数十億年が経っていて、誕生から間もない頃の星のサイズは今よりも大きかったとみられています。太陽から地球までの距離の約1パーセントしか離れていないLP 413-53ABの間隔について「驚くべきことです」と語るHsuさんは、形成されてから100万年程度しか経っていなかった頃には星と星が重なり合っていただろうと指摘しています。研究チームは、LP 413-53ABを構成する2つの星が進化する過程で互いに接近したか、現在は失われている3番目の星が星系から放出された後に接近した可能性があると推測しています。


また、LP 413-53ABではハビタブルゾーンが連星の軌道とたまたま重なっているため、ハビタブルゾーンに惑星が存在することはないとされています。超低温矮星は太陽系の近傍にある恒星の15パーセントを占めるとも推定されていますが、もしもLP 413-53ABのように近接した連星が超低温矮星では一般的な場合、生命居住可能な惑星はほとんど見つからないかもしれないとHsuさんはコメントしています。超低温矮星の連星に関するこれらのシナリオを調査するために、研究チームは同様の連星をより多く特定したいと考えているということです。


 


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Image Credit: Adam Burgasser/University of California San DiegoNorthwestern Now - Ultracool dwarf binary stars break records

文/sorae編集部