矮小不規則銀河「UGC 7983」と写り込む無数の銀河
【▲ 矮小不規則銀河「UGC 7983」(Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Tully)】
こちらは「おとめ座」の方向約3000万光年先にある矮小不規則銀河「UGC 7983」です。矮小不規則銀河とは、数十億個ほどの恒星が集まった「矮小銀河」のなかでも、星やガスが不規則に分布している銀河のこと。矮小銀河は、天の川銀河と比べて規模が100分の1程度の小さな銀河です。
この画像に写っている銀河はUGC 7983だけではありません。その背後には、はるか遠方にある無数の銀河が視野全体に渡って写り込んでいます。天の川銀河やアンドロメダ銀河のような渦巻銀河から、UGC 7983と同じおとめ座の方向にある「M87」のような楕円銀河まで、その形態は様々です。
また、画像の左上にうっすらとした1本の点線が写っているのがわかりますでしょうか。欧州宇宙機関(ESA)によれば、これは観測中にたまたま視野を横切った太陽系の小惑星の軌跡なのだとか。この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って取得された4つのデータを組み合わせることで作成されているのですが、1基の宇宙望遠鏡で複数のデータを得るためには途中でフィルターを切り替えながら露光しなければならないため、移動する小惑星の軌跡がこのように断続的な4本の線として記録されたというわけです。
なお、ハッブル宇宙望遠鏡によるUGC 7983の観測は、天の川銀河から10メガパーセク(約3260光年)以内に存在する近傍のすべての銀河を正確に観測するためのキャンペーン「Every Known Nearby Galaxy」の一環として実施されました。この観測キャンペーンでは153個の銀河を対象に、2019年から2021年にかけてハッブル宇宙望遠鏡による観測が実施されています。ESAによると、天の川銀河の隣人とも言える近傍の銀河の観測は、天文学者が様々な銀河に存在する星の種類を断定し、宇宙の局所構造をマッピングする上で役立つということです。
3000万光年先の小さな銀河と遠方に散らばる無数の銀河、そして偶然写り込んだ小惑星の軌跡を捉えたこの画像は、ESAから2023年1月16日付で公開されています。
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. TullyESA/Hubble - Visitor to a Galaxy
文/sorae編集部