「唾石症」になると現れる症状・なりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!
唾石症(だせきしょう)とは、唾液を作る唾液腺の中や導管の中に石ができる病気です。悪化すると、唾液の分泌に大きくかかわる病気のため注意が必要です。
しかし、具体的な症状や原因など知らない方も多いでしょう。そこで本記事では、唾石症がどのような病気かをご紹介します。
なりやすい方の特徴や治療法と予防方法についても解説するので、参考にしてください。
唾石症とは?
唾石症とはどのような病気ですか?
この病気は、唾液を作る唾液腺や唾液腺管と呼ばれる位置に石ができる病気です。通常、唾液は顎下腺・舌下腺・耳下腺などの唾液腺で作られています。そこから唾液腺管を通って、口の中に流れてくる仕組みです。しかし、何らかの原因で唾液腺や唾液腺管の中に、小石のような唾石ができてしまいます。特に、顎下腺の中から作られる唾液は粘り気の強い唾液であるため、唾石ができやすい場所といわれています。唾液の機能は、食事の時に多く分泌されて、食べやすくする機能や細菌などから体を守るといったものです。
しかし、唾石ができると栓となってしまい正常に分泌されず、正しい機能が発揮されないことがあります。唾石の主な成分は炭酸カルシウムといわれています。
唾石症を発症した際はどのような症状が出てきますか?
この病気の主な症状としては、次のようなものが代表的です。痛みや腫れ
ドライマウス
細菌感染
唾液腺や唾液腺管の中に石ができることで詰まる可能性があります。詰まった場合には、唾液が正常に口の中に流れずに滞ってしまう可能性があります。すると、唾液腺が腫れてしまい痛みが発生するケースがあるのです。
この痛みは、特に食事中から食後に顕著に現れる傾向で、強い痛みを感じるケースもあります。主に痛む場所としては、顎下・耳下・下の裏側などが代表的です。しばらくすると症状が和らぐこともあります。
また、ドライマウスも主な症状です。唾液が出にくくなることで、口の中が乾燥するような症状が現れることがあります。さらに、唾液が詰まって口内が乾燥すると、細菌感染が起こりやすくなる点も特徴です。
そうなんですね。何がきっかけで発症するのでしょうか?
この病気の原因は、明確に分かっていません。しかし、石は唾液腺にできた石灰化物だといわれています。石ができるきっかけは、魚の骨などの芯になるものがあり、そこに炭酸カルシウムが徐々に沈着することで石ができていくと考えられています。そのため、石の組成は炭酸カルシウムが主な原因となっているようです。とはいえ、芯についても、何が芯となっているかははっきりとわかっていません。
発症するのに年齢は関係ありますか?
年齢の関係性ははっきりとは解明されていません。しかし、実際に発症した方の統計では、20歳~40歳までの方に多く発症していることがわかっています。また、10歳以下の子供も発症事例は少ないです。唾石症になりやすい人の特徴を教えて下さい。
この病気になりやすい方の特徴についても、はっきりとは解明されていません。なりやすい性別もないと考えられています。しかし、20歳~40歳までの方の発症ケースに注目してみると、硬水やカルシウムが多く含まれている水などを飲んでいる方に発症しやすい傾向があります。そのため、これらの飲料水を飲んでいる方が、この病気の発症のしやすさに大きく関係すると考えられるでしょう。
また、普段から水分摂取が少ない方も、なりやすいと考えられています。これは、水分摂取が少ないために、唾液が濃縮して唾石ができやすくなるためです。
唾石症の診断・検査と治療法
唾石症の診断ではどのような検査を行いますか?
主な検査方法としては、次のようなものが挙げられます。視診・触診
臨床検査
超音波検査
CT検査
血液検査
視診・触診では、目の腫れや唾石の存在を確認します。石に直接触れられるケースもあるため、この病気かどうかを判断可能です。また、臨床検査も行います。
方法としては、唾液分泌を促すレモン果汁や飴などを与えて、唾液が正常に分泌されるかを確認する方法です。唾液が分泌されないなどの症状を再現することで、この病気かどうかを診断します。超音波検査やCT検査では、触診では確認できないようなサイズの小さな石でも、画像によって存在を確認できる検査方法です。血液検査では、この病気によって感染症が起きていないかを確認します。
唾石症の治療法を教えてください。
この病気の治療方法としては、次のようなものが代表的です。抗生物質の内服
マッサージなどによる自然排出
手術
まず、この病気によって唾液腺に炎症を起こしている場合には、抗生物質の内服を行います。これによりまず炎症を取り除くのです。そして、症状が軽度の場合や石が小さい場合には、マッサージなどを行って石を排出します。レモンなどを使って唾液分泌を促し、マッサージを行うだけで石を排出することができるケースもあるのです。
しかし、重症化して石が大きくなっている場合には、手術が必要となります。手術は、皮膚を切開して口腔外から摘出する方法と、口腔内の粘膜を切開して摘出する方法の2種類があります。石の位置や大きさによって手術方法を決めて摘出するのです。
唾石症の治療は副作用があるのでしょうか?
治療を行ったことによる副作用として考えられるものとしては、舌神経損傷などが考えられます。手術によって出血などのリスクがありますが、手術によっては神経を傷つけるケースがあるのです。特に顎下腺後方部分に唾石が生じている場合、口腔内からの手術でも摘出は可能ですが、舌神経を傷つける可能性があります。舌神経を傷つけた場合には、舌の感覚の低下・しびれ・味覚の低下などを引き起こすことが考えられます。また、上唇や頬などの感覚にも異常をきたす場合があり、顔面神経麻痺などを起こす可能性もあるのです。
唾石症の治療中の過ごし方や予防方法
唾石症の治療中の過ごし方で気をつけることはありますか?
この病気は、軽度な場合には経過観察をする場合もあり、その際の過ごし方に注意が必要となります。まずは、定期的な受診を忘れずに受けましょう。無症状や一過性の痛みであることもあり、受診しない方も多いです。しかし、放置が悪化を招くおそれがあるため、定期的な受診で唾石の様子を知っておくことが必要です。また、経過観察中に唾液腺腫脹が現れた場合には、できるだけ早く受診をしましょう。唾石の摘出手術を受けた場合の過ごし方も、傷口が治るまでは定期的な受診を行いましょう。
唾石症は再発することはあるのでしょうか?
この病気は、唾石の摘出手術後も再発の可能性があります。しかし、再発率や再発時期などは個人差があるため、いつ頃に再発するかは具体的にはわかりません。過去には、摘出手術を受けたにもかかわらず、1年半程度経過した時点で再発が疑われたケースもあります。また、そのメカニズムも明確には分かっていません。一説では、手術により局所的な環境の変化が生じて、唾液の流出経路の変化や貯留の影響で再発が起きたと考えられています。
唾石症を予防する方法があれば教えてください。
具体的な予防方法は分かっていません。しかし、経過観察と診断された方であれば、治療に従って薬を正しく服用しましょう。薬には、唾液の分泌を促す成分が含まれていることがあります。これによって、自然に排出される効果に期待しているためです。また、発症や再発を防ぐために、唾液腺のマッサージやうがいを行っておきましょう。口内を清潔にするため歯磨きを忘れずに行うことも大切です。入れ歯の方や義歯を使用中の方であれば、定期的に洗浄剤などを使用して清潔にすることも予防につながるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
唾石症は、誰しも起こる可能性がある病気です。発症しやすい年齢などはデータにより分かっていますが、データに該当しないからといって必ずしも発症しないわけではありません。そのため、日常生活を過ごすうえで、予防を行うことが大切です。とはいえ、はっきりとした効果のある予防方法も分かっているわけではありません。歯磨きやうがいなどで口内を清潔に保ち、万が一異変を感じた場合には、専門の医療機関に相談しましょう。早期治療を行えば、手術を行わずに改善することができます。
編集部まとめ
唾石症は、唾液腺や唾液腺管などの中に石ができる病気です。石が小さければ、経過観察やマッサージなどで、取り出すことができます。
しかし、大きくなれば痛みも伴い、摘出に手術が必要となることもある病気です。そのため、普段からできる予防を行って、石ができないようにしておきましょう。
唾石ができる明確な原因は分かっていませんが、早期発見と早期治療が大切であることは変わりません。
異変を感じた場合には、できるだけ早く専門の医療機関に相談して、治療を進めましょう。
参考文献
唾石症の診断と治療(日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学 松延 毅)