膝の痛みがある人もできる運動を医師が解説 膝関節を痛めずに運動不足を防ぐには
「膝が痛い」「水がたまっている」という方は、どのように運動したら良いのでしょうか。「膝が痛くてもできる運動」や「膝に負担がかからない運動」、反対に「してはいけない運動」などについて、整形外科医の竹内弘毅先生(たけうち整形外科院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
膝の痛みの主な原因を医師が説明 水がたまっているから?膝軟骨のすり減りから?膝関節の病気、変形性膝関節症とは
編集部
膝が痛くなる原因には、どのようなものがありますか?
竹内先生
膝の関節には、大腿骨や脛骨、膝蓋骨などの骨のほかにも、筋肉や靭帯、半月板、軟骨など、たくさんの組織があります。これらがなんらかの形で損傷したり、炎症を起こしたりすると、膝に痛みが生じます。
編集部
膝の痛みでよく耳にする「変形性膝関節症」とはどんな病気ですか?
竹内先生
膝の軟骨がすり減ってしまうことにより、痛みや曲げ伸ばしのしにくさなどを引き起こす病気で、主に加齢変化によって起きるものです。とくにスポーツ活動を多く行っていた方や、正座、和式トイレなど、膝を大きく曲げる生活習慣を続けてきた方、過去に膝の靱帯や半月板のケガをした方などはより注意が必要です。
編集部
水がたまることもあると聞いたことがあります。
竹内先生
そうですね。私たちの身体は、関節にある「滑膜(かつまく)」というところから関節液を分泌しています。この関節液は、分泌量が正常であれば、膝関節の滑りを良くしてくれます。しかし、「変形性膝関節症」の方は軟骨がすり減り、炎症などを起こすため、関節液を過度に分泌してしまうことがあります。そうすると、関節の中に過剰な関節液が溜まってしまうのです。
編集部
そうなった場合、どうしたら良いのでしょうか?
竹内先生
すり減ってしまった軟骨がサプリメントや飲み薬で再生するということは、残念ながら考えにくいと思います。しかし、筋肉をつけたり、体重を減らしたりすることで、関節への負担を減らし、痛みを緩和することは可能です。
膝が痛くてもできる運動は? 膝関節に負担がかからない・より痛めない運動やストレッチが知りたい
編集部
やはり、運動が大事なのですね。
竹内先生
そうですね。もちろん、運動といってもさまざまで、膝関節にさらなる負担がかかってしまうものもありますので注意が必要です。
編集部
膝が痛い人にはどんな運動が良いのでしょうか?
竹内先生
膝に体重がかからない形での運動が良いでしょう。寝たまま、もしくは椅子に座ったままできる運動やストレッチがお勧めです。また、自転車は荷重が少ないうえ、筋力強化と適度な可動域訓練に適しています。ほかには、水中でのウォーキングやアクアビクスなども、水の浮力が関節への負担を和らげてくれます。
編集部
やはり、負担をかけすぎないようにするのがコツですね。
竹内先生
そういうケースがほとんどです。適度に歩くのはもちろん大切ですが、ランニングのように、過度な負担がかかるような運動はお勧めしていません。また、関節に荷重負荷(姿勢や体重によってかかる力)をかけないという観点から、食事面も見直し、無理のない範囲での体重コントロールを指導しています。その場合の目標は、体重の5%ですね。
編集部
運動は、具体的にどんなものがありますか?
竹内先生
大腿四頭筋と外転筋(中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋)を強化するものが良いとされています(イラスト[1]・[2])。余裕がある方は、内転筋とハムストリングスの運動(イラスト[3]・[4])もプラスして行ってみてください。[1]大腿四頭筋のトレーニング
膝を伸ばし、足首を直角にした状態で、脚をゆっくりと上げ下げする。反対の膝は曲げておく
[2]外転筋のトレーニング
横向きに寝て、足をゆっくりと上げる。このとき、肩・腰・足首の3点が「く」の字にならないよう、真っ直ぐな状態であることを意識する
[3]内転筋のトレーニング
椅子に座った状態で、両膝の間にボールをはさみ、両膝を近づけるようにしながらゆっくりとボールをつぶす
[4]ハムストリングスのトレーニング
うつ伏せになり、片方の膝をゆっくりと曲げ伸ばしする
膝関節痛のある人向けの運動療法、膝痛がある人がしてはいけない運動やストレッチを教えて
編集部
運動をする際の注意点は?
竹内先生
痛みのない範囲でしっかり行うことが大事です。大腿四頭筋のトレーニングは、最後まで伸ばすため、より大きな筋力を必要とします。回数は、やればやるほど良いというわけではありませんので、無理なく続けられる範囲で行ってください。また、適度に行っていても、翌日に痛みが増したのであれば、やや負荷量が大きすぎたといえます。また当然のことながら、体調が悪い時はお休みしてください。
編集部
膝痛がある人がやらない方が良いことはありますか?
竹内先生
怪我をした直後などもそうですが、炎症が起こっている時には、その部分や周囲を温めないでください。よく「温めるのと冷やすのと、どっちが良いのですか?」と聞かれることがあるのですが、痛い部分やその周囲を触ってみて、熱を持っているようでしたら、温めるよりアイシングをお勧めします。逆に、血流が悪くなったように冷たさを感じる時には、温めて血流を改善させてあげてください。運動の前などは、温めるのが良いでしょう。
編集部
生活動作などで注意した方が良いことはありますか?
竹内先生
正座や横すわりなどは、膝が大きく曲がるため、関節に負担がかかるだけでなく、立ち上がる際にも過度な荷重がかかります。無理には行わないでください。可能であれば、床生活ではなく、椅子に座る生活環境にしていきたいですね。また、膝が痛いときは走ったり、ジャンプしたりするのもできれば避けたほうが良いでしょう。
編集部
最後にMedical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
竹内先生
痛い時に無理に運動するのは、症状を悪化させてしまうリスクもありますが、だからといって安静にしすぎると太ったり、筋肉が落ちたりすることで、関節にさらなる負担をかけてしまいます。こういった悪循環を断ち切るためにも、ぜひ一度、運動療法に力を入れている整形外科に相談してみてください。症状に応じた治療だけではなく、運動の指導やセルフケアのアドバイスがもらえると思います。
編集部まとめ
膝が痛い時の運動方法やコツについて、お話を伺いました。無理をするのも良くないですが、安静にしすぎても良くないのですね。実際のエクササイズも教えていただいたので、痛みのある方はぜひ取り入れてみてください。
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