●フジテレビ美術のノウハウが詰まった大玉

お笑いコンビのかまいたちとチョコレートプラネットが、旅の道中で次々にイタズラを仕掛けられるフジテレビのバラエティ番組『イタズラジャーニー』(毎週土曜18:30〜 ※関東ローカル)。この『新春2時間SP』が、全国ネットのゴールデンタイムで、きょう7日(21:00〜)に放送される。

今や何本ものレギュラー番組を抱える売れっ子2組が、大玉をぶつけられ、激流下りに放たれ、ケツバットを受けるなど、毎回予想外の展開に襲われ、体を張る姿が見どころの1つだが、そのイタズラの仕掛けやロケの舞台裏はどうなっているのか。フジテレビの松本祐紀チーフプロデューサーに、昨今のバラエティを取り巻く環境への意識も含め、話を聞いた――。

(左から)長田庄平、松尾駿、山内健司、濱家隆一、渋谷凪咲 (C)フジテレビ

○■めちゃくちゃ暗いロケバス車内

毎回様々なイタズラを仕掛けられるため、この番組のロケではいつもテンションが低いかまいたちとチョコレートプラネット。それは芸人としての役割を超え、「本当に嫌がっていて、移動のロケバスの中でもずっと携帯いじって、めちゃくちゃ暗いんです」(松本CP、以下同)と、リアルな様子を明かす。

その中でモチベーションになっているのは、他のメンバーがイタズラに掛かったときの面白さで、「自分以外がイタズラを受けているときは、めっちゃうれしそうで、そのうれしさのためにやっているようなところがあります(笑)」とのこと。その関係性も「芸歴にそんなに差がないので、ちょうどいい掛け合いになって、いい2組だなと思います」といい、特にイタズラを事前に把握できる“透視チケット”を持つことによって起こる心理戦のトークは「抜群に面白いですね」と手応えを語る。

そこに、絶妙な立ち位置でツアーガイド役を務めるのが、NMB48の渋谷凪咲だ。彼女の魅力については、「もちろん大喜利力や瞬発力もあるのですが、ことこの番組に関して言うと笑顔がいいんですよね。みんなが嫌なイタズラを食らってるときに、あの笑顔って絶対ムカつくじゃないですか(笑)。だから渋谷さんにお願いしているのは、“そんなに進行進行しなくていいので、楽しんでください”ということ。そうすると、“楽しそうな渋谷、楽しくない4人”という対比で余計面白くなるんです」と話し、重要な役割を担っている。

(C)フジテレビ

○■ロケエリアの必須条件は「坂」

ロケ場所は、収録の2カ月前にエリアを選定。オープニングで転がってくる大玉を食らうのが恒例になっているため、「まずは坂があるところを探します。坂ありきの番組なので(笑)」と、番組特有のマスト条件が存在する。

この大玉は、「僕も1回シミュレーションで食らったのですが、マジでヤバいんです(笑)。玉自体は結構硬くて、落下スピードが速すぎるとケガをしてしまうし、威力が弱すぎても面白くない。だから、そのスピードや、クッションになるマットを敷くタイミングも含めて、何回もシミュレーションして、絶妙な塩梅を練っています」と、フジテレビの美術スタッフの技術が詰まっている。

美術進行のスタッフは『めちゃ×2イケてるッ!』を担当してきたベテランで、そのノウハウを継承。「仕掛けるイタズラは、やっぱりテレビじゃないとできない規模感というところも意識しています」と、こだわっているそうだ。





大玉を食らう山内健司 左から 特番1回目(21年11月21日放送)、レギュラー1回目(22年10月15日放送) (C)フジテレビ

イタズラを主に考えるのは、総合演出の池田哲也氏。AD時代は『めちゃイケ』で総監督の片岡飛鳥氏に育てられ、その後、ヒロミが大量のロケット花火を背負って噴射する企画で大やけどを負った『1or8』(フジ)や『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)の「言われてみれば見た事のないもの」シリーズなどで知られる遠藤達也氏のもとで経験を積んできたディレクターで、「ものの作り方が全く違う2人を師匠と仰いだことによって、ハイブリッドな新しいディレクター像になっている気がします」と評する。

●“痛みを伴う笑い”に対してのスタンスは…

松本祐紀チーフプロデューサー(左)

昨今はコンプライアンス遵守が叫ばれ、BPO青少年委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について見解を出すなど、体を張った笑いに対する見方が厳しくなっている風潮がある。そうした中で、どのようなスタンスで制作に臨んでいるのか。

「これは本当に難しいところなのですが、いきなりイタズラを食らうのではなく、例えば4つの箱のうちどれかにイタズラが詰まっていて、本人たちに選ぶ権利があり、そこでミスをすると何かしらを食らうという形にすることで、ギリギリセーフなのではないかと思っています」

また、BPOの見解を詳しく見ると、“他人の心身の痛みを嘲笑する”ことに対して懸念を示していることから、プレイヤー同士でイタズラを食らい合うことで、その構図を避けることを担保。「制作側から仕掛けることにプラスアルファして、“身代わりチケット”(=自分がイタズラの対象になった際、別の人に押しつけることができるアイテム)で4人がお互いに仕掛けるとか、誰かが誰かを陥れるといった感じも見ていただけると思います」と強調した。

総合演出の池田氏は、“自分の子どもが笑うかどうか”を一番のフィルターにしてイタズラを考えているといい、松本CPは「大玉を食らって『かわいそう』という方もいると思いますが、あれを見て笑う人が多いということは、やっぱりそこで成立しているんだろうと思います」と考えを披露。

その上で、「かまいたちさんとチョコプラさんのリアクション芸を見る番組でもあるから、嫌なリアクションができる程度のイタズラにしないと笑いが降ってこないので、制作側と演者側の“対決”でもあるんです。でも、本当に嫌すぎることをやらせるとイジメっぽくなってしまうので、そこのラインギリギリを攻めることが一番大事なところだと思っています」と意識を述べた。

(C)フジテレビ

○■『もしツア』後枠も「ほのぼの感は忘れました」

レギュラー枠の前番組は、週末の旅情報をしっかり盛り込んだ『もしもツアーズ』が放送されていただけに、「最初にレギュラー化の話が来たときに、やっぱり視聴習慣も考えて、情報みたいなものも入れたほうがいいかなと、少し思ったんです」という。しかし、編成などから「そんなことは求めないから、思い切り(笑いで)やってくれ」と言われ、「そのひと言で“ほのぼの感”を出そうという考えは忘れました(笑)」と割り切った。

「水族館でカワウソとじゃれ合ってるところもいいと思うんですけど、この番組に関して言うと『早くイタズラ来い』と思うじゃないですか(笑)。そういうリラックスする時間も大事なので作っていますけど、それはイタズラへの“振り”ですから」と、“笑いファースト”を貫いている。

それを踏まえ、今回のスペシャルについては、「番組史上最大規模の“逆バンジー”が出てきます。それと大玉に1つとんでもない仕掛けをしましたので、ぜひ楽しみにしていただければ」と予告。

ゲストには、MC業がメインで体を張る機会の少なくなったフットボールアワー・後藤輝基が登場しており、「こういうのを受けない人が食らってるのはやっぱり面白いので、みんなうれしそうでした(笑)。4人からすると大先輩ですが、このフィールドに来たからには同等という感じだったので、普段のスタジオトークの先輩後輩とは違うところが出ると思います」と、見どころを語っている。

●松本祐紀2022年に『ワンナイR&R』のADを担当。その後『クイズ!ヘキサゴンII』『はねるのトびら』などのディレクターを経て、『人志松本のすべらない話』『さまぁ〜ずの神ギ問』などのプロデューサーを務める。











































1月7日放送の『イタズラジャーニー新春2時間SP』より (C)フジテレビ