【漫画付き】喘息(ぜんそく)の治療はいつまで? 完治できる?
「治ったかな」と思えば、じきに再発することもあるぜんそく。その投薬治療に“終わり”はあるのでしょうか。この点について「草加きたやクリニック」の星加先生は、「症状で判断するのではなく、実感できない内部の炎症に着目してほしい」とのこと。いったい、どういう意味なのでしょうか。詳しい話を伺いました。
監修医師:
星加 義人(草加きたやクリニック 院長)
埼玉医科大学医学部卒業、順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了。東京厚生年金病院(現・独立行政法人地域医療機能推進機能東京新宿メディカルセンター)内科勤務、順天堂大学医学部附属順天堂医院呼吸器内科勤務、越谷市立病院呼吸器科医長就任などを経た2016年、埼玉県草加市に「草加きたやクリニック」開院。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会専門医。日本プライマリ・ケア連合学会、日本アレルギー学会、日本禁煙学会の各会所属。
原因が不明なことも多い慢性疾患
編集部
改めて「ぜんそく」とは、どんな病気なのでしょう?
星加先生
せきや気道の鳴る喘鳴(ぜんめい)などが続く病気です。原因としては気管支の炎症で、冷気やウイルスといった“外部刺激”を受けると、気道が狭まりやすいのです。したがって、この炎症を抑えることが治療の目的になります。
編集部
炎症と聞くと「気管支炎」を連想してしまいますが?
星加先生
「気管支炎」は気管支全体の炎症で、細菌やウイルスなどを原因とした「急性」であることがほとんど。感染症であるからには、完治が可能です。一方の「ぜんそく」は同じく気管支にできた炎症で、アレルギーや遺伝などのさまざまな要因を含み、かつ「慢性」です。いちどかかると、なかなか治りません。
編集部
ぜんそくの原因を特定して、廃除することはできないのですか?
星加先生
アレルギー性のぜんそくなら可能かもしれません。しかし、アレルギー性でないぜんそくも多く、その中には、原因不明のものが含まれます。したがって、完治が難しいんですね。
編集部
どのような人がかかりやすい病気なのでしょう?
星加先生
年齢や性別の傾向はありません。誰でも発症する可能性があります。ただし、「ペットを飼い始めたら、ぜんそくにかかった」場合は、おそらく、そのペットの毛などのアレルギーに原因があると思われます。先天的な要因に限らず、環境にも左右される病気ですね。
完治は困難、治療は一生、勝手な中断は禁物
編集部
「ぜんそく」は治るのでしょうか?
星加先生
残念ながら、「二度と再発しない完治」まで持っていくことは難しいでしょう。治療の目標は、「お薬を投与し続けて、症状のない人と同じように生活できること」となります。ちなみに炎症は、症状が治まっている段階でも起き続けています。炎症がそれ以上悪化しないように、お薬を使い続けないといけません。
編集部
治療に使うお薬の種類は?
星加先生
炎症を抑えるお薬として、吸入タイプのステロイド剤を用います。それでも症状が治まらないときは、気管支拡張剤を併用します。吸入ステロイド剤の登場により、ぜんそくでの死亡例はかなり減ってきました。
編集部
投薬治療は一生続くのでしょうか?
星加先生
基本的にそうなりますが、休薬できる可能性はあります。症状が3カ月から6カ月の間みられなければ、まず「減薬」し、その結果によって「休薬」します。ただし、炎症は依然として起きているはずなので、再発する場合もあれば、休薬を続けられる場合もあるでしょう。症状が年に1・2回程度なら、そのときだけ処方する進め方もありますし、患者さん次第ですね。
編集部
症状さえ軽ければ、自己判断による休薬をしてもいいのでしょうか?
星加先生
あまりお勧めできません。実際、自己判断による中断は後を絶たない状況です。ほとんどのケースで再発しますから、必ず医師の指示を受けてください。
編集部
ステロイドによる副作用が心配です。
星加先生
吸入タイプのお薬は気管支と肺にしか届いておらず、血中に入るステロイドの量も「ごくわずか」です。服用のステロイド剤と比べて、副作用リスクは“ほぼ”ありません。ただし、全くないとは言い切れませんので、吸入後は、お口をしっかりうがいしてください。
子どものぜんそくは、治ることもある
編集部
ぜんそくに大人と子どもの違いはありますか?
星加先生
お子さんのぜんそくは、その9割方がアレルギー性です。大人になって卵が食べられるようになるのと同様、約半数の方が自然に治っていきます。残りの半数は、大人になってもぜんそくが続きます。
編集部
治療方法や治療期間の違いはありますか?
星加先生
15歳までのお子さんの場合、吸入ステロイド剤の前に、抗アレルギー薬を処方することがあります。それ以外の違いはないはずです。休薬へのステップなども同様です。詳しくは、小児ぜんそくを扱う小児科の先生に確認するといいでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
星加先生
とにかく「勝手に治療をやめてしまわない」こと。「ぜんそくのお薬をどれくらいの期間、出し続けたか」というデータを見ると、1年経過の時点で、約13%にまで減っています。実に8割以上の方が、中断をしてしまっているということです。決して治ったわけではありませんので、お手数でも、お薬を使い続けてください。
編集部まとめ
ぜんそくは完治が難しい病気です。しかしお子さんのぜんそくは9割方がアレルギー性で治っていくこともあるようです。しかし、それ以外のぜんそくも多く、原因不明のものも多く、この場合完治は難しいとのこと。注意してほしいのは、お薬によって症状が消えたように見えても、水面下でくすぶり続けています。ぜんそくのお薬の目的は、症状を抑えることだけではありません。炎症を抑えることも含まれています。私たちが見逃しがちなのは、この「炎症を抑える」という部分でしょう。このことからも、症状が落ち着いたとしても自己判断による休薬などはせず、医師の指示に従ってください。