【闘病】風邪と診断された不調は「全身性エリテマトーデス」だった

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膠原病は皮膚や内臓の結合組織(膠原繊維など)に炎症や変性をきたし、様々な臓器に炎症を起こす疾患の総称です。今回は膠原病の1つである「全身性エリテマトーデス(SLE)」を発症しながらも、病気とともに日々を過ごしているMARIKO(仮称)さんに、発症からこれまでの治療の体験などについて話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。

体験者プロフィール:
MARIKOさん(仮称)

1979年生まれの女性。発病当時は小学6年生。ある日高熱に襲われ、近所のクリニックを受診するも風邪と診断を受ける。その後も高熱が下がらず、関節痛が歩行困難なほど強くなる。その後、総合病院で検査の結果、膠原病の疑いで専門病院を受診し「全身性エリテマトーデス(SLE)」の診断を受ける。現在もステロイドと免疫抑制剤での薬剤治療を行っている。体調に波はあるものの、普通の生活を送ることができている。

記事監修医師:
副島 裕太郎(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

「悔いのないように生きよう」心に決めた子どものころ

編集部

はじめに、全身性エリテマトーデスとはどのような病気なのでしょうか。

MARIKOさん

女性に多い膠原病の1つで、20~40代に多く発症します。症状は全身症状として発熱、全身の倦怠感、関節痛が起こり、指や肘・膝には関節炎も現れます。ほかにも皮膚症状として、両頬に蝶型紅斑(ちょうけいこうはん)と呼ばれる赤い発疹も特徴的な症状です。また、紫外線に当たると水疱(水ぶくれ)や発熱の原因にもなるため、外出時には帽子、マスク、日傘が欠かせません。内臓にも炎症が起こるので、全身のあらゆる臓器に症状が現れる病気です。

編集部

MARIKOさんの病気が判明した経緯を教えてもらえますか?

MARIKOさん

始まりは小学校6年生の頃、夏祭りに行ってたときに突然高熱が出たことからです。最初は近所のクリニックを受診しましたが、風邪という診断でした。ところが、その後も熱は下がらず、関節痛もひどくなり、歩くのも困難なほどになりました。皮膚症状の紅斑も出てきたので、大きな病院も受診したのですが、そこでも原因不明でした。4件目の膠原病の専門医がいる病院でようやく「全身性エリテマトーデス」と確定診断を受け、その後すぐに入院しました。

編集部

診断が確定した当時の心境についても教えてもらえますか?

MARIKOさん

当時はまだ子どもでしたから、病気そのものについてはよくわからず、入院することへの不安の方が大きかったです。心配したことも「友達ができるかな」とか「一人は怖いな」ということでした。そのおかげか病気を受け入れるまでも早くて、「長生きが出来そうにないなら、悔いのないように生きよう」と子どもながらに決意したことを覚えています。当時、医師からは5年生きられないかもしれないこと、月経が来ないかもしれないこと、成長が止まるかもしれないことなどの説明がありました。

編集部

治療はどのように進めることになったのですか?

MARIKOさん

当時はステロイドでの治療しか選択肢がなく、原因も不明で完治することはないと説明されました。病気の進行を把握し、どこに注意すべきかをはっきりさせるために、皮膚生検と腎生検も行いました。

編集部

治療を行うようになってからは、体調にどのような変化がありましたか?

MARIKOさん

入院してステロイド治療が始まってからは、苦しめられていた酷い関節痛も全身の紅斑もなくなり、とても元気になりました。ところが、一見元気になったように思えても、退院すると疲労感が強く、毎日ぐったりとしていました。ステロイドの副作用で視力もどんどん落ち、治療開始から1年後にはステロイド性白内障も発症しました。普通の日常を送ることができるようになった代わりに、筋力が落ちて疲れやすくなった感じがします。

編集部

今の生活でも注意していることがあれば教えてください。

MARIKOさん

生活の中で注意していることは、やはり徹底した紫外線対策と感染症対策です。外出の際は長袖、帽子、マスク、日傘は必ず着用しています。ほかにも人混みは避けること、スキーや海水浴は禁止、運動も禁止など色々な制限があります。

一緒に闘病した仲間が心の支えになった

編集部

治療は大変な経験だったと思いますが、心の支えになったものはなんですか?

MARIKOさん

闘病中は同じSLEの子、ほかの膠原病の子、白血病の子など色々な病気の子と出会いました。それぞれが悩みを抱えていて、辛い治療に耐えて頑張っている姿を見て、私も頑張ろうという気持ちになりました。そして、退院が決まればみんなで喜び、検査結果が良くなければお互いに励まし合う、一緒に闘病した大切な仲間が心の支えでした。

編集部

治療中に印象に残っていることはありますか?

MARIKOさん

決して忘れられないのは、大切な人達を失う辛さです。別れはどれだけ年齢を重ねても辛いものですが、私の中ではっきりと記憶に残っている出来事があります。それは入院中に白血病の友達が亡くなったことです。当時は10代前半の多感な時期でしたし、死を間近に感じたのも初めての出来事で、ひどく混乱して大泣きしたのを憶えています。

編集部

ほかにもご自身を揺るがす体験があったそうですね。

MARIKOさん

退院してから2年が経つ頃、最愛の父が突然亡くなり、ショックのあまりに高熱が出てしまい、何度も夜間救急を受診しました。この頃から、心理的に大きな出来事が身体に及ぼす影響について、自分の中で考えるようになりました。

編集部

病気について周囲から理解されないという体験もあったそうですね。

MARIKOさん

闘病生活が長いと、病気について理解されないことも多々ありました。例えば、友達が何かの病気だったとしても、その病気について詳しく調べようと思う方は少ないのではないかと思います。私の場合は小学生の頃に発病しましたが、全身性エリテマトーデスという病名や症状について、詳しく知っている友達はほとんどいませんでした。

編集部

見た目からは理解されにくい病気ですよね。

MARIKOさん

唯一詳しく調べてくれたのが主人でした。知り合った当時は全身性エリテマトーデス(SLE)については伝えていなかったのですが、自分のSNSを見た主人は病気のことで驚いたのと同時に、友人の看護師さんにSLEについて詳しく聴いてくれたそうです。それから仲良くなって、デートをする時も私の体調をいつも気遣ってくれました。自分の病気への理解者が近くにいると、とても心強く、安心できるということを主人は私に教えてくれました。今でも一番の理解者である主人には、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

少しずつでも自分の病気を知り、自分に合った生活スタイルで過ごすことが大切

編集部

現在の体調や生活について教えてください。

MARIKOさん

定期的な検査結果はあまり良くはないのですが、今のところ症状は頭痛と倦怠感くらいなので比較的落ち着いている状態です。頭痛が激しい時は身体からのSOSだと考えて、ゆっくり休むことにしています。また、大きなストレスを受けると心因性の失声症になることがあるのですが、最近は落ち着いています。生活でも専業主婦で体調に合わせて生活することができています。動けるときにはハンドメイドや読書、ゲームなどを楽しんでいます。最近は料理も上達したいと頑張っています。

編集部

現在の生活で大事にしていることはどのようなことですか?

MARIKOさん

ストレスが身体に影響しやすいので、ストレスフリーな生活を心掛けています。私にとって大事なことは、「美味しいものを食べて、たくさん笑うこと」です。そして家族と過ごす時間も何よりも大事です。母は私のことを子どもの頃から支えてくれて、主人は大人になってからの私の変化を知って支えてくれています。2人とも私にとっていつも隣にいてくれる心強い存在です。もし昔の自分に声を掛けるとしたら、辛いことも沢山待っているけど、自分らしく進めば素敵な未来が待っていると伝えたいです。

編集部

医療や治療に関して医療従事者に伝えたいことはありますか?

MARIKOさん

治療を続けていると、主治医によって治療方針がバラバラなことが少し気掛かりです。私はこれまでステロイドを慎重に減量する医師、ステロイドは身体に悪いからと新薬を使用する医師など、色々な医師に出会いました。医師によって説明内容も変わります。SLEは症状が多岐にわたるから仕方がないと思う反面、統一できる部分は統一してほしいと思います。

編集部

同じ病で闘う方に伝えたいことを教えてください。

MARIKOさん

難病や膠原病と聞くと、やはり不安が大きいのではないかと思います。ステロイドへの恐怖から薬を飲むのが嫌になったり、副作用でムーンフェイスや脱毛などが起こったり、見た目が変わってしまったりすることも大きな悩みの種です。現代医療は私が治療を始めた頃に比べると、ステロイドの減量もかなり早くなっています。ステロイドさえ減量できれば、副作用は次第に落ち着いてくるはずです。あまり怖がらず、悲観せず、少しずつ自分の病気を知り、身体と向き合い、自分に合った生活スタイルで過ごしてほしいと伝えたいです。

編集部

最後に読者へのメッセージもお願いします。

MARIKOさん

難病、膠原病、闘病中などの言葉は、ともするとマイナスイメージがあるかもしれません。実際に私も、可哀想だと言われたこともありますし、嫌なことも沢山ありました。それでも、ひとつずつ壁を乗り越えて、強くなっていけば、経験値が上がっていきます。いつか、「そんなこともあったね」と笑って言えるようになっている自分がいるはずです。今大変な思いをされている方も、いつか笑って話せる日が来ることを願っています。

編集部まとめ

全身性エリテマトーデスは日本だけでも6万人を超える患者がおり、患者の約9割は女性です。多くの方はMARIKOさんと同じように、風邪のような初期症状から始まり、関節痛、皮膚症状へと広がっていきます。悪化すると全身の臓器にも炎症を引き起こし、耐え難い苦痛に襲われます。最近は新型コロナウイルスの問題もあって、発熱などの症状には過敏になっていることと思います。初期は識別が難しい症状ですが、特徴的な症状は関節痛や蝶型紅斑などです。普通の風邪とは違うと感じたら、膠原病などの専門医を受診しましょう。自分だけではなく身近な人にも疑われる症状が見られた時は、受診を勧めるとともに辛い気持ちに寄り添ってあげてください。

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