「低用量ピルの処方」の流れはご存知ですか?医師が監修!
近年「低用量ピル」がオンライン処方で受け取れるようになり、徐々にその理解も広まってきました。
ピルには生理不順の改善や肌荒れ防止など、色々な効果が期待されます。以前は様々な誤解があったり処方に手間がかかったりしていたピルですが、今では常備薬のひとつとしている方もいるほどです。
ですが未だに、詳しい情報を知らないために恩恵を受けられないでいる方がいるのも事実です。
今回の記事ではピルの種類・処方の流れ・保険の適用範囲などに加え、よくある質問もまとめて解説していきます。
低用量ピルとは
日本でピルと呼ばれるのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)や卵胞ホルモン(エストロゲン)といった女性ホルモンを含有した錠剤のことです。
本来は女性の体内で生成されるホルモンを外から摂取することにより、ホルモンバランスの乱れによる様々な不調を整える効果があります。
基本的には1ヶ月単位で毎日服用することとされており、排卵調整の効果があるため避妊用としても使われます。
ピルは卵胞ホルモンの含有量により高用量・中用量・低用量・超低用量に分かれているのも特徴です。中でも低用量ピルは、生理不順の改善や避妊などの目的でよく用いられます。
低用量ピルは何科で処方される?
低用量ピルはドラッグストアなどで市販されているわけではないため、医師の診察を受けた上で処方してもらう必要があります。
基本的には婦人科で処方してもらうことが多い薬ですが、実はそれ以外の方法でも処方は可能です。ここでは、婦人科とそれ以外での処方をそれぞれ解説いたします。
ピルの処方で病院へ行くのが恥ずかしいという場合や近所にクリニックがないという場合には、婦人科以外での処方を検討してみてもよいでしょう。
婦人科
低用量ピルは女性特有の体の特徴に関する薬のため、やはり婦人科での診察・処方が基本です。
通常であれば簡単な問診と血圧・身長・体重の測定だけで処方を受けることができます。ただし、原因のわからない不正出血のある場合には内診を行うこともあるので注意しましょう。
また、低用量ピルの服用中は子宮頸がんなどの予防のために定期的な検査が推奨されています。
その場合にはほかの科では対応できないため、検査を受ける場合には初めから婦人科を受診するのがおすすめです。
婦人科以外
不正出血などがなく、問診や簡単な測定のみでピルの処方を受けられる場合には内科などを受診しても構いません。
また最近では、婦人科に行くのが恥ずかしいという若い女性や急いで処方を受けたい方などのために、オンライン診療を通したピルの処方も行われています。
専門のサイトや各婦人科のホームページなどから診療を受けることができます。
ただし持病や病歴のある方、そのほか気になる不調のある方などは必ず婦人科の専門医に相談の上、処方を受けるようにしてください。
低用量ピルの処方の流れ
続いて、医療機関で低用量ピルを処方してもらう際の大まかな流れをご紹介いたします。
オンラインではスマホやパソコン上で完結することもできますが、実際に病院へ行く際は何をするのか気になるという方もいるでしょう。
もちろん、オンライン診療でも基本的な問診内容や説明などは同じように行われます。ここでは処方の流れの一例として、大筋を確認しておきましょう。
問診
どんな用事で病院にかかった際も同じですが、はじめに基本的な身体情報や体調などを確認する問診が行われます。
ここで血圧や身長体重などの値もあわせて記録・記載されます。
病歴や常備薬などのよくある項目のほか、ピル処方の場合は用途や希望の効果・月経周期なども聞かれるのが特徴です。
ピルの説明
問診や簡単な身体検査を行い処方するピルが決定したら、医師から薬について詳しい説明があります。
ここで注意しておきたいのは、服用方法や効果以外に「副作用」「注意点」をよく聞いておく必要があるということです。
詳しくはこの記事の後半で解説しますが、ホルモン剤である低用量ピルには副作用が付き物です。個人差のある部分ですが、いざというときに慌てないためよく聞いておきましょう。
また、ピルの服用中にやってはいけないことや飲んではいけない薬も存在しています。
きちんと望んだ効果を得るために、わからないことは質問するなどして詳細を把握するように努めましょう。
場合によっては定期処方に
毎月の生理周期を整えるためなどで継続してピルを服用する場合は、初めの処方から続けて定期処方にしてもらうことも可能です。
何度も検査を受け直す必要がないため、飲み続けることが決まっている方は定期処方にしてもらうとよいでしょう。
定期処方の場合には半年や1年に1度、何か変わったことがないか定期検診を受けることもできます。通常の診察よりも低価格であったり、無料の場合もあるためぜひ活用していくとよいでしょう。
保険適用のピル・適用外のピルの違い
医療機関で処方される薬品であるピルですが、実は保険適用のものと保険適用外のものがあることをご存じでしょうか。
ここでは保険適用・適用外のピルの違いや種類について簡単にご紹介していきましょう。通常病院で処方してもらえるピルには、大まかに以下の3種類の呼び名があります。
保険適用のピル
保険適用外のピル
経口避妊薬ピル
保険適用のピルは、月経困難症や子宮内膜症などの治療を目的として服用する場合に処方されます。婦人科の専門医の診察を受け、必要と判断された場合に出されるものです。
保険適用外のピルは、避妊・生理周期の調整・肌荒れ対策などで服用を希望する場合に処方されます。医師の判断した治療を目的としているわけではないため、保険適用外となります。
また、「経口避妊薬ピル(OC)」という呼び方をされる場合もありますが、これは「保険適用外ピル」とほぼ同じ意味です。病気の治療ではなく避妊目的であるという意味で、こう呼ばれる場合もあります。
実際に医療機関を受診して診察を受ければ、処方の前にどちらを使用すべきか教えてもらえるはずです。
事前に知識を身につけておくことは大切ですが、基本的には医師の指示に従って処方を受けるようにしましょう。
低用量ピルの副作用・リスク
低用量ピルは常備薬として毎日服用する方もいる薬ですが、多少なりとも副作用やリスクは存在しています。
特にピルの服用を始めたばかりの頃は、ホルモンバランスが急激に変化することで様々な症状が出る可能性があるため注意が必要です。
代表的な症状としては以下のようなものが挙げられます。
軽い吐き気
眠気
下腹部痛
軽微な不正出血
胸の張り
むくみ・体重の増加
軽いうつや落ち込み
これらはホルモンバランスの乱れによって現れる典型的な症状で、低用量ピルの服用に際して起こった場合には1~3ヶ月ほどで収まるといわれています。
ただし症状が重く、体調や生活に大きく影響を及ぼすようであれば直ちに医師に相談するようにしてください。
またピルの継続的な服用によって子宮頸がんや不妊のリスクが高まるといわれたこともありますが、これらは現在では否定されています。
むしろピルによって排卵周期を整え子宮の負担を減らすことで、様々な病気の予防にも期待ができます。
まずはクリニックなどで説明を聞き、誤解なく薬を有効活用できるように心がけることが大切です。
低用量ピルの処方に関するよくあるQ&A
最後に、低用量ピルに関してよくある質問を3つご紹介します。もし気になっていた方は、ぜひ参考にしてみてください。
疑問や勘違いをそのままにしておくと、後から大きな問題に発展する場合もあります。特に医薬品の世界では、何より正確な情報が不可欠です。
ここに書かれているもの以外にも、気になることがあれば積極的に医師に相談するようにしておくとよいでしょう。
オンライン処方などを行なっているところでも、よくある質問コーナーや問い合わせフォームがあることがほとんどです。ぜひ活用していきましょう。
処方してもらえる年齢は何歳から何歳ぐらいまでですか?
よく、未成年でもピルを処方してもらえるのかという質問があります。未成年でも、初潮を迎えてから6ヶ月以上経っていればピルを処方することができます。
またピルは排卵を抑制することによって効果を得る薬のため、一般的には閉経後は使用しません。
詳しい年齢は個人差があるため確定はできませんが、ピルのことを知り、使用したいと考える方であればほとんどの方が使用できる年齢ではないでしょうか。
生理中に処方を希望してもいいのでしょうか?
低用量ピルの処方には、特に決まった診察時期などはありません。
むしろ生理周期の調整のためなどに処方を希望する際は、ずらしたい生理のひとつ前の生理のタイミングで受診するのがちょうどいい場合もあります。
ただし、特に気になることや症状があって内診を希望する際などには医師の指示に従うようにしてください。
低用量ピルと一緒に飲んではいけない薬があると聞きました
低用量ピルをはじめとしたホルモン剤は、特定の薬品や化学物質と同時に摂取すると思わぬ副作用が出る場合があります。
様々な種類・注意点があることを覚えておきましょう。代表的な分類と薬の種類は以下の通りです。
【ピルと同時に飲んではいけない薬】
ヴィキラックス配合錠(C型肝炎の薬)
【ピルの効果を減退させる薬】
抗生物質
抗てんかん薬
精神刺激薬
抗結核薬
抗HIV薬
【ピルの効果を増強させる薬】
解熱鎮痛薬
抗真菌薬
【ピルによって効果が減退する薬】
血糖降下薬
モルヒネ
解熱鎮痛薬
【ピルによって効果が増強する薬】
副腎皮質ステロイド
三環系うつ剤
免疫抑制剤
例え効果が減退・増強することで都合がいいとしても、むやみに上記の薬と飲み合わせることは控えてください思わぬリスクや副作用の原因となります。
また上記以外にも注意を要する薬はあるため、普段から飲んでいる薬などは必ず医師に申告するようにしましょう。
編集部まとめ
今回は低用量ピルの処方や副作用などの注意点について、医療機関を受診する場合のことを中心に解説してきました。
女性特有の悩みを大きく改善してくれる低用量ピルは、日常生活や将来設計にあたってはとても便利な薬です。最近ではインターネット上での処方なども始まり、より身近なものになっています。
これはどんな薬に対してもいえることですが、普段から常備薬とするような方もいる一方で、間違った使い方をすれば体に悪影響を及ぼすことをよく覚えておかなくてはいけません。
何か悩みがある際は、まずはクリニックなどで専門医に相談してみることを最優先にしてください。情報収集は大切ですが、専門家以外では判断できないことも多い分野です。
正しく知識をつけ、正しく医療機関を利用して健康的な生活を心がけるようにしましょう。
参考文献
低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤のガイドライン作成小委員会)