「不眠症」になる原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

写真拡大 (全5枚)

眠りたいのに眠れない、そんな日は誰にでもあるかと思います。しかし、その状態が数日続き、日常生活に支障をきたす場合は不眠症を疑った方がいいかもしれません。

日本人を対象とした調査によると、日本人の5人に1人が睡眠に何らかの問題を抱えていると回答しているそうです。

また、加齢とともに不眠は増加するといわれており、60歳以上の約3人に1人が睡眠に悩んでいるという調査結果もあります。

今回は身近な病気である不眠症について解説します。毎日を健康に過ごすためにも大切な睡眠について、一緒に考えてみましょう。

不眠症の症状と原因

不眠症はどんな病気ですか?

不眠症とは、なかなか寝付けない・途中で目が覚めてしまうなどの問題が生じることで、日中に倦怠感や意欲低下など不調をきたす状態を指します。週に3回以上の不眠状態が1ヶ月を超える長期間にわたって続き、日中に精神や体の不調が現れた場合は不眠症を疑った方がいいでしょう。
なお、日本人の睡眠時間の平均は約7時間といわれていますが、それより睡眠時間が短いからといって不安になる必要はありません。睡眠時間の長さには個人差があるため、睡眠時間が短くても体調に問題がなければ不眠症には該当しませんのでご安心ください。時間の長さよりも、睡眠が原因で日中に支障をきたしているかどうかに重きを置いて考える必要があります。

不眠症の原因はなんですか?

不眠症が発症する主な原因は大きく5つに分けられます。

環境要因:旅先など普段と異なる環境の問題

身体要因:年齢・性差・痛みなど身体の問題

心の要因:ストレス・睡眠に対するこだわりなど心の問題

生活習慣要因:アルコール・ニコチン・カフェイン・薬の副作用などの生活習慣の問題

精神疾患:うつ病の初期症状や躁状態

不眠症をもたらした原因によって対処が異なるため、なぜ発症したのか原因を突き詰める必要があります。例えば、不眠症だと思い込んでいたら、うつ病を疾患していたというケースもあるため原因の見極めにも注意が必要です。
また、不眠が続くと「早く眠らないと」と焦って余計眠れなくなってしまう不眠恐怖が生じてしまう場合があります。不眠恐怖によって不眠が一過性のものではなくなってしまうこともあるため、いつもの睡眠に変化を感じたら早めに対策した方が良いでしょう。

不眠症になりやすい人の特徴を教えて下さい。

普段からストレスを感じやすい真面目な性格の人は、不眠にこだわることによって不眠症になりやすいです。また、下記の病気も不眠に影響するといわれています。

胸苦しさ:高血圧や心臓病

咳や発作:呼吸器疾患

頻尿:腎臓病や前立腺肥大

痛み:糖尿病や関節リウマチ

かゆみ:アレルギー疾患

脳出血や脳梗塞

睡眠時無呼吸症候群

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

持病がある場合は先に治療し、その後で不眠を解消しましょう。

不眠症は生活にどんな影響を与えますか?

不眠症による問題は精神的なものから肉体的なものまで多岐に渡ります。

倦怠感

意欲低下

集中力・記憶力の低下

抑うつ

日中の眠気

頭痛

めまい

食欲不振

仕事中や運転中のトラブル

睡眠に対する不安

以上のような症状が考えられます。仕事でのミスや運転中の事故など周囲を巻き込むトラブルに発展する場合もありますので、不眠症かもと思ったら早めに対処することをおすすめします。

不眠症の診断と治療法

不眠症の種類について教えて下さい。

不眠症は大きく4つのパターンに分けられます。

入眠困難:寝つきが悪く、30分から1時間程度眠りにつけない

中途覚醒:睡眠の途中で何度も目が覚めてしまう

早朝覚醒:予定していた起床時間よりも早く目が覚めてしまう

熟眠障害:十分に眠っても満足感がない

また、複数の症状が複合的に現れることもあります。なお、加齢とともに不眠症の発症率が上がり、特に中途覚醒と早朝覚醒が増えるといわれています。

不眠症のチェック方法を教えて下さい。

下記に当てはまる場合、不眠症の疑いがあります。

寝つくまで時間がかかるようになった

睡眠が浅く、起床するまでに何度か目が覚めてしまう

望んでいないのに朝早く目覚めてしまい、その後寝つけない

眠っているものの、十分眠った感じがしない

寝不足が原因で、落ち込んだり、ストレスを感じる

寝不足が原因で、集中力散漫や記憶力の低下を感じる

寝不足が原因で、頭痛・肩こり・胃痛を感じる

日中に眠気が襲う

また眠れないのではないかと心配になる

疲れやすく、やる気が出ない

複数当てはまる方もいらっしゃるかもしれません。症状が深刻になる前に、後ほどご紹介する予防法を試していただくか、お近くの病院での診察をご検討ください。

不眠症はどのような検査を行いますか?

不眠症治療は基本的には精神科や心療内科での扱いとなります。検査内容としては以下のようなものが挙げられます。

血液検査

心電図検査

頭部画像検査(MRIなど)

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)

反復睡眠時測定検査(MSLT検査):日中にどの程度眠気が強いかを測定する検査

例えば終夜睡眠ポリグラフ検査は、センサーを着けて一晩眠ることで、睡眠の深さや質・呼吸状態・寝相などを検査する方法です。

どのような治療法がありますか?

不眠症の治療としては以下のような方法が挙げられます。

睡眠薬を用いた薬物療法

睡眠衛生指導

認知行動療法

特に薬物治療が一般的です。「睡眠薬は一度使うと手放せなくなる」「副作用が怖い」といったイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、近年では自然に近い睡眠を促し、副作用が少ないものが広く扱われていますのでご安心ください。
また、睡眠衛生指導は睡眠の質改善のための指導を指します。認知行動療法は眠たくなったときにだけ寝室へ行く、眠れなければ別の部屋へ移動するなどの刺激制御法や、昼寝禁止や床上時間にルールを設ける睡眠制限法などを用いて不眠症を改善に導きます。

再発の可能性はありますか?

慢性的な不眠症の場合、約半数は再発するといわれています。再発すると長期的に高容量の睡眠薬を服用することになるため、治療中に不眠症の原因を追求し改善する必要があります。

不眠症の予防法

不眠症の予防法を教えて下さい。

不眠症は毎日のちょっとした習慣を変えることで予防することができます。

少し汗ばむ程度の適度な運動を行う

早朝に太陽の光を浴びる

絨毯やカーテンの交換・ドアの戸締まり・空調の調整などで環境を変える

規則正しい食生活をおくる

就寝前に水分を取りすぎない

就寝4時間前以降のカフェイン摂取を控える

就寝前の飲酒や喫煙を控える

布団のなかで考え事をしない

起床・就寝時間を固定し、体内時計を整える

睡眠時間の目標を立てない

趣味や友人との交流などでストレスを解消する

寝る前にぬるめのお風呂に浸かる

また、眠れないときに無理して布団のなかに入ることは控えましょう。眠くなったら眠る、眠れなければ布団から出るなど睡眠を意識しすぎないことも大切です。どうしても日中眠たくなってしまう場合は、お昼に15分程度の仮眠をとることも脳の疲労回復に効果的です。ぜひ簡単な予防法から取り入れて、不眠症を予防してくださいね。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

毎晩欠かせない睡眠だからこそ、不眠に悩まされてしまうと精神的・肉体的にも苦痛が伴います。また、眠れないことに悩むことこそが不眠をさらに悪化させたり、鬱やストレス性疾患などの別の病気を発症させたりすることもあります。まずは不眠症の簡単な予防方法から試してみて、それでも改善が見込めない場合はお気軽に専門医にご相談ください。

編集部まとめ


今回は身近な病気でもある不眠症について解説しました。不眠症に罹ってしまうと日常生活の様々な場面で支障をきたしてしまうため、たかが睡眠と甘くみてはいけません。

しかし、早朝に太陽の光を浴びたり、ぬるめの湯船に浸かったりするなど普段の生活のなかに予防法を取り入れることで不眠症に罹りにくくすることは可能です。

もし少しでも睡眠に異常を感じたら、今回ご紹介した予防法を行ったり、かかりつけ医に相談したりするなどの対処を行ってくださいね。

参考文献

不眠症(e-ヘルスネット)