花粉症対策の薬はどれがいい? いつから始めるべき?

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毎年、決まった時期にやってくる花粉症。その推定有病率は年々増加の傾向にあり、もはや現代病と言っても過言ではないでしょう。そんな花粉症に有効な対策を、耳鼻咽喉科のドクターに取材しました。なかじまクリニックの中島規幸院長に解説していただきます。

監修医師:
中島 規幸(なかじまクリニック 院長)

昭和大学医学部卒業。獨協医科大学越谷病院耳鼻咽喉科入局、同局の助教も努める。その後、東埼玉総合病院耳鼻咽喉科医長に就任。2014年、埼玉県さいたま市になかじまクリニック開院。2017年には医療法人三優会なかじまクリニック設立。おもに首より上の領域を中心とした地域医療を提供し続けている。医学博士、日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本アレルギー学会、耳鼻咽喉科臨床学会、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会、ほか参加学会多数。

即効性があるのは、ステロイド点鼻薬

編集部

ズバリ、先生がお勧めする花粉症の市販薬はどれでしょう?

中島先生

ステロイド点鼻薬がいいですね。液体の入っているボトルの先端を鼻の中に入れて、スプレーのように吹きつけるタイプのものです。のみ薬よりも早く効きます。のみ薬のほうが使いやすいという方は、第二世代の抗ヒスタミン薬がいいと思います。

編集部

薬にも世代があるのですね?

中島先生

はい。1983年以降に登場した抗ヒスタミン薬を第二世代と呼びます。人気のある「アレグラ」や「アレジオン」も第二世代に含まれ、医療用と同じ成分なのが特徴です。お薬として良いものですが、古い部類に入ります。処方箋が必要な新しい薬は市販薬としてでることはありません。

編集部

市販薬を使い始めるタイミングは?

中島先生

花粉の飛んでくる1週間から2週間くらい前が有効とされています。症状がピークにならないうちにお薬で防いでしまうわけです。こうした方法を「初期療法」といいます。インターネットなどで「花粉カレンダー」を調べれば、それぞれの花粉に対する時期的な目安が付くのではないでしょうか。

編集部

スギ花粉のように数か月飛んでいるものもありますが?

中島先生

そのような場合は、ご自身の症状に合わせてみるのも方法です。毎年3月の中旬ころに悩まされるのであれば、3月の初めからお薬を使いはじめるといった具合ですね。もし、花粉の種類やピークのタイミングが分からなかったら、耳鼻咽喉科などで検査してもらいましょう。簡単なテストで判明します。

編集部

「薬が効かない」という声も良く耳にしますが?

中島先生

そうなんです。「効く/効かない」のほか、「眠くなる/眠くならない」といった、お薬との相性があります。自分に合った薬と1回で出会えるとは限らないんですね。ですから、医院で処方する場合は、少しずつ小出しにしています。そして、効き目がなかったら別の種類へ変えてみるのです。はじめて花粉症対策を検討している方は、少し早めに開始しましょう。

薬が苦手という人に向けた花粉症対策

編集部

薬以外にも花粉症対策はあるのでしょうか?

中島先生

医院によっては「舌下免疫療法」を扱っています。舌の下にアレルギーの元となる物質を薄めて置いておき、2分したら飲みこむという方法です。いわば、体をアレルゲンに慣れさせていくのです。

編集部

舌下免疫療法は、誰でも受けられるのですか?

中島先生

スギ花粉とダニのアレルギーに限られます。また、すでに発症していることが条件になります。治療期間が3年ほど続きますので、長期戦で臨みましょう。その代わり効果が現れれば、お薬に頼らない生活も不可能ではありません。

編集部

手術などで「花粉を感じなくする」ことはできないのでしょうか?

中島先生

鼻の中に通る神経を切除したり、鼻の粘膜を焼いたりすることはできます。ただ、いったん施すと元に戻せないんですよね。年を取ってから口や鼻が乾きすぎることも考えられますし、手術はあくまで最終手段です。

花粉症の正体を知る

編集部

そもそも花粉症とは、どのような状態のことをいうのでしょう?

中島先生

花粉の刺激に対する過度な反応で、ヒスタミンなどの化学物質が分泌されることにより、鼻水、くしゃみ、涙、目のかゆみなどを伴います。お薬の目的は、ヒスタミンなど炎症をひきおこす働きを抑えることです。

編集部

なる人とならない人がいるのは、どうしてですか?

中島先生

花粉にさらされることを「暴露」というのですが、どの量まで暴露に耐えられるのかが人によって違うのです。このことを、バケツに例えることがあります。バケツからあふれたときが発症したときなので、鼻水などの諸症状はいきなり現れます。このバケツの大きさは人それぞれで、あふれるまでその大きさを知ることはできません。

編集部

先ほどの「舌下免疫療法」は、バケツを満たしてしまわないのでしょうか?

中島先生

その心配はありません。「舌下免疫療法」の場合、アレルゲンを体内に直接取り入れるので、暴露とは異なったプロセスです。安心してください。

編集部

年によって、花粉の感じ方が違うような気がするのですが?

中島先生

ヒスタミンの分泌量は、ストレスや思い込みなどによっても変わるからです。体調がいいと、花粉を感じないこともあります。もちろん、花粉そのものの飛散量も関係しているでしょう。

編集部

あるときから、別の花粉症に悩まされることはあるのですか?

中島先生

もちろんです。花粉の種類ごとに別のバケツがあります。フラワーショップで働いている人やガーデニングが好きな人は、常にいろいろなバケツを満たしているのでは。不安でしたら、パッチテストによる検査を受けてみてください。

編集部

いったん花粉症にかかると、もう治らないのでしょうか?

中島先生

まれにですけど、治る人がいます。原因はわかっていないものの、食物アレルギーなどでも散見されますよね。大人になったら卵が食べられるようになったとか。一方、先に紹介した手術は、治すためのものではなく、症状を出なくするための方法です。

編集部

花粉症と間違えやすい疾患は何ですか?

中島先生

代表的なのは、ウイルス性の鼻かぜです。間違えて花粉症の市販薬をのんでいても害はありません。かぜなので自然に治るから「効いた」と思うかもしれませんが、実際は別の話です。現実問題として、みなさん忙しくて、受診していられないと思います。花粉症の薬であれば、間違っていたとしても危険性はないですし、結果として治るならいいのかなと考えています。

編集部まとめ

花粉症の薬には相性がある。だから「薬が効かない」ケースを見かけるのですね。これは発見でした。医院で本格的に花粉症対策へ取り組むのであれば、症状がピークを迎える1カ月くらい前から相談してみてはいかがでしょうか。そのうえで、自分に合った方法を選択してください。