中国では記事作成でも「ゼロコロナ政策」が続いており、新型コロナウイルスの感染が確認された地域では一定期間の封鎖(ロックダウン)が実施されています。このゼロコロナ政策に対して不満を持った人々によって「天安門事件以来」とも言われる大規模な抗議活動が中国各地で行われているのですが、抗議活動では「意見や要求を記した紙」ではなく「何も記されていない白紙」が大量に掲げられています。

New Symbol of Protest in China Roils Censors: Blank White Papers - WSJ

https://www.wsj.com/articles/new-symbol-of-protest-in-china-roils-censors-blank-white-papers-11669642676

2022年11月にウイグル自治区の集合住宅で火災が発生した際には、厳格なゼロコロナ政策によるロックダウンの影響で逃げ遅れたと見られる複数人の住民が亡くなりました。この事件を切っ掛けに中国ではゼロコロナ政策の見直しを求める声が急速に拡大し、北京や上海などの中国各地で政府に対する大規模な抗議活動が行われる事態に発展しています。

インターネット上には抗議活動の様子を撮影した写真や映像が数多く投稿されています。一般的にデモや抗議活動では主張を記した紙や看板が掲げられますが、中国で行われている抗議活動では「白紙」が掲げられていることが話題となっています。

白紙を掲げる抗議活動参加者を撮影した写真が以下。A4コピー用紙のような白紙を掲げる人もいれば、白いマスクや布を掲げている人もいます。





精華大学で行われている抗議活動の映像にも、多くの人々が白紙を掲げながら声を挙げている様子が収められています。BBCの中国特派員であるスティーブン・マクダネル氏によると、白紙を掲げる行為には「何も書いていない紙を掲げているだけなのに、私を逮捕する気ですか?」といった規制当局に対する挑戦の意味も含まれているとのこと。





また、ウォール・ストリート・ジャーナルの中国特派員であるリザ・リン氏は、中国の大規模SNS「WeChat(微信)」では「白紙」という単語で検索しても抗議活動に関するコンテンツが表示されず、「Zhihu(知乎)」などのサービスでは「白紙」に関する検索結果がまるごと削除されていることを報告しています。





上記のように、中国ではインターネット上の投稿が厳しく検閲されており、インターネットを介して抗議の意志を共有することは困難です。このため、中国ではインターネットを介さずに情報を共有する手段としてiPhoneなどのApple製品に搭載されている短距離無線通信機能「AirDrop」が広く用いられていました。しかし、2022年11月9日にリリースされたiOS16.1.1では「AirDropを誰からでも受信できる機能」に10分間の時間制限が中国でのみ設けられました。この変更によって中国では抗議活動に関する情報の共有が一層困難になった可能性が指摘されています。