皆既月食&天王星食を振り返り。国立天文台が画像と動画を公開
【▲ 2022年11月8日19時59分に撮影された、食の最大を迎えた皆既月食。撮影:長山省吾さん(Credit: 国立天文台)】
2022年11月8日の夜は皆既月食がありました。国内で観測できる皆既月食としては2021年5月26日以来およそ1年半ぶりでしたが、今回は皆既食中の月が天王星を隠す天王星食も同時に起きたことから注目を集めました。そんな2022年の皆既月食&天王星食の画像と動画が、国立天文台から早速公開されています。
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冒頭に掲載したのは、東京都の国立天文台三鷹キャンパスで撮影された皆既月食です。今回の皆既月食では、月全体が地球の本影に入る皆既食が19時16分から20時42分まで86分間続きました。冒頭の画像は食の最大を迎えた11月8日19時59分に、口径12cmの屈折望遠鏡を使って撮影されたものです。
【▲ 参考画像:皆既食中の月が赤く見える理由を示した図(Credit: 国立天文台)】
地球の影に入った月は真っ暗になってしまうわけではなく、地球の大気で屈折した太陽光によって照らされます。大気を通過した太陽光は青い光が散乱して赤い光が残るため、画像の月は暗い赤色に見えています。
続いては、皆既食が終わった後の11月8日21時15分に撮影された部分食中の月です。国立天文台によると、この段階では本影から出た部分と、まだ本影に隠れている部分で輝度の差が大きく、双眼鏡を通して見た印象に近い画像を1回の撮影で得ることができないことから、露出を変えた5枚の画像を合成することで作成されています。
【▲ 2022年11月8日21時15分に撮影された部分食中の月。露出が異なる5枚の画像をHDR合成したもの。撮影:長山省吾さん(Credit: 国立天文台)】
明るい部分と暗い部分の境界をよく見ると、ほんのりと帯状に青色がかっていることがわかります。この青い帯は「ターコイズフリンジ(turquoise fringe)」と呼ばれています。
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前述のように皆既食中の月は、地球の大気で青い光が散乱した後の太陽光に照らされるため、赤色に見えます。ところが、成層圏のオゾン層では赤い光のほうが吸収されて青い光が通過するため、このように本影に入っている赤い部分を縁取るような青い帯、すなわちターコイズフリンジが現れるのです。
【▲ 2022年11月8日20時37分に撮影された、皆既月食と天王星。撮影:長山省吾さん(Credit: 国立天文台)】
最後は、皆既食が終わりつつある11月8日20時37分に撮影された画像です。月の左側に写っている矢印で示された青い光点は天王星です。
月が惑星を隠す「惑星食」そのものは決してめずらしい現象ではなく、2022年では5月27日に金星食、7月22日に火星食が起きています。しかし、月食と惑星食が同時に起きるのはめずらしいことで、日本で“皆既食中”の惑星食を観測できるのは1580年7月の土星食以来442年ぶり、“月食中”まで範囲を広げても2014年10月の天王星食以来8年ぶりのことでした。次に日本で見られる月食中の月による惑星食は、322年後の2344年7月26日に起きる皆既食中の土星食までありません。
国立天文台が公開しているこちらのダイジェスト動画では、月食全体の様子だけでなく、三鷹キャンパスにある口径50cmの公開望遠鏡を使ってクローズアップ撮影された、天王星の潜入および出現の様子を見ることができます。
【▲ 皆既月食および天王星の潜入・出現の様子】
(Credit: 国立天文台)
皆既月食と重なったことから特に注目を集めた今回の天王星食ですが、天王星の明るさは条件の良い空でも肉眼で見える限界の約6等級で、国立天文台は双眼鏡や望遠鏡の使用を勧めていました。
皆既月食はその目で見たりスマートフォンなどで撮影したりできたものの、天王星食までは見えなかった……という人も多いのではないでしょうか。是非こちらの動画で、赤銅色の月に天王星が隠れていく様子をお楽しみ下さい。
なお、国立天文台によれば、次に日本全国で見られる皆既月食は3年後の2025年9月8日、2時30分から3時53分にかけて起こるとのこと。早起き(あるいは夜更かし)が大変そうな時間帯ですが、こちらも楽しみです。
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Image Credit: 国立天文台国立天文台 - 国立天文台が撮影した2022年11月8日の皆既月食と天王星食
文/sorae編集部