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6位 テスラ・モデル3 最も一緒に暮らしやすい

現時点で最も一緒に暮らしやすいバッテリーEV(BEV)という審査なら、テスラ・モデル3はベストだったかもしれない。エネルギー効率は高く、航続距離は長い。シートは座り心地が良く、乗り心地も優しく、静かに安楽に移動できる。

【画像】いま運転の楽しいEVは? テスラ・モデル3 アウディRS eトロンGT クプラ・ボーン 全107枚

さらにテスラ社が展開する急速充電器網、スーパーチャージャー・ネットワークは拡大を続け、英国なら近場で短時間にバッテリーを満たせる。インフラという面でも心強い。


テスラ・モデル3 RWD(英国仕様)

ところが、運転の楽しさでは伸び悩む。大きなセンターモニターでゲームを楽しめたり、ちょっとした悪戯もできるが、それらは今回の評価軸とは違う場所にある。英国編集部員の誰もが、手短に試乗を終えモデル3から降りていた。

ステアリングホイールの反応はクイックながら、手のひらへ伝わってくる感触は極めて薄い。それが、滑らかなコーナリングを難しくしている。

縁石へ乗り上げたり、左足でブレーキペダルを踏むようなことをすると、トラクション・コントロールが容赦なく介入し、すべてを抑え込む。意欲的に走りたいという気持ちも、抑えられてしまう。

モデル3は後輪駆動で、回頭性は充分に鋭い。優れたドライバーズカーになりそうな素質を備えているものの、テスラはそこへ視点を向けていない。むしろ、ドライバーの気持ちを遠ざけているように感じられた。 Illya Verpraet(イリヤ・バプラート)

5位 アウディRS eトロンGT シリアスな能力

通常のアウディeトロン GTではなく、こちらはRS eトロンGT。シリアスな能力の持ち主だ。大きな駆動用バッテリーを搭載した、軽くないサルーンでありながら走りは鋭い。

フロントに238ps、リアに455psの駆動用モーターを搭載。フィアット500eが130km/hくらいで全力疾走するクロフト・サーキットのストレートで、RS eトロンGTは190km/h以上まで加速する。


アウディ eトロンGT(英国仕様)

ただし、評価するのは加速力だけではない。ステアリングやブレーキなどを含めた操縦性や挙動も重要といえる。しかし、RS eトロンGTはポルシェ・タイカンと多くを共有し、この面でもアドバンテージを備えている。

タイカンより操舵感の軽いステアリングは滑らかに反応し、コーナリング時の姿勢はフラット。ブレーキペダルの感触は踏み始めで若干曖昧ながら、それを過ぎればダイレクト感が増し強力に効く。スピードはあっという間に熱と電気エネルギーへ変換される。

横方向のグリップも高く、コーナリングスピードの遅いクルマでは2つに分かれる連続コーナーを、流暢に踊るように抜けていける。操る楽しさがある。

ステアリングホイールへはフィードバックが余り伝わらないものの、アウディのRSと呼ぶのにふさわしいBEVだ。フィーリングはやや淡白ながら、スーパーサルーンとしての能力は高く、サーキットでも動的能力を発揮できる。

洗練性も秀逸といえ、エンジンやサウンドがなくても、満たされるドライビング体験が得られることを証明した。車格に見合った豪華なインテリアも魅力。ボディカラーも美しかった。 Matt Prior(マット・プライヤー)

4位 クプラ・ボーン 往年のホットハッチのよう

BEVがひしめくクロフト・サーキットのピットレーンで、やや控えめに主張するクプラ・ボーン。日本では馴染みが薄いものの、そんな見た目に騙されないで欲しい。

往年のホットハッチのようにヘアピンカーブへ食らいつき、変化するバンク角を物ともせず、縁石をかすめながら鋭く走る。その楽しさは、誰の目にも明らかだった。


クプラ・ボーン 77kWh eブーストV3(英国仕様)

ボーンは高速コーナーでボディを穏やかに傾けながら、疾走する。充分なグリップ力を発揮し、ドライバーへ余計な不安を与えることもない。小気味よくシケインを抜け、ストレートではターボエンジンのホットハッチに負けない勢いで加速する。

フロントへ荷重を掛けることで、普段以上にタイトに旋回させることもできる。右から左へ、面白いように向きを変える。

ボーンには驚くほどパワフルな駆動用モーターが載っているわけでもなく、知的なスタビリティ・コントロールが実装されているわけでもない。しかし後輪駆動で、コーナーの途中でアクセルペダルを加減すれば、ライン調整も可能だった。

費用対効果で1番楽しめるBEV

間違いなく運転が楽しいBEVといえる。ドライバーズカーと表現していい、魂を宿している。筆者としては、上位3位へ食い込めなかたことが残念なほど。

グリップ力は高く、不足ない動力性能を備え、自在に振り回せるシャシーチューニングが施されている。積極的に運転するほど、ボーンにも活気が満ちてくる。BEVらしい滑らかな加速が、ドライバーの気持ちを邪魔することもない。


クプラ・ボーン 77kWh eブーストV3(英国仕様)

費用対効果で1番楽しめるBEVを選ぶなら、クプラ・ボーンが受賞できていただろう。来年はその賞を設定しても良さそうだ。 Matt Saunders(マット・ソーンダース)

テスラ・モデル3とアウディ eトロンGT、クプラ・ボーンのスペック

テスラ・モデル3 RWD(英国仕様)のスペック

価格:4万8490ポンド(約800万円)
全長:4694mm
全幅:1850mm
全高:1443mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:6.1秒
航続距離:490km
電費:7.0km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1847kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:57kWh(実容量/予想)
最高出力:243ps(予想)
最大トルク:42.6kg-m(予想)
ギアボックス:シングルスピード

アウディ eトロンGT(英国仕様)のスペック

価格:11万4285ポンド(約1885万円)
全長:4989mm
全幅:1964mm
全高:1413mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.3秒
航続距離:455km
電費:4.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2347kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
バッテリー:83.7kWh(実容量)
最高出力:598ps/646ps(オーバーブースト時)
最大トルク:84.4kg-m(オーバーブースト時)
ギアボックス:シングルスピード

クプラ・ボーン 77kWh eブーストV3(英国仕様)のスペック


英国編集部が選ぶ2022年のドライバーズEV 審査試乗の様子

英国価格:4万1975ポンド(約692万円)
全長:4322mm
全幅:1809mm
全高:1537mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.0秒
航続距離:495-552km
電費:5.7-6.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1946kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:77kW(実容量)
最高出力:230ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:シングルスピード

続く上位3位の評価は(4)にて