掲載:THE FIRST TIMES

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相変わらず1位をひた走る「新時代」をはじめ(この曲はもはや“今年の一曲”の地位を盤石にした感もありますね)、今月も5曲をAdoの楽曲が占めた10代トレンドチャート。

【なとり「Overdose」MVを元記事で視聴する】

またまた定番の顔ぶれ…と思いきや、9月のチャートは上位陣にちょっとした変化がありましたので、まずはそのあたりの話からどうぞ。

■新星の登場とダメ押しヒット

今月2位にランクインしたのがなとり「Overdose」。TikTokでの盛り上がりを背景に、本チャートでも躍進しました。現状“19歳のシンガーソングライター”という以外に目立った情報はありませんが、ダンサブルなビートとクールなボーカルが魅力的な楽曲の力で一気に若者の支持を集めました。

TikTokというプラットフォームにはいまだ毀誉褒貶がありますが、短い時間でアテンションをとらないといけないこの仕組みは、時として“感情の動きが濃密に凝縮された強い楽曲”を生み出します。

昨年12月の原稿でも触れた通り、Saucy Dog「シンデレラボーイ」のヒットなどはまさにこういう時代のムードとリンクした結果とも言えると思いますが、おしゃれな空気の中にある絶妙にリアルな瞬間を切り取った「Overdose」にもそんな流れに乗っていきそうなポテンシャルを感じます(“解像度の悪い夢を見たい”というフレーズ、めっちゃくちゃ今時っぽいうえに生々しい…)。

なとりのような新星の動きのいっぽうで、すでに人気者としての地位を確立しつつある中でダメ押しとなりそうな楽曲を繰り出してきたのがTani Yuuki。3位で引き続き踏ん張る「W/X/Y」に加えて、今月は「もう一度」が5位にランクインしました。

「W/X/Y」とも重なるリズムやフロウを持つ「もう一度」ですが、楽曲全体としてのトーンはより壮大なものになっています。自身のヒット曲を援用してリスナーにとっての聴きやすい部分を作ったうえで、曲としてのメッセージをさらに大きなものに引き上げる、という手法は同じ曲が長くヒットする今の時代だからこそ機能するように思います。

チャート上位の楽曲として「W/X/Y」と「もう一度」を並べて聴いて、その違いや共通点に感じ入るリスナーも多いのではないでしょうか。

「Overdose」「もう一度」ともに、楽曲の魅力と合わせて今の時代のメディア環境をうまくキャッチしてのヒットでした。次月以降も注目です。

■最近のトレンドとオリジネイター

26位にランクインした都識(としき)の「君がいない世界」。てらいのないバンドサウンドとまっすぐなメロディ、“君と一緒にいた日々は 毎日、毎日楽しかった”という歌詞など、シンプルの極みともいうべき楽曲ですが、こういう普遍的な感情を普遍的な形で届ける曲がチャート上位にくるのも最近のトレンドです。

以前、本連載で紹介したきゃない「バニラ」や有華「Partner」、そして今回の「君がいない世界」のようなシンプルな感情を吐露する楽曲は、J-POPのメインストリームのいくつかのアーティストに源流を見出すことができますが、そのひとつが16位に「ベルベットの詩」をランクインさせたback number。

映画『アキラとあきら』の主題歌となっているこの曲は、清水依与吏の情熱的なボーカルとそれを引き立たせるバンドサウンドのバランスが絶妙で、“あるがままの姿で 自分のままで生きさせて”といった歌詞も強く響きます。

今回の楽曲は、トリッキーな手法に頼ることなくバンドサウンドと飾り気のない言葉のかけ合わせで長い間人気を集めている彼らだからこそできる、まさに横綱相撲です。

わかりやすいメッセージの楽曲が若者に聴かれるのはいつの時代も同じですが、最近のチャートではそういった楽曲の強さが改めて増しているようにも感じます。

まだまだこの流れがしばらく続くのか、それともここに対する反動のようなものがそろそろ出てくるのか。個人的には後者のチャレンジを期待したいところですが…。

以上、9月のLINE MUSIC『10代トレンドランキング』についてお届けしました。来月のチャートもどんな動きがあるのか楽しみです!

TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)

【2022年9月 LINE MUSIC 10代トレンドランキング】

01.「新時代」Ado
02.「Overdose」なとり
03.「W/X/Y」Tani Yuuki
04.「私は最強」Ado
05.「もう一度」Tani Yuuki
06.「逆光」Ado
07.「死ぬのがいいわ」藤井 風
08.「ウタカタララバイ」Ado
09.「風のゆくえ」Ado
10.「ダンスホール」Mrs. GREEN APPLE
11.「Tot Musica」Ado
12.「栄光の扉」平井 大
13.「左右盲」ヨルシカ
14.「愛とか恋とか」Novelbright
15.「After LIKE」IVE
16.「ベルベットの詩」back number
17.「恋だろ」wacci
18.「青と夏」Mrs. GREEN APPLE
19.「DIE (feat. KZHI)」KOTA
20.「Habit」SEKAI NO OWARI
21.「Crayon」ZOT on the WAVE & Fuji Taito
22.「ミックスナッツ」Official髭男dism
23.「Start Over」THE BEAT GARDEN
24.「世界のつづき」Ado
25.「Talk that Talk」TWICE
26.「君がいない世界」都識
27.「melt bitter」さとうもか
28.「Pink Venom」BLACKPINK
29.「魔法にかけられて」Saucy Dog
30.「結」Saucy Dog
31.「愛言葉」Tani Yuuki
32.「Yessir (feat. Eric.B.Jr.)」Yellow Bucks
33.「エジソン」水曜日のカンパネラ
34.「Phone」HITOMIN
35.「バニラ」きゃない
36.「シンデレラボーイ」Saucy Dog
37.「韻波句徒」CHEHON
38.「チグハグ」THE SUPER FRUIT
39.「POP!」NAYEON
40.「Hanabi」Louis Vision, Kaikun & 三浦ひな子
41.「おかえり」Tani Yuuki
42.「ねぇ」YOAKE
43.「いつか」Saucy Dog
44.「BANANA」CREAM
45.「Talking Box (Dirty Pop Remix)」WurtS
46.「グッドな音楽を」ねぐせ。
47.「ブルーアンビエンス (feat. asmi)」Mrs. GREEN APPLE
48.「XOXO (feat. SPRITE)」Repezen Foxx
49.「Two as One」Kis-My-Ft2
50.「それを愛と呼ぶなら」Uru
51.「3636」あいみょん
52.「Hype Boy」NewJeans
53.「なんでもないよ、」マカロニえんぴつ
54.「BONBON GiRL」SARM
55.「花の塔」さユり
56.「雨燦々」King Gnu
57.「泣きたい夜」AYANE
58.「ビンクスの酒」Ado
59.「怪獣の花唄」Vaundy
60.「あぁ、もう。」Saucy Dog
61.「Celebrate」TWICE
62.「今更だって僕は言うかな」Saucy Dog
63.「堕天」Creepy Nuts
64.「NIGHT DANCER」imase
65.「おにごっこ」優里
66.「未来図」マルシィ
67.「愛を伝えたいだとか」あいみょん
68.「I'm a mess」MY FIRST STORY
69.「napori」Vaundy
70.「レオ」優里
71.「ドライフラワー」優里
72.「チカラノカギリ」GENERATIONS from EXILE TRIBE
73.「ベテルギウス」優里
74.「君の隣で。」りりあ。
75.「YOKAZE」変態紳士クラブ
76.「Bad Decisions」benny blanco, BTS, Snoop Dogg
77.「優しさに溢れた世界で」Saucy Dog
78.「スターマイン」Da-iCE
79.「ただ声一つ」ロクデナシ
80.「スパークル」幾田りら
81.「Wing Wing」Kep1er
82.「カラノココロ (Matt Cab & MATZ Remix)」Anly
83.「Wherever you are」ONE OK ROCK
84.「水平線」back number
85.「Shut Down」BLACKPINK
86.「Attention」NewJeans
87.「Y (Please Tell Me Why)」Freestyle
88.「恋人ごっこ」マカロニえんぴつ
89.「Cookie」NewJeans
90.「mabataki」Vaundy
91.「888月 ~夏にも程がある~」リサイタルズ
92.「チノカテ」ヨルシカ
93.「VERY NICE」Seventeen
94.「ブルーベリー・ナイツ」マカロニえんぴつ
95.「君じゃない誰かの愛し方 (Ring)」TOMORROW X TOGETHER
96.「Never Grow Up」ちゃんみな
97.「花束」back number
98.「姿」あいみょん
99.「DICE」NMIXX
100.「Cinema (feat. Memento Mori & 武蔵)」O.A.KLAY