星の最期を伝える16万光年先の超新星残骸、ハッブルとチャンドラが観測
【▲ 超新星残骸「SNR 0519-69.0」(Credit: X-ray: NASA/CXC/GSFC/B. J. Williams et al.; Optical: NASA/ESA/STScI)】
こちらは「かじき座」にある超新星残骸「SNR 0519-69.0」(以下「SNR 0519」)です。SNR 0519は、約16万光年先にある天の川銀河の伴銀河(衛星銀河)のひとつ「大マゼラン雲」(LMC:Large Magellanic Cloud、大マゼラン銀河とも)にあります。
超新星残骸とは、重い恒星などによる超新星爆発が起きた後に観測される天体のこと。超新星爆発にともなって発生した衝撃波が周囲へ広がってガスを加熱することで、可視光線やX線といった電磁波が放射されています。SNR 0519を形成した超新星爆発の光は、今から約670年前の14世紀頃に地球へ到達したと推定されています。
この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡とX線観測衛星「チャンドラ」を使って取得された画像をもとに作成されました。画像の幅は約88光年に相当します。人の目では捉えることができないX線のデータも含まれているため、ハッブルのデータは赤と白、チャンドラのデータはX線のエネルギーが低いほうから順に緑・青・紫で着色されています。
スミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターによると、この超新星残骸は白色矮星で起こる「Ia型超新星」によって形成されたと考えられています。白色矮星は、単独では超新星爆発を起こさない太陽のような軽い星が、恒星としての死を迎えた後に進化した天体です。Ia型超新星は、白色矮星の質量が増えて太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に達した時に起きるとされています。どうして白色矮星の質量が増えるのかについては、白色矮星とともに連星をなす恒星から流れ出たガスが降り積もるか、あるいは白色矮星どうしの合体が理由だと考えられています。
冒頭の画像はアメリカ航空宇宙局(NASA)やチャンドラX線センターから2022年9月12日付で公開されています。
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Image Credit: X-ray: NASA/CXC/GSFC/B. J. Williams et al.; Optical: NASA/ESA/STScINASA - Setting the Clock on a Stellar ExplosionチャンドラX線センター - SNR 0519-69.0: Setting the Clock on a Stellar Explosion
文/松村武宏