【▲ NASAの新型ロケット「SLS」初号機。現地時間2022年8月30日撮影(Credit: NASA/Joel Kowsky)】


アメリカ航空宇宙局(NASA)は日本時間9月13日朝、延期されている「アルテミス1」ミッションの打ち上げに関する情報を更新しました。ケネディ宇宙センター39B射点からの新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」初号機の打ち上げは、日本時間9月28日以降に予定されています。


NASA主導の月面探査計画「アルテミス」最初のミッションとなるアルテミス1は、NASAが開発したSLSおよび新型有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の無人飛行試験にあたります。SLS初号機で打ち上げられたオリオンは月周辺を飛行した後、打ち上げから4〜6週間ほど後に地球へ帰還する予定です。なお、SLS初号機には日本の「OMOTENASHI」と「EQUULEUS」など10機の小型探査機も相乗りしています。


当初、SLS初号機は米国東部夏時間2022年8月29日(日本時間同日)に打ち上げられる予定でしたが、SLSのコアステージ(第1段)に4基搭載されている液体燃料ロケットエンジン「RS-25」の1基を始動前の目標温度まで冷却できなかったために延期。5日後の米国東部夏時間2022年9月3日(日本時間9月4日)にも打ち上げが試みられたものの、一部の配管で断続的に発生した液体水素漏れを止めることができず、再び延期されていました。


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【▲ 動作テスト時に撮影されたテールサービスマストアンビリカル(TSMU)。手前側が液体水素用のTSMUで、クイックディスコネクトは配管やケーブルが集中しているトラス構造の先端(画像の白いプレート状の部分)と、SLSコアステージのエンジンセクションを接続するインターフェースを指す。現地時間2019年6月19日撮影(Credit: NASA/Ben Smegelsky)】


NASAによると、水素漏れは発射台基部の「テールサービスマストアンビリカル」(TSMU:Tail Service Mast Umbilicals)とコアステージのエンジンセクションをつなぐ「クイックディスコネクト」(Quick Disconnect)と呼ばれるインターフェースで発生しました。TSMUは打ち上げ前のエンジンセクションに推進剤の配管や電気配線を接続するためのもので、液体酸素用と液体水素用の合計2基が並んで設置されています。


TSMUからの水素漏れは、2022年4月と6月に実施された打ち上げリハーサルでも確認されています。リハーサル後にSLSと移動式発射台がロケット組立棟(VAB)へ戻された時にクイックディスコネクトのシール(密封装置)が交換されましたが、8月29日の打ち上げカウントダウンの際にも一時クイックディスコネクトからの水素漏れが発生していました。NASAは9月3日の打ち上げ延期後に改めてコアステージ側のシールを交換しており、極低温推進剤の充填テストを9月21日以降に実施することが計画されています。



【▲ SLS初号機組み立て後に実施されたテールサービスマストアンビリカル(TSMU)などの動作テストの様子(動画)】
(Credit: NASA)


日本時間9月13日朝にNASAが発表した最新のスケジュールによれば、SLS初号機は米国東部夏時間2022年9月27日11時37分(日本時間9月28日0時37分)から70分間のウィンドウで打ち上げられる予定です。また、バックアップとして米国東部夏時間2022年10月2日14時52分(日本時間10月3日3時52分)から109分間の打ち上げウィンドウも検討中とされています。


なお、ケネディ宇宙センターでは有人宇宙船「クルードラゴン」エンデュランス号による「Crew-5」ミッションの打ち上げが米国東部夏時間2022年10月3日12時45分(日本時間10月4日1時45分)に39A射点で予定されており、状況次第ではアルテミス1の打ち上げがCrew-5の後にずれ込む可能性もあります。


 


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Image Credit: NASA/Joel KowskyNASA - NASA Adjusts Dates for Artemis I Cryogenic Demonstration Test and Launch; Progress at Pad Continues

文/松村武宏