見どころたくさん!電気通信の歴史が楽しく学べるNTTの博物館「門司電気通信レトロ館」へ行ってみた(後編)【レポート】
電話の歴史や関連技術がいっぱいの門司電気通信レトロ館レポート後半! |
今日における我々の生活の中で当たり前に存在し、使われているスマートフォン(スマホ)や携帯電話(ケータイ)。
現在では簡単に持ち歩きができる非常に身近な道具として特に意識することなく使っていると思います。ですが、そんなスマホやケータイも立派な電話機であり、その歴史は結構長いものとなっており、それを振り返るのも楽しいものです。
○日本の公衆電話の移り変わり
NTTのレトロ調公衆電話機(日本通信機器製)
現在では携帯電話などの普及により設置台数が少なくなってきているものの、災害時などの緊急時にはなくてはならない存在でもある公衆電話の展示を紹介していきます。
上記の画像のレトロ調公衆電話機は1990年台に生産されたもので、アンティーク調のデザインのものとして販売されていたので、喫茶店やホテルなど現在でも稼働しているところがあるかもしれません。
34号磁石式 公衆電話機(製造年月日不明)
こちらは、公衆電話でありながらお金を入れるところのない公衆電話機で、いわゆる「赤電話」と呼ばれる「委託公衆電話」に区分される公衆電話の初期のモデルになります。駅の売店や個人商店、たばこ屋などに設置され、利用した分だけ電電公社の委託を受けたお店の人へ利用料を払うという仕組みでした。
5号 自動式卓上公衆電話機(画像=左)と45号A 硬貨式卓上公衆電話機(画像=右)
昭和30年台初期に登場した赤電話の系列の公衆電話機で、お馴染みの10円玉硬貨を入れて通話するタイプです。ちなみに現在の公衆電話には必ず実装されている「緊急連絡通話用のボタン」がまだ搭載されていません。
「100円卓上プッシュ式公衆電話機」
委託公衆電話機の100円玉が利用できるようになったものです。この頃の公衆電話になると緊急通話ボタンが搭載され、警察や消防へ通報する際に硬貨を投入することなく利用できるようになっています。
「100円卓上式公衆電話」(画像左側がダイヤル式で右側がプッシュ式)
お釣りは出ませんが長時間の通話の際に手間にならない100円硬貨が使えるようになった卓上公衆電話機です。色も赤から黄色へ変わりました。(この辺りで、「赤電話」という言葉が死語となっていきました)
特に右側のプッシュ式の方は平成になってから誕生したモデルなので、見覚えのある人も多いのではないでしょうか?
プッシュ式100円公衆電話機
こちらは電話ボックス用の公衆電話機で、昭和50年台に登場したものです。これ以前の電話ボックス用公衆電話機には本体色が青いものや緑色のものもありました。
「デジタル公衆電話機」
音声通話の他にISDNによるネット接続機能を搭載した公衆電話機で、本体下部にある通信端子にノートPCやPDAなどを繋いでインターネットを利用することができました。
ISDNによるネット接続サービスは現在でも対応の公衆電話機から利用可能でスマホやタブレット、モバイル回線対応PCが普及している中、少数ながら今でも利用されることがあるそうです。
特殊簡易公衆電話機(ピンク電話)
「ピンク電話」の愛称のこの電話機は「特殊簡易委託公衆電話」と分類される公衆電話機で、NTT(電電公社)からの委託で設置される赤電話や電話ボックスの公衆電話(委託公衆電話)とは違い、設置する場所の管理者側(喫茶店や病院など)が施設の利用者向けに設置をNTT側に申し出て設置されます。
この電話機に関していえば、一般的な卓上固定電話機に硬貨を入れる穴とお金の返却口がついただけのような姿をしています。
「テレホンカード専用ピンク電話機」
平成になって登場したテレホンカード専用のピンク電話機です。現在でも稀に稼働しているのを見かけると思います。
新時代のピンク電話機
こちらも平成になって登場したピンク電話機(既にピンク色ではないですが)で、オプションにコードレス子機が用意されたほか、(店舗の電話としてかかってくることもあるため)ナンバーディスプレイや保留、短縮ダイヤル機能などを搭載しています。
上記のテレホンカード専用のものと併せて現在でもピンク電話機としては見かけることの多いモデルです。
昔の電話ボックス
現在の電話ボックスは天井以外はガラス張りの見通しの良いものですが、当時は木造やバラック製のものだったためか、そうでもないようです。
上段の2つは明治時代に。下段の3つは昭和に入ってからの電話ボックスになります。明治時代の電話ボックスには「公衆電話」ではなく、「自動電話」と書かれています。
館内には現行の公衆電話の実際に利用できるサンプルモデルが展示されており、実際に「公衆電話をつかって電話をかける」練習ができます。
災害時や通信トラブルなどが発生した際に、スマホや携帯電話に慣れて、公衆電話の使い方がわからないということがないための啓蒙も行っています。
館内に置かれている練習用の公衆電話機
公衆電話の使い方を説明したポップ
○変わった・珍しい電話機
いわゆる変態端末と呼ばれる珍しい・変わった機能の端末は電話機は公衆電話や固定電話機にもいくつかあり、館内に展示されていた変わり種の電話機を紹介します。
「ボースホン電話機」(岩崎通信機製)
受話器が一つにダイヤルが2つという奇っ怪な姿の固定電話機で、向かい合わせに座ったデスク真ん中に置いてどちらからでもすぐに発信ができる、というもので、解説のポップに書かれているように、実際に昭和後期頃まで活用している企業があったようです。
「デュエットホン」
電話開業100周年を記念して製作された限定モデルの公衆電話機で、デュエットフォン側の2名と相手側1名の3人で同時に通話ができるというものです。なんと現行モデルであり、現在でも国内に数台のみ実際に稼働しているということです。
「ICカード専用公衆電話」
1999年3月に生まれて2006年の3月に撤去という非常に短命だった公衆電話機で、当時、テレホンカードの変造が問題になっていたことからセキュリティ性を高めたものとして登場しました。しかし、この頃には携帯電話やPHSが普及に入ってきていたこともあったほか、従来のテレホンカードや硬貨も使えないことからか、早々に姿を消しました。
「ウッドホン ふるさとの声」(NTT製)
1980年台にNTTが販売していた固定電話機で、600型電話機の機能をオール木製ボディに閉じ込めて、ちょっとした小物を入れるのに便利な引き出しを搭載したNTT自らが販売した変わり種固定電話機です。館内には実際に触ってデモンストレーション用の電話を掛けられる実機が展示されていました。
それなりに売れていたようで、今でもオークションサイトなどで時折、見つかることがあるので気になった方は入手してみるのもいいかもしれません。
○携帯電話の移り変わり
それでは、いよいよ携帯電話の移り変わりを画像で展示するコーナーの紹介です。懐かしいものから、つい最近のものまでが数多く展示されていました。ショルダーフォン(社外兼用自動車電話)
「自動車電話を持ち歩けるようにした」というコンセプトの文字通り、肩からかけて携帯する電話機で、重量が約3kgと非常に重たいものでした。
ポケットベル
NTTから登場した最初のポケットベルは昭和52年と上記のショルダーホンよりもさらに前に登場しています。個人向けのポケットベルサービスは2019年まで続いていましたが、「文字を送る」というサービスは防災・自治体向けなどに形を変えて続いています。
NTTパーソナルのPHS(パルディオ)
自動車電話ではなく、家庭用電話機の子機からの発展という通常の携帯電話とは異なる出自をもつPHSは「NTTパーソナル」(後にドコモへサービス継承)が展開していました。
ドラえもんとコラボした「ドラえホン」や腕時計型電話機「WRISTOMO」などの個性的な端末は大きな話題となり、その後、NTTパーソナルのPHSはNTTドコモへサービス移譲後、2008年にサービスを終了しています。(ワイモバイル(旧ウィルコム)が提供していたPHSの公衆サービスは2021年まででした)
日本初の携帯電話1号(TZ-802)
昭和62年に誕生した日本第一号の携帯電話として登場したのがこちらの「TZ-802」で、まだ重量は約900gと重めではありましたが、持ち歩き用のカバンに入れておける、電話機として大きな存在となる1台。
「mova」の携帯電話機
1991年にアナログmova、1993年にデジタルmovaとして登場した第二世代(いわゆる「2G」)の携帯電話シリーズです。特にデジタルmova以降は付加価値的な機能も搭載され始め、1999年には「iモード」のサービスが開始されていきます。
「iモード対応のmova携帯電話」
「FOMA」の端末。各社から個性的な端末が多数登場した。
2001年にはW-CDMAの第三世代(3G)携帯電話「FOMA」が登場。多くのメーカーから個性あふれる端末たちが登場しました。
そして2005年、モトローラ製のNTTドコモ向けスマートフォン第一号として「M1000」が登場し、スマートフォンの時代へと突入していきます。
携帯電話の移り変わりの展示の一番最後にあったスマートフォン(とタブレット)。この先にはどんなガジェットが並ぶことになるんでしょうね?
○そのほかの展示
門司電気通信レトロ館にはここまで紹介してきたもののほかにも数多くの展示があり、その全てを紹介しきることはとてもできそうにありませんので、最後にちょっとだけ紹介しきれていないものをいくつかお見せします。「電話加入者人名表」、日本で最初の電話帳で、いわゆる「ハローページ」のご先祖様
「自動電話交換機」過去には手作業で行っていた電話接続作業を自動化したもの。本機の誕生をもって電話交換手という職業は姿を消すこととなった。
テレホンカードの展示。一時期はお土産の定番でもあったため、様々なデザインのものが存在しました。
大正時代の電話工事技術者が作業する際に着ていた半纏(はんてん)。
電信柱の電線についている「接続端子函」。電話線を建物に引き込んだり分岐したりするのに利用します。現在でも見かけることは少なくないものです。
これらの他にも、電報を打つためのタイプライターやモールス信号機に船舶電話など紹介しきれない展示物がもりだくさんです。
また、団体での見学予約のグループや特定のイベント時には普段は公開されていないエリアへのツアーなどもあり、まさに「NTT(電電公社)がこれまで提供してきた電気通信の歴史」をたっぷりと楽しむことができる博物館となっています。
入場料も無料なので、福岡の北九州市へ訪れることがあれば、是非行ってみましょう!
○最後の最後に
最後にもう一つだけ。門司電気通信レトロ館の外。通り沿いのところに、初期のものを再現した電話ボックスがあり、実際に利用することができます。(ボックス内に設置されている公衆電話機は現行モデルのものですが)明治時代後半頃のものを再現した電話ボックス
中の電話機は現行モデルです。
中々に写真映えもするので、是非こちらも見てみてくださいね。
【門司電気通信レトロ館】
〇アクセス
・鉄道:JR九州鹿児島本線 門司港駅から徒歩で約10分
・車:九州自動車道 門司港ICから車で約5分(駐車場あり)
〇開館時間
・午前9:00〜午後17:00
〇休館日
・12月29日〜1月3日、および毎週月曜日(月曜日が祭日の場合翌日休館)
記事執筆:河童丸
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