性能もデザインも満点! 「生活の核」となってくれる新MacBook Air
Appleは日本時間2022年7月15日、同社で最も人気のあるノート型コンピュータ「MacBook Air」の新モデルを発売。価格は最小構成で税込16万4800円から。今回は、この新モデルのファーストインプレッションをお届けする。
現代のニーズに応えるコンピュータ
新MacBook Airに触れて、筆者は「これまで以上に幅広い層の人におすすめできる1台に仕上がっている」と確信した。
最大18時間のムービー再生時間という脅威のバッテリー持続時間、そしてWEB会議やオンライン授業が当たり前となった時代にふさわしい高画質のWEBカメラの搭載という、現代のニーズをしっかり押さえた仕様は、ビジネスや学習の相棒としてより長く付き合える存在となっている。
加えて、高度なビデオ編集も難なくこなすパフォーマンスは、ビジネスや家庭用のユーザーだけでなく、Macでゲームを楽しみたい人、ビデオ編集も快適に行いたいという人にも最適。まさに多くの人にとって「生活の核」となる1台だ。
また、デザインに関しても完全にリニューアルされた。カラーバリエーションにおいては定番の「シルバー」と「スペースグレイ」に加え、シャンパンゴールドのような明るい輝きを持つ「スターライト」、青みがかった黒が印象的な「ミッドナイト」と、全4色から自分なりの色を選ぶことができる。
バッテリー管理からの解放
新MacBook Airの注目すべきポイントは、大きく分けて2つ。1つ目は第2世代のAppleシリコン「M2」を搭載したこと。2つ目が、完全に新しくなったデザインだ。
Appleシリコンとは、Appleが自社で設計するチップのことで、iPhoneやiPad、Apple Watchに続いて、2020年からMacにも採用され始めた。「省電力性とハイパフォーマンスを両立する」というモバイルデバイスの設計思想がノート型PCやデスクトップ型PCにも持ち込まれており、少ない電力で高い性能を発揮できる。
例えば、M2搭載の新MacBook Airは、2021年まで販売されていたIntel Core i9搭載の27インチiMacと同等の処理性能を誇る。27インチiMacは、Macのラインアップの中でも「プロ向け」と位置づけられるモデルで、よりハイエンド向けであるMac Proを除けば、従来最も性能が高い製品だった。今回の新MacBook Airは、それと同等の性能、というわけだ。
一方、Intelチップを搭載していた旧MacBook Airと比較すると、そのパフォーマンスは2020年のIntel Core i3搭載モデルの約4.5倍、より高性能なIntel Core i7搭載モデルの約3倍にまで達している。それにも関わらず、1回のフル充電でワイヤレスインターネットが15時間、ムービー再生が18時間というバッテリー駆動時間を実現しているから驚きだ。
充電ポートには新MacBook Proと同様に「MagSafe 3」を採用。ケーブルを抜き差ししやすく、万が一足を引っ掛けてもMacBook Airがデスクから落下する危険性が少ない
さっそく新MacBook Airを山梨・静岡への出張に持ち出してみたが、1日あたり文章作成を5時間、ビデオ会議を2時間といった作業内容でも、一度もマシンを充電せずに旅程を乗り切ることができた。日帰りもしくは1泊2日程度であれば、もう電源アダプタ等は持たなくていいかもしれない(もちろん、作業内容によるが)。
もしもAppleシリコン搭載のMacを初めて手に入れるのであれば、おそらくこのバッテリー持続時間の長さが最も驚くべきポイントになる。外出先のカフェや大学の教室でコンセントを探し回ることはなくなるし、「充電し忘れて困った!」といったシチュエーションもグッと少なくなるだろう。
「真の薄型」を実現
MacBook Airは、薄型・軽量のコンピュータとして2008年に誕生し、ヒンジ(蝶番)から手元にかけて徐々に薄くなっていく楔形のデザインが長らく採用されてきた。
新MacBook Airでは、このお馴染みのデザインが刷新され、楔形ではなく均等な厚さを保っている。つまり、閉じているときも開いているときも、基本的には「アルミニウムの板」以上の印象を受けないソリッドなデザインとなった。
これはある意味、MacBook Air特有のデザイン性・意匠が失われたと見ることもできる。しかし、11.3mm(閉じた状態)という薄さの中に、ディスプレイ、キーボード、チップ、バッテリーがすべて収められていると考えると、改めてAppleのエンジニアリングの凄まじさを思い知らされる。
従来の楔形デザインは、ヒンジの部分に厚いパーツを集め、またバッテリーをより薄型にして内部に敷き詰めることで実現していた。裏を返せば、どうしても厚くなってしまう部分をデザインとして許容できるように、楔形を採用した側面がある。
新MacBook Airでは、Appleシリコンを搭載し、コンピュータのロジックボード(メイン基板)をよりシンプルにコンパクト化。均等な薄さの中にすべてを収めることで、厚みをデザイン的に処理する必要がない、真に薄いボディを実現した。
なお、重量は1.24kgと、1kgを切るモバイルノートPCが多い昨今ではやや重たい部類に入る。しかし、軽快に持ち運べるサイズ感にデスクトップPCと同等の性能を凝縮したと考えると、「とんでもなく薄くて軽い」と捉えざるを得ない。
新MacBook Airでは伝統の楔形ではなく、フラットなデザインを採用した
WEB会議がもっと快適に!
ディスプレイは、従来の13.3インチから13.6インチへと拡大し、縁のギリギリまで表示領域が広がった。その代わりに、FaceTime HDカメラ部分を避けるためのノッチ(切り欠き)が採用されたが、ノッチはMacのメニューバーと高さが合わせてあり、使用中に邪魔になることはない。
そのFaceTime HDカメラの画質が、また美麗で驚く。1080pのフルHDセンサーに変わって元々の画質が向上しただけでなく、M2に搭載される画像処理エンジンによって明るさや色味などが調整され、映像がさらに最適化される。
加えて、今秋正式リリース予定の次期OS「macOS Venture」には、手元にあるiPhoneをWEBカメラとして使えるようにする仕組みが備わる。iPhoneには更に大型のセンサーとオートフォーカスのレンズが備わっているため、ビデオ会議等の画質をさらに高められるだろう。また、1人もしくは複数人をカメラの中に自動的に収める「センターフレーム」機能や、超広角カメラを活用して手元の映像を映し出す「デスクビュー」機能も利用可能。iPhoneとMacを組み合わせることで、オンラインミーティングなどの可能性が今後さらに広がる。
FaceTime HDカメラの解像度が従来の720pから1080pにアップ。WEB会議時の映像をいっそう綺麗に、くっきりと相手に届けることができる
今秋正式リリースの「macOS Venture」からは、手持ちのiPhoneをWEBカメラとして活用できるようになる
最後に「100%リサイクルアルミニウム」を用いたボディにも触れておこう。
アルミニウムは一般的に、電気を大量に使用して、二酸化炭素を大量に排出しながら精錬される方法だと認知されてきた。いくら電気を再生可能エネルギーに転換しても、アルミニウム精錬による温室効果ガス排出は避けられなかったのだ。そこでAppleは、リサイクルアルミニウムを用いるなどして、新たに精錬せずに筐体を作る努力を続けてきた。
そうした中で、常識を覆す技術革新が起きた。Appleは精錬時に二酸化炭素の代わりに酸素を排出する手法を実用化し、2021年秋に発売された16インチMacBook Pro、2022年3月に発売されたiPhone SEなどに用いるようになったのだ。今回の新MacBook Airについては、リサイクルアルミニウムが用いられており、新たな資源を使わずにボディを構成している。
できるだけ新しい資源や素材を使わず、長持ちする金属を用い、使い終わったら再資源化するサイクルの中で生まれた新MacBook Airは、特に環境問題への意識が高い若い世代にとって、安心して選べる製品と言えるだろう。
※レビュー機にはmacOS Ventureのパブリックベータ版を導入しています。取材に基づく特別な許可を得て、撮影し掲載しています
文・写真/松村太郎