近鉄特急53年目の「再デビュー」も 歴代特急最大勢力12200系の改造車たち 「スナぞら」って?
50年以上にわたり近鉄特急の主力として君臨した12200系電車は、改造車両が今なお現役です。「新スナックカー」はどのような変貌を遂げたのでしょうか。
12200系「新スナックカー」はどんな電車?
数ある近鉄特急のなかで、長年にわたり主力として走っていたのが12200系電車です。1969(昭和44)年、車内に軽食コーナーを備えた特急車両「新スナックカー」としてデビューし、歴代の近鉄車両のなかでも多い168両が製造されました。
それから52年、12200系は特急車両としては2021年に引退しました。しかし、「改造車」は現役。うちひとつは2022年にデビューしており、ある意味“最新の車両”にもなっているのです。
12200系の改造車「あおぞらII」
「あおぞらII」のモ15203(左)。「スナックコーナー」を備えていた名残で、ドアと乗務員室扉の間に車内販売の準備室を備えていた(柴田東吾撮影)。
改造車両として最初に登場したのは、15200系電車「あおぞらII」です。私鉄では珍しい団体専用の車両で、「あおぞら」の名前の通り、青い車体色が特徴。「あおぞらII」としては15200系以外の車両も存在しましたが、ここでは15200系だけに触れます。
15200系は2005(平成17)年に登場。12200系のなかでも2回目のリニューアルを行わなかった車両から改造され、当初は4両編成2本と2両編成1本の態勢でした。2011(平成23)年には初代の団体専用車両「あおぞら号」(20100系電車)の車体色を復刻した編成も登場したほか、2014(平成26)年には4両編成2本が追加で改造され、最初に登場した15200系のうち、4両編成2本を置き換えています。
12200系の特急引退に合わせ、2021年には15200系どうしで置き換えが行われました。2両編成4本を追加で改造した一方、今まで使用されていた15200系をすべて廃車にしています。15200系は全部で10編成が改造されていますが、その10編成は揃ったことがないのです。
このほか、12200系の12249編成がもとのオレンジと紺のまま、団体専用車両に用途を変更しています。行先表示器に「あおぞら」と表示して使用されているものの、ファンからは“新スナックカーのあおぞら”の意味で「スナぞら」とも呼ばれています。
2022年デビューの改造車も
15400系電車「かぎろひ」も、12200系の改造車です。これは「クラブツーリズム」というツアー用の団体専用車両で、2011年に2両編成2本が登場しました。観光バスの定員数に合わせて座席を配置したほか、車内にはイベントスペースやカウンターを備えています。2編成ありますが、のちに座席の色を青と赤に変えて個性を出しています。
12200系を改造した観光特急「あをによし」(画像:写真AC)。
19200系電車「あをによし」は、2022年4月に営業運転を開始しました。「あをによし」は奈良方面の観光を目的とした列車で、古都・奈良に掛かる枕詞が名前の由来。外観・内装は奈良の天平文化をイメージしています。
運行区間は京都〜近鉄奈良間と、大阪難波〜近鉄奈良〜京都間の2通り。後者のルートでは、途中の近鉄奈良で列車の進行方向が変わります。これに配慮し、19200系はボックス席を中心として、窓に対し45度傾きをつけた座席も設定されています。
「あをによし」は4両編成ですが、このうちの2号車にはサロン席と販売カウンターがあり、サロン席は3〜4人で利用するグループ席として個室に近い設備です。また、販売カウンターは正倉院の校倉造のイメージで、専属のアテンダントによる軽食などの販売が行われています。
特急列車としての第一線を退いた12200系ですが、今後も改造車を中心に活躍が見られそうです。一般の利用では乗車できる機会が少なくなりましたが、「あをによし」は原則として木曜日を除く毎日運行されているほか、イベントなどで「かぎろひ」や「あおぞらII」に乗車できるかもしれません。