手作りのカートで、重力だけで坂を駆け下りゴールするレース「ボックスカートレース」がレッドブルの主催で行われます。7月3日にはロンドンでも開催されたこの大会、どんな魅力があるのでしょうか。

“フツーのデザイン”はNG

 サイズは長さ4m・幅1.5m・高さ2m以内、重さは80kgまで、坂を転がればそれでよし。ただし”フツーのデザイン”はNG――そんな「ボックスカート」によるレース大会が、2022年も行われます。

 レースは、スタート前にパフォーマンスを行ったあと、坂道を滑走。途中に設けられたバンプやシケインをクリアし、ゴールを目指します。優勝には、ゴールタイムだけでなく、パフォーマンスとマシン本体の芸術点を加えた総合得点が必要となります。

 日本では3年ぶり、今回は大阪府吹田市の万博記念公園で10月22日に開催されます。まだまだエントリー募集中とのこと。それに先立つ7月3日、イギリス・ロンドンのアレクサンドラ・パレス公園で開催された大会の様子を見てきました。


7月3日にロンドンで開催された「レッドブル ボックスカートレース」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。

 ロンドン大会は今年7回目の開催。2011年からほぼ隔年で行われている本イベント、何度もチャレンジしている古参チームもあります。

 2019年の前回大会は『となりのトトロ』の「ネコバス」、映画007シリーズの「ボンドカー」なども登場し会場を湧かせましたが、今回も一段と多彩な”箱車”を見ることができました。

映画ネタでは『トップガン』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ハリー・ポッター』『オースティン・パワーズ』など有名どころが目白押し。『エクソシスト』のリーガンのベッドを模したカートはもはや見た目がクルマですらなく、観客は呆然。阿鼻叫喚のパフォーマンスは審査員から40点満点を叩きだしていました。『ジョーズ』ネタで挑んだチームは「今年で4回目。クラッシュでこのサメが観客席に飛び込んだら、大惨事になるだろうね!」と意気揚々でした。

 ほかにも「イングランド最古のラウンドアバウト」「タピオカドリンク」「レッドブリュー・ティーポット(レッドブルと”brew”(淹れる)を掛けただけ)」など、我が道を行くマニアックなネタも。そうしたなか工具メーカーのボッシュは、自前のチームでインパクトレンチを模したマシンを持ち込んでいました。

実際走ると…

 さて、開幕前からピットガレージでさんざん客を沸かせたマシンが、いよいよ坂を下っていきます。「6点」「7点」「8点」「8点」……審査員からパフォーマンスの採点を受けた後、仲間に押してもらってスタート。最初のバンプの着地で態勢を乱すもの、サスペンションが壊れるものが続出し、滑走不能となったマシンはあわれ、バリアにもたれかかって終了。反対に、“ハリボテ”がバラバラに砕け散っても、足回りだけが生き残りゴールするチームもあり、それぞれの走りに声援が飛び交いました。

 リタイアが続出した中盤では最終バンプのスタッフが「頼むから僕らを忙しくさせてくれよ……」とぼやく場面も。そのかたわらには、先にリタイアしたクルマの“残骸”が積み上がっていました。出走した67チームのうち、自力でゴールできたのは半数ほどでした。途中でクルマが止まっても、仲間に押してもらってゴールを目指す姿もあり、満身創痍でゴールするマシンとドライバー、クルーへ惜しみない拍手が送られます。

 パフォーマンスで驚異の40点満点を得た、先述の「エクソシスト」。規定サイズ目一杯のデカさはハリボテ感が半端なく、明らかに出オチ的な空気が会場に漂っていました。しかしいざスタートすると、最初のバンプで勢いよくジャンプし、ベッド部分全体がめくれ上がり、あっという間に足回りが露出したものの、そのままの姿で危なげなく爆走し堂々のゴール。詰めかけた1万8000人の観客は豪快な走りっぷりに大盛り上がりとなりました。


豪快なジャンプを見せる「エクソシスト」ネタのボックスカート(乗りものニュース編集部撮影)。

 総合優勝は1980年代のアニメ『ガジェット警部』ネタで挑んだ「Go Go Gadget Soapbox」チーム。数学者もメンバーに迎え作り上げたクルマは、“逆ウィリー”の激しいバンプ着地にも耐え、最高速56km/hにも達する猛スピードでフィニッシュ。パフォーマンスとともに圧倒的な成績で表彰台の中央に立ちました。チームは4回目の挑戦で、「毎回ほんの少しずつ進化してきて、今回もいい感じに走れた。でもまさか優勝するなんて!」と喜びの表情でした。

日本にも3年ぶりに「ボックスカートレース」がやって来る

 今年も大盛況となった「ボックスカートレース in ロンドン」、日本大会もいよいよ目前に迫っています。

 前回は神奈川県川崎市のよみうりランドで開催されました。元F1レーサーで、現在はアメリカのインディカーで活躍する佐藤琢磨選手も参加した前回大会は、銭湯の湯舟や米俵、地元特産品のイチゴを模したものなど、外国大会に負けないネタっぷり。そもそもF1界では、鈴鹿サーキットでの観客お手製の「かぶりもの」が中継で毎年注目されるなど、クリエイティビティに世界的な定評がある日本。今回はどのようなパフォーマンスが見られるのでしょうか。

 レッドブル・ジャパンでは、10月22日開催の大阪大会のエントリーをどんどん募集中とのこと。エントリーは特設サイトの「応募する!」ボタンから行い、7月22日(金)必着でデザインを送る必要があるとのことです。同社は「興味のある人は、まずは15日(金)までにサイトでのエントリーを済ませていただければ」としています。