アップルが、先日開催した「WWDC22」(世界開発者会議)にて、新しいApple M2チップを載せたMacBook Airを発表しました。筆者は、2020年に発売されたM1 MacBook Airを愛用するユーザーです。WWDCの会場で新しいMacBook Airを触りながら、来月発売を迎えるM2チップ機は“買うなら今しかねぇ”マシンなのか、クパチーノで吟味しました。

WWDCのハンズオン会場で新しいApple M2チップを搭載するMacBook Airを体験してきました

実物を見たら無性に欲しくなってきた

筆者は、2020年に第1群のApple M1チップ搭載機として発売されたMacBook Airを仕事のメインマシンにしています。MacBookは機動力重視で、いつもAirを選んできました。

今回の取材でも縦横無尽に活躍してくれている筆者のMacBook Air

Apple M2チップを搭載するMacBook Airも本体は薄く軽量で、性能に磨きをかけたモバイルPCに仕上がっています。正直、筆者はMacBook Airの象徴的なウェッジシェイプデザインを変えてほしくありませんでしたが、実機を手に取ると、新しいMacBook Airのシャープで堅牢な出で立ちも全然悪くないと思いました。それどころか、野獣のような物欲が筆者の心の中に生まれました。

筆者が推すカラーは新色のミッドナイトですが、自分が買う段階に来たらスターライトを選んでいるかもしれません。従来のMacBook Airの「ゴールド」よりもスターライトの方が、元来ゴールドが好きな筆者にとって理想的な色合いだったからです。iPhone 5sのゴールドに例えられるかもしれません。

落ち着いたシャンパンゴールドのように上品な色合いのスターライト

動画制作環境として、あるいは音の良いモバイルPCとしては文句なし

新しいMacBook Airは、どんな人におすすめなMacなのでしょうか。

M2機は、M1機よりも画像処理を司るGPUを強化しています。また、4K動画やProResフォーマットの動画など、処理にパワーが求められるメディアファイルを受け持つ専用のエンジンを積んでいるところがM1チップ機との大きな違いです。

これから動画を撮ったり編集したり、MacBook Airで再生して楽しむことも含めて動画クリエーション全般に使い倒すことを考えているのであれば、間違いなくM2チップ機が良い選択肢になります。

新しいMacBook Airは動画や音楽など、本格的なコンテンツクリエーションにも活躍してくれそう

M2チップ機には、GPUの標準仕様が8コアと10コア、2種類のモデルがあります。44,000円の価格差もありますが、10コアのモデルはSSDの容量が倍になるだけでなく、2つのUSB-Cポートを搭載する新設計の35Wコンパクト電源アダプタが付属してきます。アダプタの単品販売は7,800円です。

ふたつのUSB-Cポートを搭載する35W電源アダプタ。10コア/512GB SSDストレージ機に付属しています

M2チップ機には、2つのウーファーと2つのトゥイーターにより構成される、4スピーカーサウンドシステムがあります。そのサウンドをごく短時間ですが試聴できる機会が持てました。

M1チップ機のサウンドに比べると、M2チップ機は左右チャンネル音声のセパレーションがより明瞭になり、音像がくっきりと立体的に浮かび上がる様子を捉えることができます。音場の広がりも豊かになりました。サイズが少し大きくなった13.6インチのLiquid Retinaディスプレイとあいまって、没入感が冴え渡るデスクトップシアターを満喫できると思います。

ディスプレイとキーボードの間に内蔵スピーカーからの音を出力するポートが配置されています

3.5mmヘッドホンジャックの出力もM2チップ搭載機がパワーアップしているので、インピーダンスの高い本格的なプレミアムヘッドホンも外付けアンプを介さずにMacBook Airだけで鳴らせるでしょう。音のいいモバイルPCを探している方には、新しいMacBook Airが文句なしにおすすめです。

M2とM1 Pro/M1 Maxとの関係は?

ディスプレイ側のFaceTime HDカメラは、画質が720pから1080pに向上しています。M2チップに統合されている画像信号処理プロセッサとの合わせ技により、FaceTimeをはじめとするビデオ通話アプリケーションを立ち上げている時に、ユーザーの姿を明るく色鮮やかに撮ってくれます。

1080pの高画質になった新しいMacBook AirのFaceTimeカメラ

M2チップ機はカメラの画質面でもアドバンテージが期待できそうですが、WWDCではiPhoneをMacBookのウェブカメラとして使う「Continuity Camera=連係カメラ」という新機能が次期macOS Venturaに搭載されることも明らかになりました。

新しいiOS 16を搭載するiPhone 11以降の機種では連係カメラにより、Macの前に座るユーザーを追いかけ続ける「センターフレーム」や、背景に自然なボケ味を加える「ポートレートモード」が使えるようになります。さらにiPhone 12以降であれば、ユーザーの姿を明るく色鮮やかに撮影する「スタジオライト」にも対応します。iPhoneをMacBookに装着するMagSafe対応ホルダーも必携ですが、M1チップ機によるビデオ通話体験がM2チップ機に迫るレベルに引き上げられそうです。秋以降に連係カメラを試してから、新しいMacBook Airの購入を検討してもよいかもしれません。

iPhoneをMacのウェブカメラとして使えるようになるmacOS Venturaからの新機能「連係カメラ」。iPhone 11以降の機種であれば、さまざまな撮影モードが使えます

アップルが設計した新しいApple M2は、モバイルマシン向けのシステムオンチップとしてApple M1から正統な進化を遂げた後継チップです。昨年秋にアップルが発売した14インチのMacBook Proが搭載するApple M1 Pro、16インチのMacBook Proから選択できるApple M1 Maxの方が、M2チップよりもパフォーマンス的には優れるという位置付けになります。

つまり、M2チップ機が出ても「より上を目指すならProシリーズ」であることに変わりはありません。美しいLiquid Retina XDRディスプレイ、豊富に揃うポートやSDカードスロットのことなどを考えれば、MacBook Proとの選択にも迷いが生じますが、やはりMacBook Airとの間には大きな価格の開きがあります。

とことん快適なクリエーション環境を目指すならMacBook Proを狙う手もありますが、総合力を考えるとM2チップを搭載する新しいMacBook Airのコスパの良さがとても魅力的です

新しいM2チップ搭載のMacBook Airは、従来機よりも約3万円のアップになりますが、最先端の機能と使い勝手を充実させたバランスの良さを踏まえれば損はなそうです。やはり発売されたらすぐに買うしかねぇぞと、筆者も今からそわそわしています。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら